弱さを燃やせ! [詩と文学♪]
忘れられない 胸の中の君
優しい声 染まった頬 小さな唇 細い首
思い出すほど 苦しく熱く
僕の心は 燃えたぎる
求めていいのかも
あきらめていいのかも わからないまま
僕は 時に 問いかけている
まるで 欲しがらない子供のように
胸の中の君は 片時も離れない
悲しく 笑っている
僕は 傷つき 混乱して
どうしたらいいのか わからない
でも 僕は もう あきらめたくない
小さな弱気を てこにして
大きな勇気を 持ち上げるんだ
暗い情念は いらない
僕は 太陽のように 燃焼したい
君は海 [詩と文学♪]
人は、海っていいねと言いながら、
波打ち際までやってきて、遊ぶ、眺める。
海中へもぐって、魚を捕る。
まるで、全てを知っているかのように。
波は、繰り返す。
もしも、海底に、扉があったなら、
海水は、扉の隙間から、流れ出ていくだろう。
時を超える目が、
壮絶な悲しみの涙を流す。
ここは、どこの海?
瞬く夜。
海上から昇る北斗七星。
道しるべは、どこを指している?
君は、朝陽を浴びて、
白い翼鳥と一緒に、空を飛びたいと思っている。
地上の楽園を、目指している。
そんな夢を見て、今日も、横たわっている。
水の文明の記憶 [詩と文学♪]
お魚は 水の中
海面上昇が 海を増やしたら
人は 知らない魚群に出会うだろう
潜ってみて 水の底
過去の美しい文明の遺産も
今は お魚の住むところ
美しいひれのある彼らは
純粋で 素直な生き物
陸へ来た私たちは
海中の暮らしを 忘れてしまった
お魚と 話をしよう
彼らは
今も昔も ずっとずっと 水の中
思い出して
懐かしい 水の文明の記憶を
透明な水のこころ [詩と文学♪]
いつも戦っているあなた
心の水はとうに枯れて
蒸発してしまうくらいの 激しい炎が 戦いを燃え上がらせている
あなたは 炎の輪から抜け出せない
助けて 助けて
声にならない叫び
あなたを守護している
水の妖精たちがいる
澄んだ水を あなたのまわりにふりまいている
ちっちゃな手で 一生懸命 透明な羽を震わせながら
死んじゃう 死んじゃう
あなたが気がつかない間に
あなたの心に
水の妖精の国を作って 心の奥深くの 風車を動かして
水をくみあげるの
いつも心配している 彼らのために
あなた自身のために
時には 運命に逆らって こころの流れるままに
愛おしいものたちのために
人ごみ迷宮中間点 [詩と文学♪]
心地よいのは 現実と空想の中間
そこに 道をつくって バランスを取って
永遠のゴールへ向かい 歩いて行く
根底に流れるものは 寂しさ
動物やお魚の世話をして
一日を過ごすほうが 私らしい
理解してくれる人は たった一人でも
本当にわかってくれるなら それでいい
大勢の人と話せば話すほど
迷宮の奥で 途方にくれてしまう
人ごみの迷宮でも 私はひとりぼっち
言葉をつむぐより 奉仕でしめす
そういうやりかたが 好きだ
決して 人を拒否しているわけじゃない
これは ただの感性の違い
人と魚の住む場所が 違うように
大地の精と 水の精が それぞれを
守って暮らしているように 私も
大事なものを 守って暮らしていきたい
笑顔のひかり [詩と文学♪]
あなたの背中が まぶしくて 私は 困っています
面と向かったら ドキドキが はみ出してしまいそう
急に 遠巻きにしてしまって ごめんなさい
嫌っているだなんて どうか 思わないでください
もし 嫌われたら そう思ったら 近づけないの
ほんの少しの表情の変化が 終わりを告げる兆しの様で
あなたの顔を見ていると 怖くて たまらなくなるの
私のことにも 気がつくの
臆病で 不安で 不器用で いいところなんてないと
どんどん自信が なくなって深く深く 落ちて あきらめて
あなたの存在をこころから 消したくなってしまう
マイナス回廊をぐるぐるぐると 下って行ったら
あなたがいない 静かな 地下室へ下りてゆける
そのほうが ラクかな この気持ち 下ろしてしまえるかな
だけど あなたは 突然 私の地下室へ迎えに来る
暗闇に 光を灯しに来てくれる その光は 笑顔
そんな人は 後にも先にも あなただけ
