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マイとつばめの会話 [お話のかけら(練習中♪)]

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「私たちはね、たった一度だけ、神様に願いを叶えてもらうことができるのよ」
「ほんとに? どうやって?」
「神様に祈るとき、声が聞こえてくるの」
「ってことは…鳥さんは、神様とお話しができるの?」
「ええ」
「すごい」
「すごい?」
「うん。だって、人間は、神様とお話しなんかできないもの」
「それは初耳」
「あ~あ、いくら姿かたちが鳥になったところで、あたしの心は鳥さんにはなっていない。人間のままだわ。翼を広げて空を飛べば、鳥さんになれるってわけじゃないんだ」
「マイ、これから一緒に南の国へ飛び立ちましょう。旅の中できっとあなたも、一人前の鳥になれる」
「そうだね、あたしも立派な大人のつばめになって、ここに戻って来たい」


2016-07-06 21:51  nice!(15)  コメント(0) 
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携帯で読むためのメモ書き1 [お話のかけら(練習中♪)]

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1 一年生を迎える会
 4月なかばの朝の登校の時間です。麻岡真友は、小学6年生。今日は寝坊をしてしまって、お母さんにしかられてきたばかり。もう6年生になったのだし、もっと早く起きるように生活態度をあらためなくてはなどと考えながら歩いていると、
「あ、バッタがいる!」
急に、新入生の小川たけるくんが、草っぱらを指さして言いました。そして、つかまえようと田んぼのあぜにジャンプして、すべってころんでしまいました。
「だいじょうぶ?」
たけるくんを起こして、けががないかどうか確かめて、長ズボンの泥をはらってあげていると、
「おーい、ちゃんとついて来てよ」
前のほうから声が飛んできます。
「はあい、今行くよ」
真友は、草のついた小さなたけるくんの手を引っぱって列へ戻りました。
朝の集団登校では、同級生の須山瞬くんが先頭を、後方を真友が歩いていきます。、低学年を間にはさみ、高学年が前と後ろを守るのです。集合場所から学校までの距離は、2キロくらい。事故にあわないように気をつけなくてはなりません。真友は、朝、お母さんに叱られて、さっきまでちょっと落ち込んでいたけれど、気持ちを切り替えるのはうまいほうでした。
真友たちの通っているA市立南小学校は、小高い丘の上にありました。近くに川があり、春は山からの雪どけ水が流れてきます。校舎の北側に、新しい校舎を建てていて、南側の校庭の真ん中には、大ざくらの木がありました。市の天然記念物であり、南小のシンボルでもあるその木は、毎春、見事な花を咲かせてくれるのでした。
学校につき、席につくと、日直が前に出て、朝の会が始まりました。
「みなさん、おはようございます!」
「おはようございます!」
「それでは、朝の会を行ないます。今日の議題は、朝ごはんについてです。みなさんは、今日、朝ごはんは食べましたか?それでは、窓ぎわの一番前の席の人から、答えてください」
すると、
「食べました。昨日の残りのすきやきをごはんにかけたら、おいしかったです」
「ぼくとお兄ちゃんはしっかり食べたけど、お母さんは、野菜ジュースだけだった」
「ねぼうしてしまったので、ちょっとだけしか食べませんでした」
「半分食べて、あとは犬にやりました」
いろいろな答えに、みんなはうなずいたり、驚いたり、笑ったりしました。
みんなの答えを聞いた先生が、最後に感想をのべました。
「朝ごはんを半分しか食べなかったり、ちょっとだけしか食べなかった人は、理由はともあれ、もう6年生になったのですから、早く起きてしたくをして、きちんと食べるよう心がけましょう。朝のエネルギー源ですからね、朝ごはんは。車で言えばガソリンと同じです。しっかり食べれば元気が出ます。さて、今日の一時間目は、体育館で『一年生を迎える会』があります。みんなの最高学年としての、最初の行事です。先生はお客さんです。さくら会は、進行役、がんばってください」

南小では代々、大ざくらにちなみ、児童会のことを『さくら会』と呼んでいます。さくら会の役員は、会長一人、副会長一人、書記二人の4人で、毎年、選挙で選ばれます。今年の会長は、加賀見将太くんといって、6年生の中で一番勉強ができる生徒でした。
すると、クラスの中で一番やんちゃな風間雅紀くんが発言しました。
「今年のさくら会は、会長が、朝ごはんを半分、犬にやってんだぜ?そんなんで大丈夫?」
「そんなの、関係ないだろう」
「ちゃんとやれよ」
この発言に、みんなが笑っている中、真友は、少しも笑えない気持ちでした。このあと、マイクを持って進行役を務めるのは、自分なのです。

「大変よ」
副会長の大島ゆいちゃんが、息せき切って、ステージ横の真友のところへやってきました。
「どうしたの?ゆいちゃん、そろそろ、始めなきゃ」
「くす玉がまだできていないんだって」
くす玉は、メインイベントで使うからと、昨日、みんなで、遅くまで残って作っていたはずでした。
「ええ!?昨日の放課後、作っていたじゃない?」
「それが、壊れちゃってたんだって」
「そんな」
体育館は、2年生から5年生がすでに集合して、待ちわびた様子でざわついています。
「もう、はじまりの時間が過ぎてるわ。真友、お願い、先に始めてて!」
「えっ、あたしひとりで?」
「将ちゃんを呼んでくるから、それまでの間よ」
「あたしも、行く」
「だめよ、真友は、ここで時間稼ぎをしてちょうだい」
「そんなぁ」
真友は、『一年生を迎える会』で、書記として進行役をまかされていました。進行表通りにいけば、本当なら今頃は、新入生が入場する時間です。
「どうしよう・・・」

 ゆいちゃんがステージ裏に入ると、会長の将太くんと、書記の高梨良介くん、工作好きの雅紀くんが、くす玉を手でかかげて話していました。
「あとは、ひもをどう引っ張るかなんだよね、引っ張り方によっては、くす玉が開かないんだ」
「なんとかならないかな?」
「2分の一の確立で、うまくいかないんだよ。ひもが切れたら、ジ・エンドさ」
「もう時間がないよ」
「会長、どうする?」
「うーん・・・」

