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満月の夜の冒険11.庭先で [短編童話 満月の夜の冒険]

十一 庭先で
 両親が出かけた後、すずかちゃんは、じょうろを手に持ちました。気づくと、みりが、玄関ドアから顔を出して、こちらを見ていました。
「みり、遊びに行く?」
みりは、芝生へ出て、近くに生えていた、長くのびた草をかじりました。それから、木によじのぼり、鳥とお話しをし、あたたかな日光と、風のにおいを、楽しみました。
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 みりの姿を見て、びっくりしたのは、野ねずみの親子でした。畑のすみっこの穴ぐらの中に隠れて、しばらくの間は、家族全員、外出禁止にするようです。
「あっ、モンシロチョウと、アゲハチョウもいる。」
すずかちゃんは、空を見上げてから、植木鉢やプランタのひとつひとつに、水やりをしました。ピンク色のプリムラの花や、紫色のイパネマの花、だいだい色のマリーゴールドの花が咲いています。少し手を添えて、茎や葉っぱ、土のところに、じょうろの水をたっぷりとかけました。
「こんなところにいたの、かえるちゃん。」
ぴょんと飛び出てきたアマガエルは、びっくりしたようすで、逃げて行きました。
マリーゴールドの植木鉢の葉かげで、むしの夫婦がそわそわしていたようでしたが、すずかちゃんは、気がつきませんでした。
「よし、水やり、おわり! お家へ入ろう。」
それを聞くと、みりは、走って来て、すずかちゃんの脚に、頭をすり寄せました。
「家に入ったら、身体をきれいに拭いて、ブラッシングもして、おやつを食べて、待っていようね。」
「にゃあ。」
ふたりは、お家へ入って行きました。
 今日は、みりに、弟か妹ができる、記念日です。みりには、そのことがちゃんとわかっていました。お父さんとお母さん、すずかちゃんとみり、そして子ねことの、あたらしい生活がはじまるのです。
 すべての家族にとって、しあわせな生活が送れますように。

おしまい。
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2024-02-02 17:07  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険10.玄関でお見送り [短編童話 満月の夜の冒険]

十 玄関でお見送り
 すずかちゃんは、両親をお見送りするため、玄関の外へ出ました。
「おるすばんを頼むわね。」
お母さんが、車の助手席に乗り込もうとした時、花だんを見て、なにかを思い出したように戻ってきました。
「いっけない。バタバタして、お花の水やりをするの、すっかり忘れていた。」
「一昨日、雨が降ったし、だいじょうぶじゃない?」
「植木鉢のお花にだけ、お水をあげちゃうわ。」
お母さんが、あわてて、じょうろを取ってきました。
「あとでいいだろう。お母さん、もう行かないと。」
お父さんが、腕時計を見ながら、お母さんを急かしています。
「あとは、わたしがやっておくよ。」
すずかちゃんが、声をかけると、お母さんが、じょうろに半分だけ水を入れた状態で、すずかちゃんの近くに置きました。
「おねがいね、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
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2024-02-01 19:33  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険9.ひみつ基地 [短編童話 満月の夜の冒険]