だから 私は あなたの光に 照らされているのです
あなたの存在が 今日も まぶしくてたまらないのです
愛は 優しさのなかに [詩と文学♪]
愛は 優しさのなかに
見つめる瞳のうちに 燃えている
視線に 耐えられなくて
目をそらしてしまう
どんなに言葉をかわしても
笑顔をみせていても
愛は なかなか 伝わらない
2人の間の距離が なくなるまで
ずっと もどかしさが続く
早く ひとつになりたくて
恋する気持ちも 持っていたくて
いつのまにか 胸の中は
あなたのことで 一杯
見守ってくれて
話をよく聞こうとしてくれて
心配してくれて ありがとう
ちょっと依存しそうなほど
あなたの優しさが 胸にせまる
運命の拍手喝采 [詩と文学♪]
運命の人
それは たったひとり
いつでも どこにいても
会いたいと願ったり
会えないとあきらめたりするつらさを
愛する人には
感じさせたくないもの
同じ命綱で結ばれていることを
信じて 笑顔を 抱きしめて
時をともに生きよう
愛のあかしなどなくていい
生きていることが すべて
求め合い 絡み合う人生の
不思議な一致
愛する人は 愛される人
運命の拍手喝采の只中で
一所懸命に 生きる人
あなたの 一番大事な人が
あなたを 信じられるように
あなたはあなたのことを
信じなくてはならない
すべてを受け入れて
降参したと思ったときにこそ
愛する人への気持ちを
強く持っていこう
奇跡は 信じる人にやってくる
瞬間に 光がはじけるように
その時まで 想いを大切に
ミラクルは そう遠くない
のされたこころ [詩と文学♪]
こころに
重いアイロンが
のしかかった
熱い
苦しい
こころはのされて
薄っぺらになった
ぺらぺらは
寒くてびっくりした
そして
雨に濡れて
透き通って
地面に落ちたら
あの人が踏んで行った
そばにいると寂しくない [詩と文学♪]
初対面から 胸の奥が どきっとした
そういう出会いは 過去に いくつもあった
今度もまた 怖い失恋の序曲が始まるって
そう思ったから
あたしの胸には悪いけど
知らないふりをしようって思っていた
なのに あなたは 他の人とは違って
気がつくとそばにいて
優しく 気にしてくれるから
あなたのそばにいると 寂しくない
そばにいられることが 幸せなのは
変わり者のあたしにとって 不思議なこと
こんな出会いは
神さまの仕業だとしか思えない
如才ない態度を見ていると びっくりする
これから 仕事が 大変になっていくね
ほんとにすごいね 認められてよかったね
あたしは 何にもできないけれど
心の中は あなたでいっぱいだから
ご活躍を 誰よりも 応援しています
特別な [詩と文学♪]
こんなに苦しくて切ない気持ちは
伝わらないほうがいい
こんなに 君を 想っている事
君に 伝えたら きっと
困って 優しく笑って
ありがとって そう云うんだ
君を 大切に想って
瞳の奥の信頼を 勝ち取っても
特別な想いは 伝わらない
こんなに 君が 大好きなこと
だから もう こんなにせつない
震える気持ちは 意味がない
君の事を好きな気持ちは
もう この胸から なくなればいい
こんな気持ちは もういらない
おまけの時間 [詩と文学♪]
もうこれからは
おまけの時間だと思っていた
みんなの幸せを祈って
生きていけたらと思う気持ち
だけが 強くあった
なのにここへきて
神様は どうして あの人を
わたしに引き合わせたのだろう
あの人を想ったときには
自分の未来を あきらめていては
幸せを 祈ることなんて
できないよ
それが本当の愛ゆえの自己犠牲
だというのなら
わたしはあまりにも無知で
無頓着すぎていた
あの人への想いや
愛する想いのすべてに
あの人には 情熱がある
わたしには それがまぶしい
神様は 時に
ありえないことを 用意して
人が 通るのを 待っているよね
どうなったって 知らないよ
だって おまけの時間だもの
ひと粒ひと雫 [詩と文学♪]
黒い幕に粉を撒き散らしたような
天のドームに輝く一粒
それはあなたの星
未来の望遠鏡でのぞいても
輝いてみえます
太古の真珠のように
落とした涙を海からすくうような
途方もない希望一滴