 その頃、真友は、体育館入口に控えている新入生と、在校生の視線が、痛いほど自分に集まっているのを感じていました。
(ど、どうしよう)
ざわざわとした声が、ガヤガヤとした騒ぎ声に変わっていきます。こんな時、昨年のさくら会役員なら、うまく全校生徒をまとめていました。真友は、動揺をおさえて考えました。新さくら会だって、それくらいのことはできる。あたしが、それをやらなきゃ。
真友は、勇気を振り絞って、マイクのスイッチを入れました。すると思った以上に大きなブチッと言う音がして、全身が燃えるように熱くなりました。
「静かにしてください」
マイクを通して話せばみんなに聞こえると思ったのに、思った以上に伝わらないどころか、ますますざわめきが大きくなり、5年生の男の子がやじを飛ばしてきました。
「そんな小さい声じゃ聞こえませーん」
それを聞いた真友は、大きく息を吸い込み、
「し・ず・か・に・してください!」
大きな声を出したのです。すると、さっきまであれだけざわついていた体育館が、一気にしーんとなりました。そして、次の言葉を言おうとして、それを用意していなかったことに気がつき、あわてました。
「えっと、しょ、少々、う、う待ちください」
(最悪!かみまくりだわ) 
言い終えたところでマイクのスイッチを切ると、会場が再びどっとにぎやかになり、見かねた先生が、真友のところへやってきました。
「真友くん、黙って見ていたけど、もう、始まりの時間はとうに過ぎているぞ。さっさと進行して」
「あの、先生。困ったことになって。会の終わりで割るはずのくす玉が壊れちゃったんです」
「それで、君達、どうするの」
「えっと、それは・・・」
「黙っていては何も始まらないよ。進行できないなら、この会は中止だ。マイクを貸しなさい」
「そんな・・・」
真友は思いました。この『一年生を迎える会』は、新さくら会にとって初めての行事です。それなのに、先生に今マイクを渡してしまったらどうなる・・・?あたしが弱気なために、みんなが頑張っているのに、新さくら会全体がだめだって思われちゃうんじゃない?さっきみたいに、5年生にまで、あんなふうにからかわれるのは・・・。真友は、マイクをぎゅっとにぎりしめて、離しませんでした。
その時、ステージ裏から、会長とゆいちゃんが出てきました。
「今からおれ達がちゃんとやります!」
先生は、うなずきましたが、くす玉を取り付けるのは手伝ってくれることになりました。
「お待たせ!真友。進行始めていいよ」
「うん!」
真友は、ほっとしたら涙が出てきたので、みんなに見えないようにして拭い、会の始まりを告げました。
 新入生の入場とそれぞれの学年の出し物が終わり、いよいよメインイベントのくす玉割りの時間になりました。あんのじょうと言うべきか、新入生の代表の子2人が、ひもを引っ張っても、くす玉は割れませんでした。ぽかんとしているところへ、会長が出てきて一緒に引っ張ったところ、なんと、くす玉ごと下に落っこちてきてしまったのです。 
(あちゃー、どうやって間を持たせればいいの?)
全身を冷や汗が流れるような気持ちで、真友はマイクのスイッチを入れ、みんなの前へ出ました。けれども、どうつくろっても、失敗は失敗です。何と言ったらいいのやら・・・謝る?それとも、ごまかす・・・?
 その時、ステージ裏から、雅紀くんが出てきました。
「貸して」
雅紀くんが真友の手からマイクを取って、大きな声で新入生たちに向かって言います。
「今のは、ドッキリだよ!」
すると、新入生たちから、
「ドッキリ?」
「そう、びっくりした?」
「びっくりした」
「あはは」
「今から、お兄ちゃんたちがいいというまで、新入生のみんなは、目を閉じて待っていてください」
「ええ、どうして?」
「どうしてもじゃ!音楽スタート!」
雅紀くんが、おばけの真似をしていうと、体育館のスピーカーから、突然、あらいばやしというお祭りの曲が流れてきました。そして、リラックスした雰囲気になったところで、雅紀くんがマイクを真友に持たせました。
「まったく、新さくら会は頼りないんだから」
じつは会の最中にステージ裏で、雅紀くんが、簡単なやりかたで予備のくす玉を作ってくれていたのです。
 そして、そちらのくす玉のほうは、見事に割れました。中から、
『ご入学おめでとうございます。ドッキリ大成功!』
と書かれたたれ幕が出てきました。これを見て、他の学年の先生方が、ほほうと笑いました。笑顔いっぱいで退場して行くちっちゃな子たちの姿は、とてもほほえましいものでした。
「以上をもちまして、新入生を送る会・・・あ、間違えました。迎える会を終わります」
最後の最後まで、とちってばかりの真友。これからどうなることやら、心配です。

午後の授業が終わってすぐに、会長の将太くんが、真友のところへやってきました。
「放課後、今日の反省会をやるから、児童会室に来てくれる?」
「はい」
放課後になると、将太くん、ゆいちゃん、良介くん、真友の4人は、児童会室のテーブルの席につきました。話を切り出したのは、将太くんでした。
「みんな、今日はお疲れ様でした。今日の『新入生を迎える会』は、成功だったと思う人は手を挙げて」
そこにいた4人のうち、手を挙げた者はいませんでした。
「じゃあ、失敗だったと思う人は?」
今度は、ゆいちゃん、良介くん、真友の3人が手を挙げました。真友は、自分のせいだと思い、顔が真っ赤になりました。
「ごめんなさい。あたしが、うまく進行できなかったせいで・・・」
「もちろん、あれで、成功だったなんて言えないわ」
ゆいちゃんが、発言します。
「真友がとちりまくったって言う人がいるけれど、あの状況をひとりで乗り切れっていわれたら、誰だって動揺するわよ。ところで、将ちゃんはどっちにも手を挙げていないけれど、成功、失敗、どっちなの?」
「僕は、今日の会は、僕達の計画通りではなかったけれど、成功したと思っているんだ」
「どういうわけで?」
「まあ、簡単に言うと、新入生の笑顔がたくさん見られたから成功。かなり想定外だったけど」
会長の言うのもわかるけれど、どうも腑に落ちないといった調子で、ゆいちゃんが続けます。
「想定外って、くす玉のことよね?そもそも、どうして、朝になってくす玉が壊れていたの?わたしには、そこがどうしても納得できないのよ」
すると、ずっと黙っていた良介くんが、口を開きました。
「あのくす玉は、割れちゃいけなかったんだ」
ゆいちゃんが立ちあがって、良介くんに詰めよりました。
「どういう意味?教えてちょうだい」
そこで、会長が立ちあがって、ゆいちゃんを椅子に座らせました。
「副会長、落ち着いて。話は長くなる。良介くんが、朝、児童会室に来た時、くす玉は壊れていなかった。けれど、それは本物とすり替えられていたんだ」
「え・・・?」
真友とゆいちゃんが顔を見合わせました。
「その事に、気がついたのが、良介くんなんだよ、ね?」
会長が返事をうながすように良介くんの腕をつかむと、良介くんは震えながら、朝の出来事を話し始めるのでした。
「僕達が作った本物のくす玉は、もっときれいな色をしていた。だから、朝置いてあったくす玉は、一目で違うとわかった。それで、変だなと思って僕は、くす玉の中を開けてみた。そしたら・・・、中には、違う垂れ幕が入っていた。僕はパニックになって、くす玉を落として壊してしまった。雅紀くんに頼んで、修理してもらったけれど、結局、本番では開かなかった」
ゆいちゃんは、話の途中で聞きました。
「ちょっと待って、重要!その偽物のくす玉、垂れ幕には、なんて書かれていたの?」
「それは、もう捨てちゃったから・・・」
「おかしな言葉だったの?」
「僕、言いたくない」
良介くんが唇をかみしめていると、会長が言いました。
「僕は見た。およそ、新入生を迎えるには似つかわしくないような言葉が書かれていた。信じられない気持ちだよ」
「あたしも、会の最後にとんでもない言い間違いをしちゃったこと、ごめんなさい」
真友が言うと、会長は真剣な面持ちで言いました。
「そういうレベルの話ではないよ。この件は、もっとずっと悪質ものを秘めている」
 そこで、児童会室の扉をどんどんと叩く音が聞こえました。会長が、どうぞというと、雅紀くんが入ってきました。
「ちは!何やってんだよ、みんなで暗い顔して」
「雅紀くん、どうしてここに?」
真友が言うと、雅紀くんは、舌打ちをして、
「あ~めんどくさいな、なんだよ、俺を呼びつけておいて、その言い草は!」
「僕が、雅紀くんを呼んだんだよ。今日の功労者だからね。そこ座って。今、今朝の反省会をしているんだ」
「反省会って、そんなことばっかやっていると、どんどん辛気臭くなるだけじゃないの?よかったね、ひとり、天然な人を入れておいて」
「誰のこと?」
真友が言うとすかさず、雅紀くんが、
「お前のことに決まってるでしょ」
と言ったので、みんなが、くすくす笑いました。


















