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満月の夜の冒険4.屋根裏部屋 [短編童話 満月の夜の冒険]

四 屋根裏部屋
 満月が、南の空にのぼった頃、月明かりに照らされて、父ねずみのかげが、長くのびました。父ねずみは、屋根裏部屋の窓わくのところで、息をひそめていました。
父ねずみは、幼い頃に、両親がわなにかかってしまった時のことを思い出すと、恐ろしくなります。でも、冬、大雪が降った時、家族ですごす場所があればと思ったので、ここへ来ました。
父ねずみは、屋根裏部屋の南側の、窓のすきまから、部屋の中に入りました。つくりつけの棚の上に、防災グッズ、本、飛行機の模型やボードゲームなどが、置いてありました。ここなら、雪がどんなに積もろうと安全です。
 父ねずみは、ふと窓のほうをふりかえりました。そこで、黒いかげが見え隠れしているのに気づいたのです。ひとつ、ふたつ、みっつ。なんと、その黒いかげは、子ねずみたちでした。
「これはおどろいた! ついて来てはだめだと言ったのに!」
「おとうさんが、どこに行くか、気になったんだもの。」
父ねずみは、三匹の子どもたちに言い聞かせました。
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「ここから先に、入ってはいけないよ。窓の外に、隠れていなさい。」
子ねずみたちは、しかたなく、ひとかたまりになりました。父ねずみは、わながあるかどうか、部屋のすみずみまでチェックしてまわり、危険がないとわかったので、窓のところへもどりました。
 ところが、子どもたちのすがたがありません。父ねずみが、あわてていますと、頭上から子ねずみたちの声がしました。
「おとうさん、こっち、こっち。」
見ると、三匹の子どもたちは、部屋の中にはいり、つくりつけの棚の上にいたのです。
「ふう、まったく。おまえたちときたら。どうして、言うことをきかないのだ?」
「ここで、ちゃんとかくれていたよ。」
「おとうさんが、危険なめに合わないか、見ていたよ。」
「ぼくたち、高いところに登れるくらいに、おおきくなったんだよ。」
父ねずみは、いつのまに子どもたちは、こんな口をきくようになったのだろうと思いました。
「言うことだけは、達者になったものだ。」
「それにね、いいものを見つけたよ。」
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一匹の子ねずみが、父ねずみの前に、豆をひとつ置きました。
「おいしそうでしょう?」
「これは、ピーナッツというものだ。むやみに食べてはいけない。どくが入っているかもしれないのだから。」
「ほんとうに?」
子ねずみは、うたがわしそうに、においをかぎました。
「人間がわざと置いて行ったの?」
「そうかもしれない。おいしそうにみえるものほど、あぶないのだ。」
 その時、柱の木組みのすき間が、静電気で、パチッパチッと光ったのです。それから、すごいはやさで、白いけものが、父ねずみにおそいかかってきました。
「窓の外へ逃げなさい!」
父ねずみは、子ねずみたちを先に逃がすため、自分がおとりになり、反対のほうへ逃げました。子ねずみたちは、恐怖のあまり、棚の上で、ぶるぶるふるえています。
「おとうさあーーん。」
父ねずみは、白いけものの注意をひいて走りまわっていたのでしたが、とうとう、部屋のすみに追いつめられてしまいました。
(わたしは、つかまってもいい。子どもたちが、無事ならば。)
父ねずみが、かくごを決めたその時、棚の上から、模型飛行機が落ちて、ガタンと物音を立てました。子ねずみたちが、力を合わせて下へ落としたのです。白いけものは、一瞬、身を低くし、動きを止めました。
「おとうさん、はやく、はやく!」
そのすきに、野ねずみの親子は、無事に外へ脱出したのでした。
子ねずみたちは、お父さんにしがみつきました。
「お父さん、ごめんなさい。」
「もう、ここへは来ないことにしよう。」
すると、子ねずみが、小さな声で言いました。
「これ、持って行っていい?」
見ると、一匹の子ねずみが、大事そうに、ピーナッツを抱えていました。
「ピーナッツは、置いて行きなさい。」
そして、野ねずみの親子は、おやしきを去って行ったのでした。
 白いけものは、さんざん遊んでつかれたのでしょう。防災グッズのそばにあった毛布の上にまるくなり、そのまま眠ってしまいました。
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2024-01-27 23:54  nice!(0)  コメント(0) 
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