それはわたしの心
過去の想いは
省みるまでもなく
波しぶきがさらっていきます
遥かに遠かった太古の覚星は
海中に落ちたなみだの雫を
ついに探しあて
愛の真珠は完成しました
それは
あなたの胸のネックレスに
光っています
人の世の夢 [詩と文学♪]
あなたは
どうして拒否しているの
何も選ばなければ
魔の国へ落ち
悲劇の主人公になるわ
お願いだから わたしの手に
あなたの手を重ねてちょうだい
手を差し出して
人の国で 陽ざしの中で
たくさんの人と 生きるのよ
千年の孤独も一瞬の光に
協力しあって助け合える
わたしは
あなたと一緒に
人の世の夢を かなえたい
頭の上にGOサイン [詩と文学♪]
瞬間に変われるよ
人生に迷ったら 魂に聞こう
いいときは こころとあたまが一体化して
全然迷わないんだ
頭のななめ上あたりに GOサインが出現する
君は胸が軽くなって 本当の自分を知る
瞬間のすべてを
信じきれるようになる
不思議なひと [詩と文学♪]
別れのない世界を夢みて
せつなさに苦しみ
迷いながらも 生きていたら
愛しいひとが出てきて
「待ってろよ」 といった
あなたの言葉は
弱さを 抱擁してくれた
わたし生きていても
いいのかな
賢者みたい
少年のような大人のような
不思議な あの人
謎のような
真正直さに
わたしは 惹かれている
言葉たちのリンク [詩と文学♪]
物語の中に引用される「言葉たち」は
別の作品の「言葉たち」と
つながっているみたい
「言葉たち」を追いかけると
また別の「言葉たち」が
発掘されてきます
探すことはおもしろいです
古い本が集まっている図書館に行くと
人生の短さを思います
館内の本を読破するには
週に何日通って何年かかるのでしょう
言葉の宇宙空間は
ワープにつぐワープで思考をつなぎ
言葉は語られ本になって
本棚に並べられています
偶然手にした本
読もうと思っていなかったあの一冊から
不思議のリンクが始まりました
これからもいっぱい本を読もうと思います
最終決戦の扉の向こうには [詩と文学♪]
苦しい心をもって
歩む道に
どんな未来が待っているんだろう
脳みそに汗かいて 机に向かうその先
それもだめ あれもだめって
なにも残るものがないんじゃないか
悪い想像に 身震い 怖い
開かない人生の扉の前でお手上げか
いやいや まだ 負けちゃいないぜ
怠け心との 華麗なる対決なのだ
愚痴をいいながらも 結構頑張る
誰もみていない時 ちょっとさぼって
あの子に告白 返す刀でばっさり
後悔さきに立たずの人生
戸惑いの中の あきらめ地獄
その先にきた 幸せの予言
まだまだ まだまだ 終われない
最終決戦の 扉の向こうには
最低の 自分が待っている
心の球 [詩と文学♪]
心は まんまるに輝く球のようなもの
みんなが ひとつずつ もっています
わたしの心の球は 不安と悲しみの引力に
よく引き寄せられます
ころころと 転がっていきます
そして ぶつかった時にひどく 痛みを覚えます
ある時 周りに誰もいなかったので
心の球をとりだして みてみました
手のひらの上でそれは
輝いていました
傷ついたところが
たくさんたくさん 輝いていたのです
心の球は 重量級、軽量級と、
いろいろあるようですが、
たくさんの傷が 刻まれるほど
あたりの柔らかい優しい球になっていくみたいです
輝きは 自分の力だけじゃない
きっと そういうものなのだなぁと思います
時計の音 [詩と文学♪]
振り子のように コツコツと 時の刻む音にそって
人は さようならをする
愛のある人 そうでない人 誰もがみんな さようなら
そうして 独りきりになる
今夜 たとえようもないほど寂しくて辛いあなたは
テーブルの上の花瓶を 見るともなく 見つめた
チューリップの花と てんとう虫が一匹
なにやら ちいさなちいさな声で しゃべっている
てんとう虫が云う
美味しい蜜を ありがとね
チューリップの花が 云う
命の限り なかよくしましょう
花瓶が云う
みなさん いつまでも 達者でね
そこへ もう一声
おーい わたしも 居まーす
誰がしゃべったのかと思ったら
それは 花瓶の水だった
また 声が!