2 大運動会
お昼休みになると、最近、グラウンドに2つの大きな集まりができます。何をしているかというと・・・?
「フレー!フレー!赤組!」
「がんばれ、がんばれ!白組!」
応援合戦の練習です。運動会がもう間近にせまっているのです。
 お昼休みが終わり、4、5、6年生がそのままグラウンドに残りました。5時間目に合同体育があるためです。

「あたしのぼうし、知らない?」
真友は、体育のぼうしを探していました。5時間目の体育に必要なのです。すると、ゆいちゃんが話しかけてくれて、探すのを手伝ってくれました。
「水飲み場のところかもしれないよ」
「行ってみよう」
2人が走って行ってみると、そこには、クラスメイトが数名いました。
「ねえ、ここに、体育のぼうしが置いてなかった?」
「これでしょう、はい」
渡してくれたのは、寺沢奈絵ちゃんでした。奈絵ちゃんは、小柄で色の白い女の子です。
「ありがとう」
「ううん。真友ちゃんの名前が書いてあったから、持っていこうとしていたところなの」
「よかったね、見つかって」
みんなで歩いていると、先に集合していたクラスメイトがこちらに声をかけました。
「みんな、こっちだよ。学年ごとに整列しなさいだって」
「はあい」
 先生の指示で、住んでいる地区をもとにして、生徒たちは赤組と白組に分かれます。自分達の呼ばれる番を待っている間に、ゆいちゃんは、メンバーの分析を始めました。
「なんか人がかたよっちゃってる。とくに男子は、白組にばかり運動神経のいい子が集まっているわ」
「ほんとだ」
「はい!あ、呼ばれた。わたしは白組だわ」
ゆいちゃんが言いました。
「奈絵ちゃんは?」
「赤組よ」
「真友は?」
「あたしも、赤組。おてやわらかにね、ゆいちゃん」
「えー?じゃあ、ここからそっちは、敵なの?」
全体が、赤組と白組に分かれたところで、続いて、団体種目とリレーの選手の順番が発表されていきます。
「リレーのアンカーは誰になるのかな?」
「こればかりは絶対、足の速い人じゃなきゃだめよね。アンカーは責任重大だもの。はくだけで足が速くなるくつとか、巻くだけで万能選手になれるはちまきとか、誰かつくってくれないかなあ」
真友がどきどきしていると、奈絵ちゃんがほっと息をついて言いました。
「アンカーは男子に決まったわ」
続いて、団体競技の練習です。いくつかの競技は、前にもやったことがあります。今日は、おもに、騎馬戦の練習をしました。男子の騎馬戦が、活気にあふれているのに対して、女子のは、いまひとつもりあがりにかけていました。そして、真友のチームはとくに、おとなしい子が集まっていて、すぐにぼうしをとられてしまうのでした。

 そして、5月のよく晴れた日。いよいよ、大運動会の日がやってきました。開会式、準備体操、短距離走、玉入れ、綱引き、大玉ころがし、PTAのパン食い競走などがあり、午前の部が終わりました。それぞれが、応援に来てくれた家族のもとでお弁当を食べた後、いよいよ午後の部が始まります。
 ここまでの得点は、赤組が510点。白組が550点です。
 応援合戦は、なんと同点。続く騎馬戦は、高学年の見せどころ。最後の大量得点のチャンスです。とくに、赤組は、ここで負けたらもうばん回のチャンスはありません。
先生の号令とともに、騎馬戦が始まります。
「それでは、男子1回戦をはじめます。騎馬を作ってください。用意、はじめ!」
白組大将の雅紀くんが、掛け声をかけます。
「よし!ガチンコ勝負だ!行くぜ」
対する赤組の大将は、将太くんです。
「みんな、がんばって!」
1回戦は白組の勝ちでした。雅紀くん率いる騎馬隊が、圧倒的な強さを見せました。そして、2回戦にいく前に、作戦タイムが取られました。
赤組大将の将太くんが、味方を集めて言いました。
「2回戦は、絶対に負けられない。作戦を立て直そう」
「白の大将の騎馬がめちゃくちゃ強いよ」
「赤の4年生がほとんどやられちゃったもんなあ」
4年生がしゅんとしてしまったので、将太くんが力づけました。
「大丈夫さ。2回戦めは、大将がぼうしを取られなければいいんだ。そのためには、君たちの力が必要だ。4年生と5年生は、なるべく僕の周りにくっついて、みんなでバリケードを作って、敵の騎馬を近づけないようにしてほしい。いいかな?」
すると、5年生の渡辺慎太郎くんが、
「そんなのつまらない。おれたちの騎馬は攻めさせてよ」
と不満を言ったので、将太くんがうーんと考え込みました。
「それなら、慎太郎くんは、白組大将のぼうしを取ってこられる?」
「それは・・・わかんないけど」
「わかんないなら、だめなんだ。ここは、勝ちにいくための作戦を立てなくちゃならないから」
慎太郎くんは、口をとがらせ、目をそらしました。
作戦タイムが終わった後、6年生の瞬くんが、5年生の慎太郎くんの背中をたたきました。
「慎太郎、めげるなよ」
「・・・」
「あっちの大将が強すぎなんだよ。でもさ、俺らの騎馬で団結して、絶対にぼうしをとって来てやるよ。だから、お前らは大将を守ってくれ!」
「そんなのつまらねえ。俺の力を封じるなら痛い目にあわせてやる」
「慎太郎、そうじゃないんだよ、これは、赤組が勝つための作戦だぞ。白に勝たせるつもりか?」
「白には、負けたくねえ!」
「よし、その意気だ。頑張ってくれ!」
そして再び、先生の号令があり、男子2回戦が始まりました。
「ガンバレ!」
「負けるな!男子」
応援の声が飛びかいます。男子の試合は、怖いくらいにぶつかりあって、すごい迫力です。騎馬は何組もくずれかかっては持ちこたえています。
「今度は、赤が盛り返しているよ!」
「男子2回戦めは、赤組が勝った!」
「次は、あたしたちね」
 騎馬戦女子1回戦目は、始まってからしばらくたっても、両軍なかなかぼうしをとれないでいました。真友の騎馬隊のメンバーは、戦うのをさけて、ぼうしをとられないように、端のほうを走っていましたが、結局、前と後ろではさみうちにされ、白組5年生の騎馬に取られてしまいました。
「ごめん、あっさり取られちゃった」
奈絵ちゃんが申し訳なさそうに言った時、真友は、となりの騎馬隊が激しい戦いをしているのを見ました。足をけったり、髪の毛をひっぱったりしているのです。そしてそれは、赤組5年生でした。しかも、上に乗っている子は、あごにぼうしのひもをかけています。真友は、その子の騎馬隊を引きとめました。
「何すんの!」
「ぼうしのゴムは、外さなくっちゃ」
真友が言うと、騎馬の上に乗っていた赤組5年生の斉藤まりえちゃんが、怒り出しました。
「味方なのに余計なお世話よ!あんたたちなんか、すぐ負けたくせに」
「やめ!」
そこで、先生の声がかかり、女子一回戦が終わり、作戦タイムとなりました。 
 
