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短篇小説 W 別天地へ行け
時計の音 [詩と文学♪]
振り子のように コツコツと 時の刻む音にそって
人は さようならをする
愛のある人 そうでない人 誰もがみんな さようなら
そうして 独りきりになる
今夜 たとえようもないほど寂しくて辛いあなたは
テーブルの上の花瓶を 見るともなく 見つめた
チューリップの花と てんとう虫が一匹
なにやら ちいさなちいさな声で しゃべっている
てんとう虫が云う
美味しい蜜を ありがとね
チューリップの花が 云う
命の限り なかよくしましょう
花瓶が云う
みなさん いつまでも 達者でね
そこへ もう一声
おーい わたしも 居まーす
誰がしゃべったのかと思ったら
それは 花瓶の水だった
また 声が!
おーい 元気か?わっはっは
それは
まだ口をつけていない ワイングラスだった
しゃべりだしたものたちは 屈託なく元気だった
孤独なんて ひとりよがりな 戯言なのかも知れない
わたしも ちいさくしゃべった
おーい ワイン 飲んでいいかい?
ワイングラスが云った
飲んでいいぞ
ワインが云った
飲んだら乗るな 乗るなら飲むな
わたしは なんだか 笑ってしまった
振り子のように コツコツと 時の刻む音にそって
万物は 生きていくかもしれないけれど
さようならを 告げる音だなんて
思うことはない
今は懐かしい 時計の秒針の音によせて
2008-03-15 15:36
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