おーい 元気か?わっはっは
それは
まだ口をつけていない ワイングラスだった
しゃべりだしたものたちは 屈託なく元気だった
孤独なんて ひとりよがりな 戯言なのかも知れない
わたしも ちいさくしゃべった
おーい ワイン 飲んでいいかい?
ワイングラスが云った
飲んでいいぞ
ワインが云った
飲んだら乗るな 乗るなら飲むな
わたしは なんだか 笑ってしまった
振り子のように コツコツと 時の刻む音にそって
万物は 生きていくかもしれないけれど
さようならを 告げる音だなんて
思うことはない
今は懐かしい 時計の秒針の音によせて
オリオンの3つ星とめがね [詩と文学♪]
こころにかけていた 偏見のめがねを あの日 水の底へ落としてしまった
水晶体の透明度に真実が合わさって なんだか前より見えるようになった
底の底まで落ちていったあの日から ずっと焦点がずれていた私の心にも
変化がおきて いつしか 希望と勇気と決心が 3重構造で合わさってきた
銀河のオリオン座の 3つ星が どんなに遠くても 私たちのことを見つめて
目標を見失わないでねといっているような気がして 今日も 夜空を眺める
稲の大海原みえる丘 [詩と文学♪]
青い空の下 大海原に浮かぶ小さな島のような 丘があった
丘には いくつかの家々がある
家々は 丘の裾野に放射状に 建てられており
その集落の近くには 森があった
森を歩けば 小鳥は 梢の上の巣へ 熱心にえさを運び
きつねは 食べ物を探して 土の上に湿った鼻を寄せ
うさぎは 草の陰で 休み
りすは 木の実をほおばって 飛び跳ねた
人が通ると どの動物も ついてきた
森を抜けると 丘の中腹から頂上へ登る 石段があった
頂上には 石積みのサークルがあり
毎朝毎夕かかさず 石段を上がってくる女がいた
麻の服をつけ ひすいの勾玉を首からかけ
颯爽と歩く 足首をもつ 彼女
彼女が来ると 丘の麓から野へ向けて稲が流れて さわさわと音を立てる
丘の頂上からは 見渡す限りの青い稲が 波のように揺れてみえるのだった
石段を登りきると 決まって彼女は 腰をおろし
しばらくの間 景色を眺めて 無心になる
やがて 毛皮をつけた男が 石段をのぼってくる姿が見えてくるはずだ
男は 火をおこす道具と弦楽器を肩にかけて やってくる
大海原の稲の果てに 大きな夕日が沈み 祈りの風が吹くころに
丘の住人達が 大勢列をつくって 石段を上りだす
男は サークルの中央の木組みに火をおこす
女は 木組みのまわりで 感謝と祝福の舞をとりおこなう
丘の人々は 手拍子や唄にあわせて 踊る
やがて火がつくと 全員が 一日を振り返り 喜怒哀楽の一日に別れをつげる
そして 松明をもらい 今晩の灯を 家に持ち帰る
夜半が過ぎた頃 石段を下りる者がいなくなったら
男は 一番大きな巨石の上に座り 弦楽器をとりだして 炎と星のメロディーをつまびく
女は 火のそばで 眠る
夜半を過ぎ 風が止むと
森の中から 一匹ずつ動物が現れて ぴょんぴょんと物陰から顔を出す
途中の 石のくぼみにたまっている雨水に足をつけたものは
サークルの中央の燃えさしで 体を温める
その頃になれば 女は寝ているが
男はまだ起きている
動物達は 男が奏でる調べに耳を何回か動かしては 帰っていく
日の出前には 女が起きて 朝の礼拝をするが
動物達は いなくなっている
朝になれば
光射す稲の海は黄金に輝き 太陽が昇る
稲は丘に近くなるにつれて 薄緑から濃緑に色が変わる 森が稲を祝福するように
女は 丘の住人が今日も無事つつがなく暮らせますようにと 万感の想いをこめて祈る
影の夢 [詩と文学♪]
ずっとずっと世間からかけ離れた場所を夢見ていてある日夢がかない
昼目覚めたとき 木々のシルエットに囲まれた切株の上に座っていた