「みんな、けがしてない?」
白組大将のゆいちゃんがみんなを気遣って言いました。すると、ひざから血を流している4年生や、突き指をした5年生がいて、ゆいちゃんは、せつない気持ちになりました。
「みんな、無理しないでね」
「ゆいちゃんも、傷が」
「あ、これ?大丈夫よ」
「これじゃ、まるでケンカみたい」
「そのようね。赤組はひきょうな手を使ってくるから、みんな気を引き締めて。2回戦めも、がんばろうね!」
 
 作戦タイムの間中、赤組はずっともめていました。
「反則をしたら、した人は負けになるの。ぼうしは後ろかぶりで、ゴムひもはかけないこと、いい?」
赤組大将の柳沢浩子ちゃんが、はっきりと言いました。すると、5年生の斉藤まりえちゃんが、立ちあがって抗議したのです。
「あたしたちが反則をしたというのなら、6年生はどうなんですか?全然やる気がないと思います。逃げ回ってばかりいる6年生に注意されたくないです」
まりえちゃんが、真友の方を見ました。
「あたしたち、赤組のために必死にがんばっているんです。邪魔しないでください」
「そんな」
真友は、言い返したい気持ちをぐっとこらえました。涙で目の前がグラグラと揺れました。あたしたちは、ぼうしをとられないように逃げ回った。それは間違っていない。だけど、結果は、ぼうしをとられてしまった。それはやっぱり悔しい。それに、正しいと思って注意をしたことで、こんなふうに言われるのは悲しい。同じ赤組同士で、どうしてこんなに言い争いをしているのかもわからない。あたしは一体、この騎馬戦で、誰と戦っているんだろう?味方、敵、それとも・・・?
すると、5年生のもうひとりの女の子がおずおずと言いだしました。
「まりえちゃん、ちょっと言い過ぎだよ。反則はやっぱり、しないほうが・・・」
「なによ、裏切るの?」
「ち、違うけど」
見ると、まりえちゃんの騎馬をささえていた女の子達は、足に傷を負っていました。真友は、はっとしました。もしかしたら、この子たちは、まりえちゃんに逆らえなくて、反則は悪いことだって分かっていて、従っていたの・・・?
 赤組大将の浩子ちゃんが言いました。
「もう、作戦タイムはあまりないわ。とにかく、みんな正々堂々と戦って!反則するくらいなら、戦いに出ないで!」
真友の騎馬隊のメンバーの、トモとけいちゃんが、ひそひそと言いました。
「あの、まりえって子、自分だけが頑張ってるつもりなのかしら」
「真友も何か言ってやればよかったのに」
「言い返せなかった。ごめん」
「謝ることなんてないよ。あのまりえって子が生意気なんだから」
「けど・・・あたし達もちょっとたるんでたかも」
「負けてられないね」
「うん」
そこで、けいちゃんが提案しました。
「奈絵は、正直、騎馬に乗るには性格が優しすぎると思うの。白組大将のゆいに対抗するには、真友が上に乗った方がいいんじゃない?」
「あたしが?」
「十分戦えると思う。腕も長いしさ」
「そうだよ、下はあたし達が支えるから、上でがんばってみなよ」
奈絵ちゃんもこれに同意しました。
「真友ちゃんがやる気なら、あたしは下で支える。こう見えて、結構力持ちなの」
「わかった。みんながそう言ってくれるなら」
真友は、3人の騎馬に乗りました。
「ごめん、重いでしょ」

「用意、始め!」
騎馬戦女子2回戦が始まりました。騎馬戦もこれが最終決戦です。ここで、赤組女子が勝てば、逆転できます。。
「真友、行けーっ」
一番に白組大将のぼうしを取りに行ったのは、真友の騎馬でした。ゆいちゃんは、真友の攻撃をひょいとかわして逃げます。
「危ない、後ろ!」
けいちゃんの声にはっとし、後ろから来る騎馬に応戦している間、まりえちゃんの騎馬が、ゆいちゃんの騎馬へ突入しました。
「みんな、お願い!」
ゆいちゃんが手を挙げて声をかけると、白組の騎馬が2騎やってきて、まりえちゃんのぼうしを取りました。
仲間の騎馬が次々とやられていく中、真友の騎馬は、浩子ちゃんを守ろうと懸命に応戦していました。
「浩子ちゃん、右よ!」
「前、前、前!」
前方へ逃げたはずのゆいちゃんの騎馬隊が目の前にいるのに気がつかず、あっと思った時には、浩子ちゃんのぼうしはなくなっていました。
ゆいちゃんの騎馬隊は、風のようにくるくる回りながら、赤組の包囲網を破ってきたのです。
「やめ!」
終わってみると、なんと、白組大将ゆいちゃんは、4つもぼうしを取っていたのでした。
「白組の勝ち!」
勝ちが告げられると、白組女子から歓声があがり、ゆいちゃんの騎馬は抱き合って喜びました。