九 ひみつ基地
 お父さんは、屋根裏部屋のことを、『ひみつ基地』と呼びます。そこへ行くには、棒を使って、二階のろうかの天井板を押し上げ、あいた穴のふちにある金具に、はしごをかけなくてはなりません。
 お父さんは、はしごの具合を確かめた後、すずかちゃんをふりかえりました。
「すずかも、行きたいか?」
「もちろん。」
「よし、それなら、先にのぼりなさい。お父さんが、下で支えているから。」
「うん。」
すずかちゃんは、まず、はしごの一番下の段に足をかけ、一歩ずつ、上へ上がって行きました。
「すずかは、身軽でいいな。お父さんは、はしごがきしむ。」
すると、お母さんが、くすくす笑いました。
「そうよ、お父さん。はしごを壊さないでちょうだいね。」
そうこうしている間に、すずかちゃんは、屋根裏部屋に上がることに成功しました。
「いた、いた。みりが、寝てる。」
みりは、つくりつけの棚に重ねてある毛布の上で、丸くなってスヤスヤと眠っていました。近づいて見ると、みりは、からだじゅう、ほこりだらけでした。
すずかちゃんは、みりの額のあたりを、指で、そーっとなでました。
「ハ、ハ、ハックショーーーン!」
「わあ!」
後ろで、お父さんが、特大級のクシャミをしたひょうしに、すずかちゃんは、びっくりして、床にしりもちをついてしまいました。すると、みりも、うっすら目を開けて、あくびをしたのです。
「おー、よしよし。」
すずかちゃんが起き上がって、みりを抱っこすると、みりは、ごろごろとのどを鳴らしました。
お父さんは、柱の木組みを見て、みりが登ってきたであろう場所を観察しました。
「天井板を押し上げて、ここまで来たのか。みりは、かしこいねこだなあ。」
それから、床に落ちていた飛行機の模型をひろい上げて、ふと窓を見ました。
「おや? 窓が閉まってなかったようだ。」
お父さんは、窓をいったん全開にしました。その時、窓わくのところに、ピーナッツが一つ置いてあるのに気づいたのです。
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「鳥にでもやるか。」
お父さんは、ピーナッツを外へはじき出してしまってから、しっかりと窓を閉じました。
(そういえば、さっき、風呂場の窓は、ちゃんと閉めたっけ? あとで見に行くか。)
 下の階から、お母さんが、二人を呼ぶ声がしました。
「まだ?」
「今、行くよ。」
「よし、お父さんが先におりて、みりを受けとめよう。」
お父さんは、そう言うと、はしごを数段おりて、すずかちゃんとみりのほうへ、腕を伸ばしました。ところが、みりは、身を固くして爪をたててしまい、なかなかお父さんの腕の中へ行こうとしません。
「怖いのかな。だいじょうぶ?」
「そうだわ。ちょっと、待っててね。」
お母さんが、ピンときたというふうに、手を打って、みりのあさごはんを持って、戻ってきました。
「みり、ごはんよう。」
その声を聞いたみりは、お父さんの腕の中へとびこみました。
「おっとっと。お母さんの作戦勝ちだ。」
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「お腹がすいていたのよ。ね、みり。」
みりは、そのまま、お父さんに抱っこされて、一階へ行き、朝ごはんをもらったのでした。
すずかちゃんは、みりがおいしそうにごはんを食べるすがたを見ながら、不思議そうにつぶやきました。
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「みりったら、ほこりだらけになっちゃって。夜、屋根裏部屋で、何をしていたの?」
お母さんが、子ねこ用のキャリーバッグを玄関に置きに行って、戻ってきました。
「みりをきれいにしてあげたいけれど、もう時間がないわ。そろそろ、すずかちゃんも、支度をしてね。」
「それなら、わたしが、おるすばんをする。子ねこが来る前に、みりをきれいにしてあげたいから。」
「まあ、すずかちゃん、ひとりでおるすばんしてくれるの?」
「ひとり、ふたり、みり、だよ。」
「なあにそれ? どういう意味かしら?」
「ひとりじゃないよ、みりと、いっしょだってことだよ。」
お母さんは、なぜだか、しきりとうなずいていました。そのやりとりを聞いていたお父さんが、車の鍵を手に取って、言いました。
「うまいこと言うなあ。そうしたら、なるべくはやく帰って来るから、しっかり戸締まりをして、待っていてくれよ。子ねこを、つれて来るぞ。」


2024-01-31 17:57  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険7.クローゼットの内側 [短編童話 満月の夜の冒険]

七 クローゼットの内側

三人は、二階の寝室へ入りました。お父さんが、クローゼットの中をのぞきこみました。
「みり、寝ていない?」
「うーん、もっとよく見てみないとね。ねこは、上のほうへ上がりたがるものだからなあ。」
クローゼットの中は、収納箱が積まれていました。上段の箱のとなりには、つっぱりぼうが設置され、服が吊り下げてありました。お父さんは、服をよけて、上段の箱の上を探しています。
「お母さん、ライトを持ってきてくれないか。」
「はいよ。」
お母さんは、手元にあった、スマホのライトを点けて、お父さんに手渡しました。
「ありがとう。」
「なにか、見えた?」
すずかちゃんが言うと、お父さんは、天井付近をライトで照らして、言いました。
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「見てごらん。天井板が上に押しあがっているところがある。」
「ほんとうだ。」
「じつは、前にも、みりがここで寝ていたことがあったんだよ。でも、今日は、ここから、天井裏へ上がって行ったようだ。」
「そんなことできるの?」
「われわれ人間は、ここから上がるのは無理だな。」
お父さんが、クローゼットから出て来ました。
「よし! みり救出のため、ひみつ基地へ行くぞ! だがその前に、はらごしらえだ。お父さんは、お腹がぺこぺこだ。」
「オッケー。はやく食べちゃいましょう。」
みりが、どこにいるのか、なにをしているのか、はやく探したいけれど、すずかちゃんのお腹も、さっきからグーグーなっていたのでした。


2024-01-29 22:44  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険6.二階の寝室 [短編童話 満月の夜の冒険]