わたしはただの影になり 空気のように音もなく存在していればよく
何時間でも永久にでも 好きなだけ考え事をして過ごしていればよく
誰にもわずらわされずに ただ歩いたり眠ったりしてうつろな毎日で
誰でもない解き放たれた ただの影のわたしは 孤独で幸せだった
突然 平安だったわたしの世界に悲しげな少女が駆け抜けていった
少女はわたしの名前を泣きながら呼んでいた もう姿などないのに
人を求めるより ひとりでさみしさを信じるほうを選んだわたしなのに
呼ばないでとそう声に出したけれど その声は自分の耳に届かない
ああこうやって 人は滅んでいくのかも知れないと考えたそのときに
わたしは願った 助けて・・・助けて・・人は影のみでは生きられない
その思いは一度に押し寄せてきて波のように怒涛のうねりとなって
影を飲み込み 光と希望の世界の内にわたしは 現実に目覚めた
まだ時折 夢の中でわたしの影をみることがある 遠くでゆれている
微笑むとそばに来ていつまでも寄り添って離れない さみしがりやだ
雪原の足跡 [詩と文学♪]
普段は誰も通らない 家の庭屋敷
庭に降り積もった雪原の上
点々とついていた 誰かのあしあと
人のものと 動物のものと 鳥のものと
通りすがりの足跡にしては
田舎過ぎる うちのあたり一帯
家主の知らぬ間に 誰か来たのだ
* * *. .. " .".."
足跡をたどれば 雪の女王の都へ
行けるのだと 遠い昔に お供を連れて
旅に出た友を 思い出す
わたしが ついていかなかったのは
君を 信じていなかったせい
わたしも雪原の上を 歩く
魔方陣を 描きながら 確かめながら
遠い日の 友情を 思い返すように
足跡を たどるように
もしこの足跡が 君のものだったなら
今度こそ わたしは 裏切らない
カラスくん [詩と文学♪]
雪原に 2本足 ちいさなカラスくんが立っている
なにを 見つめているのかな 誰かを待っているのかな
さっき あそこの電線で 一羽とまっていたのもあなただよね
すごく細っこいから わかったよ
こんなにあたたかな陽射しの午後
表面がとけた雪の上は どんなぐあいかな
カラスくんに 毛糸で編んだえりまきを 巻いてあげたいな
あたし すごく編み物は下手だけど
どんな柄がいいかな?
真っ赤、真っ白、みかん色、桃色、しまうま柄もあるね
もしカラスくんが気に入ったら 他のカラスくんたちの分も
いろいろ つくっておくよ 毛糸でちいさく編んで
あたしの部屋の窓のてすりに 並べておく
だから 好きなの持っていってね ああそうか
巻くときが大変かな だったら 一羽ずつおいでよ
みんなに 順番に巻いてあげる
カラスくんたちが、みんなして色とりどりのえりまきをして
電線にとまっているのを 想像しちゃった
いいな ほんとに かなり素敵だと思うよ
使い鳥 やまと [詩と文学♪]
都市にそびえたつビルディング群の天辺が、雲海の中に隠れている。
巨大なコンクリートの固まりが、働いているすべての人を守っている。
夏の昼下がり。
鎮守の森の木の葉の陰で、羽をふくらませて休んでいる巨大な鳥たち。
街路樹の木陰のほんの小さな土の上に、うつむいて座っている、ぼく。
ぼくは、ビルディングを見上げるたびに恐ろしくてたまらなくなる。
足元には、たくさんの人や建物の影が、行き過ぎていく。
恐怖から逃れたくて、走る。
いつだって、守られているのは、働いている人。
ぼくのようなものは、なにものからも、守られない。
地下へ降りる階段を、ころげ落ちて、エレベーターの中で休む。
誰もいない、明るい室内。
ガクンと揺れて、ドアが閉まる。
丸い窓の外を見たとき、上昇の速度の速さに、愕然とする。
電光表示板のエレベーターの階数を見て驚く。
庁舎ビルだ。
ぼくが、この世でもっとも嫌いな、都市で一番高く誇らしげに建つ、憎らしいビルディング。