 騎馬戦が終わった後は、フォークダンス、そして最後に全校リレーを行なって、大運動会は閉会式をむかえ、幕を閉じました。終わってみると白組の勝ちでした。
 全校生徒が参加賞をもらい、それから、PTAのお父さんとお母さん、6年生は、片づけのために居残りをして、その後、解散となりましたが、生徒達は、まだおしゃべりを続けていました。
大ざくらの木の根元では、ゆいちゃんと真友が話をしています。
「びっくりしたわ。真友が、本気であたしにむかってくるんだもの」
「あたしも・・・って、自分でびっくりしてたら世話ないよね。ゆいちゃんの騎馬は、まるでつむじ風みたいに、みんなのぼうしを巻きあげたね。圧巻だったよ」
「そう?みんなのおかげよ」
ゆいちゃんは、そう言ってピースサインをしました。その頬には、ばんそうこうが貼られていました。
「傷、だいじょうぶ?」
「ちょっとひりひりする。じきに治るわ」
「傷がはやく治るおまじないがあるんだ。家に帰ったら、本見てみるね」
「なんだ。今すぐ、おまじないしてくれるのかと思ったわ」
「だいじょうぶ。おまじないは、遠くからでも祈れるから」
「急がないのね?真友らしいわ。じゃあ、家に帰ったら祈ってちょうだい、忘れないでね」
ゆいちゃんは、内心、真友は家に着く頃には忘れてしまうんだろうなと思いながら、にっこり笑いました。


2011-08-17 23:23  nice!(1)  コメント(0) 
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一本気な彼と曖昧な私 [お話のかけら(練習中♪)]

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すごく気の合う彼がいたの。
でもね、彼の家に遊びに行くことはあっても、外へ出かけることはあまりなかったの。
私は外へご飯を食べに行きたくても、彼が嫌だと言えば、家で過ごした。
そうなんだ。
私の方から何かを言い出しても、だいたい却下されてしまって。
そんなこんなでもね、私もお人よしなところがあり、笑って済ましていた。
彼は、だいたい何かあるとたわいもないことで電話してきてね、
それで、「すっきりした、ばいばい」と言ってさよなら。
何かあって私の方からかけても、留守電になっていたりして、すぐには出ない。
要するに一方的なのよね。
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ある時、彼が私に、仕事の世話をしてくれると、電話があったの。
私は、自分の将来にかかわることだから、真剣に迷っていて、つい曖昧な返事をしてしまったわ。
「明日までに考えておいて」と言われて、電話を切った。
その数時間後に、再び電話がかかってきて、私の話などはお構いなしに、また仕事をしつこく勧めてきたから、
私は思わず、「私の話も聞いてくれる?」と、いつになく強い調子で、言ったの。
そしたら、彼の態度が急変して。
電話の声が急に低くなってね、怖かった。
「気を悪くさせちゃって、ごめんね」と言って謝ったんだけど、
「もういい。連絡なんかしてこないでいい」とのこと。
私もカチンと来て、本当に、連絡しなかったの。
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その後には、まったく絵文字無しのメールが来たわ。
メールには、「俺の紹介が嫌なんだね」とか「俺とはもう何の関係もないわけだから、好きにすればいいよ」
などと書いてあった。
メールでは相手の表情までは読み取れないし、電話をしようにも恐ろしくて、私はそれ以来、1度も電話を掛けていない。
日頃仲良くしてくれていた態度が一変するなんて・・・私はなんだか怖くなってしまった。
その後、別のところで就職が決まり、彼に報告とお礼のメールを入れたが、そっけない返事しか返ってこなかった。
あんなに、親しかった態度・・・あれは嘘だったのって思ったよ。
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こういう事の起こった原因は、ひとつには、私の態度がいつも、曖昧だったためだと思う。
今まで、何を言われても、うんうんと話を聞いていたのが、自己主張をするようになったから。
だから、ぶつかってしまった。
彼を失ってしまった悲しみはあるけれど、私は、私でいるために、自分の意見を言いたかった。
いつも、遠慮してばかりいて。
いい人を演じているのには、疲れちゃったの。
彼は、私を、美化したようなことばかり言っていたけど、ふたを開けてみれば、全然違っていたって思ったでしょうね。
彼が見ていたのは、本当の私ではなくて、彼の理想とする幻影だったんだよ。
思えば彼は、どこか世間ずれしていて、病んでいて、疲れてくると、私に連絡をしてきた。
私って、ただの愚痴聞き女なんじゃないかって思うくらいにね。
少し前なら、それでも構わなかった。
でも今は、それでは満足できなくて。
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私は、流されるままに、彼とおつきあいをしてきた。
彼は、正直で一本気な人で、素敵だった。
ただ、それを受け止めていられるうちはよかったが、私はくたびれてしまったんだ。
でも、ちょっと、ほっとしている。
もう、無理をしなくてもいいから。
自分の殻を捨てて脱皮して、人生の駒をすすめていかないと、このままでは私、つぶれてしまう。
自分を立てることを覚えて、人の言うままにならずに、生きていきたい。
今回のことは必要なことと思っている。
今更かもしれないけれど、彼には申し訳ないけれど、これ以上、愚痴を聞くだけの女ではいられない。
今まで、ありがとうって、伝えたい。


2010-07-02 01:09  nice!(0) 
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春待つ鳥 [お話のかけら(練習中♪)]

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里山の雪も解けだす早春、民家の軒下で、小鳥が3羽、おしゃべりしていました。


「庭も畑も、穴ぼこだらけよ。一体誰の仕業かしら?」
「もぐらちゃんとねずみくんだよ。こないだ、穴から仲良く顔を出していたよ」 
「まあ! 冬の間、土の中で、ごちそう三昧だったあのひとたちでも、春は待ち遠しかったのかしら」
「春は、ほんとに、いいものですものねぇ」

「・・・ごちそうを食べていたのなら、どうでしょうねぇ」
「春は、ごちそうよりも、素晴らしいのさ]


小鳥たちは、畑の際に落ちていた野菜の切れ端をめざとく見つけると、しばらくつついてから、嬉しそうにもらっていきました。


2010-03-09 01:34  nice!(0)  コメント(0) 
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痛生の魔法 [お話のかけら(練習中♪)]

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「相手の身になって考えるようにしよう。そうすれば、相手の痛みがわかるようになるよ。」

その言葉を信じて、わたしは、生きた。
私の意思こそが、相手の意思・・・。
そう思い続けた。
そして・・・とうとう、私のからだに、異変が起きた。

「痛みを感じる。でも、これは、誰の痛みなの?」

私は、姿形が、相手そのものに変化してしまっていた。
長い間、自分で自分を、大切にしてこなかったからだと、思った。

「己の痛みに敏感になっていこう。そうすれば、自分自身を、取り戻せるようになるよ。」

自分自身の痛みについて、考えれば考えるほど、狭苦しく窮屈になっていった。
苦しいとか、痛いとか、そんなことよりも、もっと、大事にしたいものが、
私には、なかっただろうか。
何故、痛みにばかり、こだわるようになってしまったのだろうか。

