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稲の大海原みえる丘 [詩と文学♪]

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青い空の下 大海原に浮かぶ小さな島のような 丘があった
丘には いくつかの家々がある
家々は 丘の裾野に放射状に 建てられており 
その集落の近くには 森があった
森を歩けば 小鳥は 梢の上の巣へ 熱心にえさを運び
きつねは 食べ物を探して 土の上に湿った鼻を寄せ
うさぎは 草の陰で 休み
りすは 木の実をほおばって 飛び跳ねた
人が通ると どの動物も ついてきた
 
森を抜けると 丘の中腹から頂上へ登る 石段があった
頂上には 石積みのサークルがあり
毎朝毎夕かかさず 石段を上がってくる女がいた
麻の服をつけ ひすいの勾玉を首からかけ
颯爽と歩く 足首をもつ 彼女 
彼女が来ると 丘の麓から野へ向けて稲が流れて さわさわと音を立てる
丘の頂上からは 見渡す限りの青い稲が 波のように揺れてみえるのだった
石段を登りきると 決まって彼女は 腰をおろし
しばらくの間 景色を眺めて 無心になる
やがて 毛皮をつけた男が 石段をのぼってくる姿が見えてくるはずだ
男は 火をおこす道具と弦楽器を肩にかけて やってくる

大海原の稲の果てに 大きな夕日が沈み 祈りの風が吹くころに
丘の住人達が 大勢列をつくって 石段を上りだす
男は サークルの中央の木組みに火をおこす
女は 木組みのまわりで 感謝と祝福の舞をとりおこなう
丘の人々は 手拍子や唄にあわせて 踊る
やがて火がつくと 全員が 一日を振り返り 喜怒哀楽の一日に別れをつげる 
そして 松明をもらい 今晩の灯を 家に持ち帰る
夜半が過ぎた頃 石段を下りる者がいなくなったら 
男は 一番大きな巨石の上に座り 弦楽器をとりだして 炎と星のメロディーをつまびく
女は 火のそばで 眠る

夜半を過ぎ 風が止むと
森の中から 一匹ずつ動物が現れて ぴょんぴょんと物陰から顔を出す
途中の 石のくぼみにたまっている雨水に足をつけたものは
サークルの中央の燃えさしで 体を温める
その頃になれば 女は寝ているが
男はまだ起きている
動物達は 男が奏でる調べに耳を何回か動かしては 帰っていく
日の出前には 女が起きて 朝の礼拝をするが
動物達は いなくなっている

朝になれば
光射す稲の海は黄金に輝き 太陽が昇る
稲は丘に近くなるにつれて 薄緑から濃緑に色が変わる 森が稲を祝福するように
女は 丘の住人が今日も無事つつがなく暮らせますようにと 万感の想いをこめて祈る


2008-02-23 18:11  nice!(1)  コメント(0) 
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