今、その中にいる。
窓の外の景色にもやがかかり、霞んでみえる。
ぼくは、上へ上へと昇っていく。
コンクリートの固まりは、
天井、壁、床、すべて冷たく、弱いものを遮断している。
働いているすべてのひとを守っているビルの中に、守られるはずのないぼくがいる。
ビルは、ぼくを、守ってくれるのだろうか。
突然、世界は揺らいでいると誰かが言っていたことを、思い出す。
揺らぎでできている、だったかも知れない。
不安が、こころを、震わせる。
からだも、
世界も。
ピンポン、180階でございます。
一本立ちするビルディングの影が、ゆらゆらと映る雲の上。
ピンポン、190階でございます。
湾曲する透明なガラス窓から、使い鳥の姿が見える。
使い鳥は、こちらへやってきて、こつこつとくちばしで窓をたたく。
ぼくを、呼んでいるようだ。
ピンポン、199階でございます。
エレベーターのドアが、突然消え去り、冷たい風がぼくの胸をさらう。
うつむくことも、下を見ることも、かなわぬ世界。
風の感触。
足元を見ずに、ぼくは進む。
まっすぐに、雲地を踏みしめる。
一歩一歩進む。
使い鳥が、雲のカーペットの、ずっと向こうにいるのが見える。
使い鳥は、飛行機と見間違えるほどに、大きい。
「さあ、いこう」
ぼくは、翼の羽毛につかまって、使い鳥とともに、風の中に飛び込んだ。
ともし火 [詩と文学♪]
あの家の明かりが 窓から見えるとね
ぼろぼろの心のかけらたちが 集合するような感じがするんだ
それはね 真っ暗な川の向こうの一軒の家の
うすぼんやりした灯りなんだけど
僕みたいな旅人は 一晩の宿の灯りに 励まされる
どんな人が住んでいるのか 本当にただ ありがたくて
こんな暗がりにいることも 寒いことも 孤独なことも 忘れられる
だから僕も たとえどんなに疲れきったぼくであっても
夜遅くまで 灯りをともしていたいんだ 知らない誰かのために
息を潜めて 泣いていた晩に見た あの家の明かりのように
草木も眠る深い夜 誰もがみな 通る道じゃない そんな場所にも
燃やし続けていたい 粗末な焚き火一つ 燃え尽きるまで蒼く赤く
ぱちぱちと薪がはぜて 夜の終わりが来るまで
ありがとう 誰かは知らない君の家の その窓の明かり
いつも夜半まで 美しく光っている黄金の灯りよ
今夜は 寝ないで見ているよ 明日は故郷へ帰るんだ
もし寝てしまったら 草枕 頬に風をあてて 起こしてくれよ
風よ友よ [詩と文学♪]
軽やかな風のような友になりたい
いろんな場所から 風を運んでくるような友に
まつわりつかず とらわれずにいられたら 素敵
来ないメールをあてもなく待つような
精神は好きじゃない
嫌われたならば もういいじゃないの
時には感情的になったとしても
心の裏側に 入り込んでしまう風が
さっとほこりを取り払ってくれるかも知れない
壊れたストラップは捨てて 旅に出よう
新しい自由へ向けて アンテナの届かないところへ
ともに歩む人がいないならば
寂しさだけが 今一番の友達
絹衣の金魚 [詩と文学♪]
ふんわりと
ソファーの上
ひらひらの絹の布を まとう
窓辺からそそぐ
暖かな日光 かすかに聞こえる エアポンプの音
カーテン越しの光が
まとった絹の衣に
うろこ模様をつくったら
私は
衣の端を ひらひらと 振って
金魚になる
ガラス1枚隔てた水の中から
本物の金魚が
不思議そうに
こっちをみている
ぱくと泡があがり
一瞬だけ
ささやきが聞こえた
今なんて?
金魚に問いかけるが
尾ひれをふって 二度とは言わない
そんな
一瞬一瞬を 積み重ねたら
いつかは
わかりあえるような気がする
魚類と人類
でも ごめんなさい
私は 今夜 お刺身を 食べます
ガラス窓の向こうから
まぶしい太陽が 見ていた
短篇小説 W 別天地へ行け