「痛生の力」

それは、相手の痛みを感じると、自分自身が、相手になりかわってしまうという魔法の力だ。
これから、私には、難しい人生が続く。
自分の痛みを思い出し、感じながら、生きていくことで、本来の姿形を思い出したい。














2009-09-13 23:03  nice!(1)  コメント(2) 
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ソフトクリーム・シェルター・アイドル [お話のかけら(練習中♪)]

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昼間の劇場ホール前で並ぶ、たくさんの人びと。
その中に、わたし達5人組がいた。今日は、大ファンのアイドルGの昼間の舞台公演の初日だった。
「どうしよう、緊張してきた」
「わたしも」
わたしと持田萌(通称もっち)は、口をそろえた。
「わたしたちが緊張しても始まらないのに」
「そうよね」
「混んでるかな、どうしよう行って来る?」
「なに?トイレの相談?」
遠野太一くんが言う。もっと早くに済ませておけばよかったとばかりに。
「わたしたち、行って来る。開場するまでには戻ってくるね。みんなちゃんと待っててよ?」
わたしが言うと、鳥谷くんは素直に「うんわかった」と頷き、
遠野太一くんは「はやく行って来いよ」と大きい声で言い、
仙葉亮くんは、「大のほう?」と、わたしたちをからかった。
わたしは、いらっとした。いつまでたっても子供っぽいからかいかたをされて、ちょっとむかついた。
「違う!公共の場で!小のほうよ!」
そんなことで、ムキになってしまう自分も、子供っぽい。
「アンったら、大きな声ではずかしい。みんなさ、もしあたしたちが遅くなりそうだったら、先に入ってていいからさ」
もっちが気弱に言うと、
「なに、待ってる?それとも先に行く?まあいいや、どっちにしても、指定席だから平気平気。2人まとめて、あんころもち、出動せよ」
仙葉亮くんが、ナントカライダーの真似をして格好つけて言ったので、もっちが、くすっと笑った。
わたしの名前は、遠野杏子。(杏子と書いて、あんずと読む)。でもなぜだか、あんこ、とかアンちゃんとかって呼ばれる。
もっちとわたしは、中学へあがってすぐに意気投合した親友同士だ。
もっちは、髪を肩へおろし、わたしは、ポニーテル。仲良し5人組で、よく出かけるのだけど、今日は、特別な日。
はやいとこ、ホールへ入りたい。

その建物といったら、ちょっと目立つのだった。巨大なソフトクリーム型の、白い屋根。
それを支えるワッフルのような外壁。公共の建物だからか、それとも、ただの建築デザイナーの悪趣味なのか、誰かが、意図して作ったにしては、なんだか微笑まし過ぎるような建物だった。
トイレの場所をさんざん探し、やっと見つけた。開演前のこんな時は、だいたい混んでるものなのに、誰も並んでおらず、すぐに中へ入ることができた。そして、入ってすぐに、わたしはおでこをぶつけた。続いてもっちが、わたしの背中にぶつかった。
「わっ」
いきなり、板壁が、目の前にあったのだ。
そこらじゅうに、目隠しのためなのかわからないが、板が張り巡らしてあった。もっちとわたしは、前後に手を携えて、道なりに入っていった。曲がりくねった狭い通路は間もなく終わり、地下へと続く階段がみえた。
「ねえ、ここ、なんか違うんじゃない?」
わたしたちは、誰に聞くともなくそういいながら、階段をおりた。
地下へ続く階段は、とても急だった。螺旋状に下へ下へと、おりる人を誘うようなつくりだった。前に星の科学館へ行ったときにもこんなつくりのところがあったけれど、こんなに長くはなかった。降りても降りても、ずっと地下へ行くばかりで、まるで、井戸の中に降りていくような錯覚さえ覚えた。繊細な神経のもっちは、気持ち的に耐えられなくなったらしい。
「ねえ、ここ、やっぱどう考えても変」
「うん、なんかね、もしかすると」
「地下シェルターかしら」
わたしたちは、ななめ目線で、顔を見合わせた。
「わたし、やっぱり戻って、確認してくるね。アンも戻るよね、だってここ怖いもの」
もっちは、わたしが、直行型な性格なので、このまま戻りたがらなかったらどうしようと思ったみたいだ。その読みは、正しい。さすがは、もっち。
「でも待って、もうちょっとしたら、下へ行き着くかもしれない。わたしは、降りてみる。トイレを発見したら、下から大声で叫ぶわ」
「なんて叫ぶの?」
「トイレあったよーって」
もっちの繊細な感性が、その言葉を受け付けないみたいだった。
「もっと、なにか合言葉を決めない?」
「合言葉?」
とっさに、「あんころ、もち」と浮かんでしまった自分が嫌になる。あわてて頭の中の消しゴムで消した。
「杏寿と厨子王」
もっちは、なんだか難しいことを言う。
「もっち、それはいくらなんでも、変だよぅ。やだ」
「じゃあ、どうする?」
たっぷり1分は、考えた。いろいろ思いついたことを言ったが、ことごとく却下された。
「なんでもいいじゃん合言葉なんて」
とうとう、しびれを切らしてしまった。
「わかった。じゃあ、アンに任せるね」
なになに?結局、今の相談は、ただの時間のロス?
もっちは、螺旋階段を逆方向に、カンカンと音を立てて上っていった。
私は、少しでも早くと、そのまま階段を駆け下りた。上下で、カンカンという足音が鳴り響いた。
そして、まだまだ続く螺旋階段の途中で、やっとドアを発見した。わたしは、もっちを呼ぼうとして、その前にそこがトイレであることを確認しようと、ドアを開けて、一足踏み出した。
が、その足を、すぐに戻した。中に、男の子がいたのだ。目が合ってしまった。わたしは、あわててドアを閉めた。
そして、その一瞬に、見間違いかと思うほど重要な、今日この晴れの日の舞台に輝くばかりのオーラを放つであろう人物を見たような気がした。
「エヴァンが、いたような!?見間違い、ヨネ」
品がなくってごめんだけど、トイレなんて引っ込んじゃった。
ドアの向こう側には、広い部屋があって、人気アイドルGのエヴァンくんが、椅子に座っていて、端正な横顔がこちらを向いていて・・・うきゃ~~(言葉にならない)。
わたしは、あらためて、中に入ろうか、自分の胸の鼓動と相談した。ここから、中へ入ればどこかへ通じているだろう。だけど、一回ドアを開けてすぐ閉めた子が、また入ってきたら、頭のおかしいファンの子だって思われるんじゃないかな。だめだ。エヴァンくん相手に、初めて生で会うのに。あ~どうしよう!
わたしは、前髪を整えようと、必至だった。
すると、もっとずっと階段の下のほうから、話し声と足音が聞こえてきた。


2009-07-25 00:16  nice!(0)  コメント(0) 
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青になれ! [お話のかけら(練習中♪)]

