満月の夜の冒険6.二階の寝室 [短編童話 満月の夜の冒険]
六 二階の寝室
翌朝、すずかちゃんが一階へおりると、お母さんは、朝ごはんの支度を終えていました。
「おはよう、お母さん。」
「おはよう。すずかちゃん。」
スマホの画面を見て、お母さんが言いました。
「今日は、十時すぎに、ここを出て、こねこちゃんを迎えに行く予定よ。出かける用意をしておいてね。」
「はい。」
「そういえば、みりを見ていないわ。いつもなら、ごはん、ごはんって、待ちかまえているのに。すずかちゃん、お父さんを起こしてきて。みりもいっしょにねているかもしれないわ。」
「うん、わかった。」
すずかちゃんが、二階の寝室に入ると、お父さんは、まだ寝ていました。
「お父さん、起きて。朝ですよ。」
すずかちゃんは、お父さんのかけぶとんをバサリとめくりました。
「わあ、すずか、やめてくれ。起きる、起きるから。」
「あれ、みりは?」
「ここには、いないぞ。」
すずかちゃんとお父さんが、一階へおりて行くと、お母さんが、ふりむきました。
「グッドモーニング。」
「ねえ、お母さん、みりがいないよ。」
すずかちゃんが言うと、お母さんは、用意しておいたみりのごはんを、いったんテーブルの上におきました。
「どこかに、隠れちゃったのかもしれないわね。昨日の晩から、すこし変だったし。」
すずかちゃんは、心配な気持ちになってきました。
「なんでだろう?」
その時、一階を見てまわっていたお父さんが、あたふたと戻ってきました。
「いやあ、たまげた。」
「どうしたの?」
「風呂場を見に行ったら、むしが、二匹もいたんだよ。」
「いやだ、こわい!」
お母さんが、耳をふさいで、たじろぎました。
「退治してくれた?」
「退治したぞ。だがな、あのむしは、人間には悪さをしないし、害虫を食べてくれる、いいむしなんだ。」
「何のむしでも、気持ち悪いわ。」
「今度から、入って来られないように、しっかりガードしておこう。」
お父さんは、どんなむしが出ても、へっちゃらでした。すずかちゃんは、むしは怖いけど、それよりも今は、みりのことが心配でした。
「玄関は閉まっていたから、外にはいないはずだ。」
「どこへ行っちゃったの? みりー! みりちゃーん!」
いつもなら、名前を呼べば走って来るみりなのですが、足音も聞こえてきません。お母さんが、すずかちゃんの手をぎゅっとにぎりました。お母さんは、何かを思い出したようでした。
「そういえば、ベッドサイドのクローゼットのとびらが、半開きになっていたの。朝方、わたしが、閉めたのよ。」
「それなら、そこにいるかもしれない。すぐ、助けなきゃ。」
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