六 二階の寝室
 翌朝、すずかちゃんが一階へおりると、お母さんは、朝ごはんの支度を終えていました。
「おはよう、お母さん。」
「おはよう。すずかちゃん。」
スマホの画面を見て、お母さんが言いました。
「今日は、十時すぎに、ここを出て、こねこちゃんを迎えに行く予定よ。出かける用意をしておいてね。」
「はい。」
「そういえば、みりを見ていないわ。いつもなら、ごはん、ごはんって、待ちかまえているのに。すずかちゃん、お父さんを起こしてきて。みりもいっしょにねているかもしれないわ。」
「うん、わかった。」
すずかちゃんが、二階の寝室に入ると、お父さんは、まだ寝ていました。
「お父さん、起きて。朝ですよ。」
すずかちゃんは、お父さんのかけぶとんをバサリとめくりました。
「わあ、すずか、やめてくれ。起きる、起きるから。」
「あれ、みりは?」
「ここには、いないぞ。」
すずかちゃんとお父さんが、一階へおりて行くと、お母さんが、ふりむきました。
「グッドモーニング。」
「ねえ、お母さん、みりがいないよ。」
すずかちゃんが言うと、お母さんは、用意しておいたみりのごはんを、いったんテーブルの上におきました。
「どこかに、隠れちゃったのかもしれないわね。昨日の晩から、すこし変だったし。」
すずかちゃんは、心配な気持ちになってきました。
「なんでだろう?」
 その時、一階を見てまわっていたお父さんが、あたふたと戻ってきました。
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「いやあ、たまげた。」
「どうしたの?」
「風呂場を見に行ったら、むしが、二匹もいたんだよ。」
「いやだ、こわい!」
お母さんが、耳をふさいで、たじろぎました。
「退治してくれた?」
「退治したぞ。だがな、あのむしは、人間には悪さをしないし、害虫を食べてくれる、いいむしなんだ。」
「何のむしでも、気持ち悪いわ。」
「今度から、入って来られないように、しっかりガードしておこう。」
お父さんは、どんなむしが出ても、へっちゃらでした。すずかちゃんは、むしは怖いけど、それよりも今は、みりのことが心配でした。
「玄関は閉まっていたから、外にはいないはずだ。」
「どこへ行っちゃったの? みりー! みりちゃーん!」
いつもなら、名前を呼べば走って来るみりなのですが、足音も聞こえてきません。お母さんが、すずかちゃんの手をぎゅっとにぎりました。お母さんは、何かを思い出したようでした。
「そういえば、ベッドサイドのクローゼットのとびらが、半開きになっていたの。朝方、わたしが、閉めたのよ。」
「それなら、そこにいるかもしれない。すぐ、助けなきゃ。」


2024-01-29 11:59  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険5.お風呂場 [短編童話 満月の夜の冒険]

五 お風呂場
ほんとうは、外に出たいのに、なにかのひょうしに家におじゃまして、出られなくなってしまった生き物もいます。
(広いわ。ここは、どこなのかしら。だんなさんに、連絡しなくては。)
むしのおくさんは、テレパシーで、だんなさんに呼びかけようと、しょっかくを、動かしました。すると、むしのだんなさんから、信号が送られてきました。
(だいじょうぶですか? 今どこにいますか?)
(わからないのです。たぶん、おやしきの中のどこかにいます。)
(こちらは、マリーゴールドのお花のところにいます。空には満月が出ていますから、テレパシーを使って、居場所を確かめ合いましょう。)
むしのだんなさんは、テレパシーで、奥さんのいどころを、探し当てることができました。会えたのは、二日ぶりでした。
(つかれたでしょう。)
(いいえ、ちっとも。)
外では、秋のむしたちが、むしの夫婦に、応援歌をうたっています。
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(すこし、休んでから、ぼくたちの家へ帰りましょう。人間に見つからないうちに。)
(そう、しま、しょう、か。)
むしのだんなさんとおくさんは、秋のむしたちの歌を聞きながら、すこし眠ることにしました。


2024-01-28 18:27  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険4.屋根裏部屋 [短編童話 満月の夜の冒険]