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黒いコートのポケットに手を入れ、横断歩道を歩いて行く男の人がいた。

あの姿、雰囲気、歩き方・・・。
心の中で、大きく鐘が鳴り響いた。

「・・・!」

目よりも速く、心が、懐かしいあなたの姿を追いかけていた。
気持ちが、全開になった。
思わず見守った。

あなたが、こちらを見た。
再び見た。

見つめあったのは、いつ以来、
何秒間の出来事だったろうか。

交差点。
あなたの信号は、青。
私の信号は、赤。

あなたの歩く方角へ、わたしも歩いて行きたくなる。
でも今は行けない。
どんなに近くても、別々の道を行かなくては。

あの頃とは、あまりにも違うシチュエーション。
遠く離れていて、言葉もかわせないまま。
なのに、
あなたの瞳のマジックは、
効力が切れていなかった。
まだまだこんなにも、有効だなんて。

あなたの姿は、すでに、遠くかなただ。
相変わらずの早歩きに、わたしは、あきれかえる。

いつまでも、心の中に魔法をかけられたままでは、何も決められない。
運命の分かれ道は、自分の意思で選ばなきゃ。
わたしは、あなたを、
追いかけたいの?逃げたいの?歩きたいの?走りたいの?

信号が青に変わった。
わたしは、わたしの進むべき道を、信じて行く。


2009-01-17 01:02  nice!(1)  コメント(2) 
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三日月家のおはなし(練習版) [お話のかけら(練習中♪)]

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「ねえ、赤城さん、知ってる?三日月護先輩って、かわいそうな人なのよ」
「三日月先輩が、どうして?かわいそうなイメージ全然ないよ。ころんですりむいちゃたとか?」

あたし達は、お昼休みのトランプゲームの輪から抜け出して、ベランダでしゃべっていた。田口さんは、うわさ話が大好きだ。
三日月護先輩のことなら、なんだって知りたい。だからといって、唐突にこんなふうに、あたしの大好きな先輩の話が出ると、びっくりして顔に出てしまう。顔に出ないようにしなくっちゃ恥ずかしい。

「そんな簡単な話じゃないのよ。三日月家の呪いの話・・・赤城さん、聞いたことないの?」
「そんな話、知らないよ」
すると、田口さんは、小さな声で言った。
「ある人から聞いたんだけど、身の回りの物でカモフラージュしているんだって」
「カモフラージュって、何を?」
「いろいろよ。例えば、お箸とかお茶碗とか、くつや洋服、ふでばこや下敷きや・・とにかくあらゆる物をね、めくらまししているんだそうよ。呪者からの目をそらせるために、本人のものは、絶対に使わせないんだって。そうやって、代々の呪いから、命を守っているのですって」
あたしは、半信半疑で聞いていた。
「ということは、三日月先輩の本当の持ち物はどうなるの?」
すると、田口さんは、ベランダにあたし達しかいないことを確認して、口を開いた。
「自分のものは、ちゃんととってあるんだって。大きな声では言えないけれど・・・」
田口さんは、こいこいと手招きして、ひそひそと私の耳に手を当てて、話した。
「使う物が増えるたびに、一度、御祓いをして、宝物庫へしまうのですって。そうして、自分のものをしまっておいてあるのですって」
「持ち物全部にそれをやるなんて、無茶だよね」
「それにね、三日月護先輩の本当の名前は、護なんかではないのよ」
「えっ!?」
「しーっ!しーっ!」
田口さんは、あたしの口を押さえた。
「自分の名前すらも、隠しておかなければ、呪われるのですって」



「江戸時代は、どうして長く続いたのでしょうか。わかる人はいますか?」
日本史の授業が始まった。あたしは、歴史の時間が、教科書にそってすすめられると、がっかりしてしまう。今日は、ずっとそのパターンだったので、ノートに、名前を書いていた。それは、誰の名前かというと・・・。
「では、赤城くん、立って。答えてください」
「はいっ!」
勢いよく立ち上がり、個人的空想の世界から断ち切られた。
「すいません、わ、わかりません」
「うん、わからなくてもいいけどね。どこら辺で、君は、日本史につまずいたの?」
クラスの人達が、くっすくす笑っている。ああ、これは何を言っても笑われるパターンだ。そもそも、歴史をつまずくのに、どこら辺なんてあるのだろうか。最初っから覚えることが多すぎて、つまずくのだと思うけれど。
「えーっと、話せば長くなるんですが、話したほうがいいですか?」
歴史の本田先生は、忍耐強い。
「言ってみてください。あんまり長いようなら、先生が、とめますから」
クラスの人達の目が笑っている。やだなぁもう!
「あの~、歴史って、過去のことをいろいろ覚えるわけですけど、あたしたちは、その、未来へ向けて生きていかないといけないわけで・・・」
本当のことを言ってみた。クラスが、沸立った。
「わかるわかる。それから?」
う~ん、先生は、忍耐強いというか、拷問をする人に近くなってきた。
「なので、過去のことをあれこれ読んでもですね。おもしろくないんです。それに、歴史って、地球ができた頃から始まっているわけですよね。だとしたら、その一番最初はどうだったのだろうって思います。日本の歴史といっても、実際、地球の歴史に比べたら、ただ日本人がどうしたこうしたってことに過ぎないって思うんです。それから、ただ覚えるだけっていうのが、どうしても、苦手で、それらを総合して考えたとき、一番苦手な科目が、歴史になっちゃうんです。あ、あと世界史と数学と物理もだめですけど」
「今の赤城くんの説に同感な人、このクラスに何人くらいいる?最後の数学と物理のことは抜きで、ちょっと、手あげてみて」
男女合わせて10人くらいの生徒が、手を上げた。なぁんだ。笑ってたくせに。
「うーん、わかりました。はい!よろしいですよ、赤城さん座ってください」