四 屋根裏部屋
 満月が、南の空にのぼった頃、月明かりに照らされて、父ねずみのかげが、長くのびました。父ねずみは、屋根裏部屋の窓わくのところで、息をひそめていました。
父ねずみは、幼い頃に、両親がわなにかかってしまった時のことを思い出すと、恐ろしくなります。でも、冬、大雪が降った時、家族ですごす場所があればと思ったので、ここへ来ました。
父ねずみは、屋根裏部屋の南側の、窓のすきまから、部屋の中に入りました。つくりつけの棚の上に、防災グッズ、本、飛行機の模型やボードゲームなどが、置いてありました。ここなら、雪がどんなに積もろうと安全です。
 父ねずみは、ふと窓のほうをふりかえりました。そこで、黒いかげが見え隠れしているのに気づいたのです。ひとつ、ふたつ、みっつ。なんと、その黒いかげは、子ねずみたちでした。
「これはおどろいた! ついて来てはだめだと言ったのに!」
「おとうさんが、どこに行くか、気になったんだもの。」
父ねずみは、三匹の子どもたちに言い聞かせました。
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「ここから先に、入ってはいけないよ。窓の外に、隠れていなさい。」
子ねずみたちは、しかたなく、ひとかたまりになりました。父ねずみは、わながあるかどうか、部屋のすみずみまでチェックしてまわり、危険がないとわかったので、窓のところへもどりました。
 ところが、子どもたちのすがたがありません。父ねずみが、あわてていますと、頭上から子ねずみたちの声がしました。
「おとうさん、こっち、こっち。」
見ると、三匹の子どもたちは、部屋の中にはいり、つくりつけの棚の上にいたのです。
「ふう、まったく。おまえたちときたら。どうして、言うことをきかないのだ?」
「ここで、ちゃんとかくれていたよ。」
「おとうさんが、危険なめに合わないか、見ていたよ。」
「ぼくたち、高いところに登れるくらいに、おおきくなったんだよ。」
父ねずみは、いつのまに子どもたちは、こんな口をきくようになったのだろうと思いました。
「言うことだけは、達者になったものだ。」
「それにね、いいものを見つけたよ。」
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一匹の子ねずみが、父ねずみの前に、豆をひとつ置きました。
「おいしそうでしょう?」
「これは、ピーナッツというものだ。むやみに食べてはいけない。どくが入っているかもしれないのだから。」
「ほんとうに?」
子ねずみは、うたがわしそうに、においをかぎました。
「人間がわざと置いて行ったの?」
「そうかもしれない。おいしそうにみえるものほど、あぶないのだ。」
 その時、柱の木組みのすき間が、静電気で、パチッパチッと光ったのです。それから、すごいはやさで、白いけものが、父ねずみにおそいかかってきました。
「窓の外へ逃げなさい!」
父ねずみは、子ねずみたちを先に逃がすため、自分がおとりになり、反対のほうへ逃げました。子ねずみたちは、恐怖のあまり、棚の上で、ぶるぶるふるえています。
「おとうさあーーん。」
父ねずみは、白いけものの注意をひいて走りまわっていたのでしたが、とうとう、部屋のすみに追いつめられてしまいました。
(わたしは、つかまってもいい。子どもたちが、無事ならば。)
父ねずみが、かくごを決めたその時、棚の上から、模型飛行機が落ちて、ガタンと物音を立てました。子ねずみたちが、力を合わせて下へ落としたのです。白いけものは、一瞬、身を低くし、動きを止めました。
「おとうさん、はやく、はやく!」
そのすきに、野ねずみの親子は、無事に外へ脱出したのでした。
子ねずみたちは、お父さんにしがみつきました。
「お父さん、ごめんなさい。」
「もう、ここへは来ないことにしよう。」
すると、子ねずみが、小さな声で言いました。
「これ、持って行っていい?」
見ると、一匹の子ねずみが、大事そうに、ピーナッツを抱えていました。
「ピーナッツは、置いて行きなさい。」
そして、野ねずみの親子は、おやしきを去って行ったのでした。
 白いけものは、さんざん遊んでつかれたのでしょう。防災グッズのそばにあった毛布の上にまるくなり、そのまま眠ってしまいました。
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2024-01-27 23:54  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険3.みりのパトロール [短編童話 満月の夜の冒険]

三 みりのパトロール
 ねこは、夜になると、活動的になります。玄関のくつをころがして、かみついて、足でけってみたり、ろうかをダッシュして、スリッパに突撃してみたり。夜遊びには、何にも替えがたいみりょくがあるのです。たまに、お父さんが夜おそくまで起きていて、遊んでくれることがあります。そんな時は、嬉しくて、思わず爪を立てて、怒られることもあるくらい。今夜のみりは、遊び足りなくて、食卓の下、ソファの上、ろうか、お風呂場の脱衣所などに、おもちゃが落ちていないか見てまわりました。
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 二階へ行くと、すずかちゃんの部屋のドアは閉まっていましたが、お父さんとお母さんの部屋は、入れるようになっていました。みりは、お父さんのベッドへのりました。その時、なんだか奇妙な音が聞こえてきたのです。
音は、クローゼットの上のほうから、聞こえてきます。みりは、頭と前足を上手に使って、クローゼットの中へと入って行きました。


2024-01-26 14:32  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険2.庭 [短編童話 満月の夜の冒険]

二 庭 
庭のすみっこの、ちいさな穴から、子ねずみが、顔を出しました。家の人には知られていませんが、ここに、野ねずみの親子が暮らしているのでした。子ねずみは、親ねずみから、穴ぐらから出ないようにと、言われていましたが、つい、顔を出してしまったのです。
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「あ、おかあさんだ!」
「おみやげよ。」
母ねずみは、クッキーのかけらを、子ねずみたちにあげました。ひとまわり大きな父ねずみが、小走りでやってきました。
「今夜は、なかなかのぼうけんになりそうだ。」
「あなた、おやしきには、わながしかけられているかもしれないのだから、本当に気をつけてね。」
すると、三匹の子ねずみたちは、目をきらきらと輝かせて、父ねずみに言いました。
「ぼくたちも、ついて行っていい?」
「いかん。」
「でも、ぼくたち、ぼうけんがしたいんだよ。」
「絶対に、ついて来ちゃだめだぞ。」
父ねずみは、そう言うと、出かけて行きました。


2024-01-25 14:08  nice!(0)  コメント(0) 
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満月の夜の冒険1.リビングルーム [短編童話 満月の夜の冒険]

一 リビングルーム

 学校がお休みの日、すずかちゃんは、ソファにすわって、タブレットの画像を、ねっしんに見ていました。すると、ねこのみりが、すずかちゃんのとなりにすわりました。
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「みり、見てごらん。この子が、明日から、きょうだいになる、子ねこだよ。」
すずかちゃんが、手に持っていたタブレットの、子ねこが映っている動画を、みりに見せました。
「わたしはね、きょうだいがいたら、にぎやかでいいと思うんだ。」
みりは、目をつむって、
「にゃあ。」
と、小さく鳴きました。
その時、キッチンにいたお母さんが、顔を出しました。
「みりは、今、なんて言ったのかしら?」
「にゃあって。」
「きょうだいができるのは、オッケーってこと?」
「えっ?」
みりは今、確かに返事をしたけれど、オッケーかなんて、ことばも通じないのに、決めつけるわけにはいきません。
「ちょっと、わからない。」
「ほら、みりは、『ごはん』とか『おやつ』とか、人間の言葉がわかるでしょう? だから、すずかちゃんのお話しも、ちゃんと聞いていたんじゃないかと思うのよ。」
「ねこなのに?」
「そうよ。」
すずかちゃんは、みりを見つめました。みりは、すずかちゃんによりかかって寝ころんでいます。
「ところで、おやつにしない? お母さんはねえ、クッキーが食べたい。ゴーヤとバナナとミルクのジュースも。すずかちゃんは?」
「わたしも!」
「みりには、大好きな、ささみのおやつをあげるね。」
みりは、しっぽをピンと立てました。
「すずしくなってきたし、お庭にもっていって食べようか。」
「そうだね。」
庭の芝生のところには、テーブルやイスがありました。お母さんとすずかちゃんとみりは、庭で楽しくすごしました。
 その晩、テレビを見ながら、お父さんの帰りを待っている時、突然、みりが、立ち上がったのです。見ると、しっぽの毛が逆立ってふとくなっています。
「どうしたの?」
みりは、大きな窓のほうに、耳を立てています。いったい、何におどろいたのでしょう。お母さんが、大きな窓のカーテンをめくって、外を見ました。
東の空に、満月がのぼっています。お母さんが、大きな窓のカーテンを閉めながら、つぶやきました。
「ねこってふしぎよね。なにか、あやしいものが、見えたのかしら。」
ちょうどその時、リビングルームの戸がすーっと開いたのです。
「ハックショーーーン!」
「うわっ、びっくりした! お父さん、おかえりなさい。」
「ただいま。わるいわるい。おどろかせたかな。今日は、かいぎが長引いておそくなってしまった。」
「おつかれさま。」
「風呂に入ろうかな。」
お父さんが、お風呂場に行き、お母さんが、キッチンへ行ったタイミングで、すずかちゃんは、二階の自分の部屋へ行くことにしました。
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みりは、階段の出窓の、お気に入りのクッションにすわりました。お母さんが、おひるね用にと、置いてくれたのです。お母さんと言っても、みりは、みりを生んでくれた本当のお母さんとは、小さな頃にお別れをして以来、会っていません。みりは、まだ眠くなかったので、丸くなって、毛づくろいをすることにしました。


2024-01-25 00:35  nice!(0)  コメント(0) 
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短篇小説 W   別天地へ行け

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