先生は、声も高らかに、語り始めた。この先生、好きなのよね~語るのが。
「日本の歴史を考えるとね、江戸時代に入る前は、とにかく戦国の世だったろう?国内で、大きな戦争ばっかりしていたんだよ。
下克上ね。みんな知ってると思うけど。強いものだけが、将軍にのし上がっていった時代だからね。今で言えば、総理大臣の座を巡って、都道府県知事が軍隊を率いて戦争をしかけたり、総理を暗殺したり、その座をもぎとるという、そういうことだね。怖いだろう。
ところが、徳川家康は、頭がよかったね。子孫を守ろう、その座を守ろうと思う気持ちが強かった。どうしたかというと、将軍職を、世襲制に変えたのです。
世襲制というのは、自分の身内に代々政権をつがせていくということです。例えば、お豆腐屋の山田君のおじいちゃんが、おとうさんへ店を引き継ぎ、山田君の代まできたら、その未来の息子へも、大事な豆腐屋を継がせていくっていうことだよね。国の政治で、それをやっちゃう。
家康は、自分のせがれのために、そりゃぁもう簡単に早々と、将軍職を譲っちゃった!それから、息子を脅かす豊臣家を滅ぼしちゃった。用意周到というか、執念深いというか、後先のことまで考えてそうした。とにかく凄く頭の切れる人ですよ、家康さんはね。
二代目の秀忠も、頭は悪くなかったと思う。将軍職について、世襲制をついだ後も、まだね、いつまた、違う敵が攻めてくるかわからない。安心できなかったわけね。
それでは質問です。二代目秀忠は、法律を作りました。どんな法律を作ったでしょうか?じゃあ、山田君。あっ、ちょっと待って、先生、水飲んでくるから。その間に考えて」
 先生は、そういうと、ぱっと教室から出て、すぐ戻ってきた。
「ごめんごめん、じゃあ、答えて」
この質問なら、今の時間で、教科書を見られたから、あたしも答えられたのにな。
「えっと、武家諸法度と禁中並びに公家諸法度です」
「ん、よし。でね、それから、幕藩体制をしきました。幕藩体制とは?じゃあ、その後ろの人、早瀬さん、答えて」
早瀬さんは、秀才なので、きっとバッチリ答えるはず。
「政治組織を整備し、人民と土地をしっかりと支配するということです」
「そう、そのとおり!いいね!この辺は、みんなテストに出るから、覚えること!江戸の初めの頃は、よその国から船がたくさんやってきていました。貿易が盛んにおこなわれたんだ。そのことによって、日本には、外国人が大勢押し寄せてきて、キリスト教を説いたり、貿易で得たお金をためて、地方の大名が力をつけてきたりしたので、幕府は、恐れて、ある命令を下しました。
 さあ、じゃあ、今日最後の質問ですよ。その命令とは何だったでしょうか?みんなでいっせいに答えよう。はい!」
先生は、今日は、指揮者みたいな真似もする。
「さ、こ、く、れ、い」
「元気がないな!まあ、もうちょっとだから、頑張れよ!鎖国が完成した時、日本に入ってこられた国はたったの3カ国。オランダ、中国、朝鮮の船だけでした。日本人の海外渡航も取り締まりました。それが、約200年間続きました。そのことにより、国内の整備が進んで、日本独自の文化が深められました。ほら、元禄文化といえば、浄瑠璃、俳句、歌舞伎は、今でも大事な伝統として続いているよね。
つまりね、鎖国をしたことこそが、江戸時代が長く続いた最大の要因だったと言われているわけなんです」
今の話を聞いて、ちょっとわかったような気になったあたしは、おおいにうなずいた。つまり、どこにも行けないということは、そんなに悪いことじゃないし、むしろ文化が育まれたりするってことね。
「歴史というのは、丸暗記って言われますが、人間の生きた時代のことを、とても大雑把にとらえたものなんです。だから、まず大まかに時代を覚えたらね、興味のある時代を調べて欲しいと思う。今は、テレビで、人気の俳優たちが、時代劇に出てくるよね。そういうところから、入ってもいいよ。とくに、時代劇は、ほとんどが江戸時代の設定だからね。当時の人達の暮らしを知るには、いいと思います。
その上で、どうして、武士はみんな江戸へ行かなきゃならないのかとか、どうして商人は、悪どい感じな人が多いのかとかね。どうして武士は刀を持ち歩いているのかとかさ。見所はいっぱいあると思います。なぜなぜ?と考えながら、細かいところを覚えていって欲しいと思います。
時には、理科の時間にルーペを使うようにして、気になった時代を拡大して見て欲しいと思う。ひとつの時代に興味を持つことが、必ず覚えることにつながります。あらゆる時代は、必ず前後の時代と結びついています。みんな、歴史に苦手意識を持たないで大丈夫ですよ。毎日ちょっとづつ、覚えていくつもりでね」

長い長い江戸時代みたいな授業が、鐘の鳴る音で終わった。ふー疲れた。でも、今日の授業は、うなずける気がした。


放課後になると、いつも行く公園があった。幼なじみの松平くんと一緒に帰ることが、最近、増えていた。彼は、頭がいいので、それなりのとこへ進学していて、あたしとは別世界で頑張っているのだ。環境が違っても、お互いの話をするのが楽しかった。一応、同じ高校の友達はいるんだけどね。彼じゃないと、なんとなくわかりあえないニュアンスの話もあるから。
「おかしいなぁ、どうして今日は松平くん、メールくれないのかな?」
さっきから、公園のベンチで、携帯ばかり見つめているあたしの前に、黄色いボールがころがってきた。小さな男の子がそれを追いかけて、距離をおいて立ち止まった。
「はい、どうぞ」
あたしの方から近づいて、ボールを差し出すと、男の子は、あたしの顔をじっと見て、
「ありがとう、お姉ちゃん」
澄んだ声で言うと、両手で受け取った。その子の手にボールは大きかった。あたしは、ボールに書いてあった文字を見た。

みかづき みちる

男の子は、たたっと走って行ってしまった。あの子は、三日月先輩の家の子なのだろうか?
あたしは、再び携帯の画面を見た。メールは来ていない。松平くんのばかぁ!どうして、返信くれないのって、怒りメールしちゃおっかな。でも、だめだ。そんなことしたら、彼は、あたしのことを、いいようにからかうだろう。単純すぎる反応って。でもね、あたしからすれば、松平くんのほうが、じつは単純な気がするな。



2008-10-23 00:10  nice!(1)  コメント(2) 
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cafe ガブリエルの森♪ [お話のかけら(練習中♪)]

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ここは カフェ ガブリエルの森
テーブルの上には 白い紙 白いカップ 銀の羽根ペン 
香るサンダルウッド

窓から 空にかかる虹が見えるとき

木々の梢に残された羽根を拾って ペンをつくり
想いをこめて ラブレターを書けば
空へ飛んで行ったガブリエルが
恋を叶えてくれる

夜になると

ここは BAR ケイロンの弓
傷ついた胸をかかえた者たちが集まる 酒場
カウンターの向こうには 銀の弓

東の丘に 金メダルのような月が昇ったとき
銀の弓を射ることができれば
失った恋が 戻ってくる


2008-08-17 19:32  nice!(0)  コメント(0) 
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ある想い [お話のかけら(練習中♪)]

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あなたは あったかくて
真っ直ぐな人

他の人みたいに
最初は優しかった人も
あたしの態度が 変わらないと
あきらめて 去って行ってしまうのに
急に 態度が冷たくなってしまうのに

あなたは 
優しい態度を隠さない
あたしが 無関心な態度をとっても
忍耐強く長期戦になるのを覚悟で
そばに来て
気遣ってくれた

出会ったころは
大人の男性から遠く感じられたこと
まるで少年のような笑顔をくれたこと
ずっと忘れない

うまくコミュニケーションがとれないとき
もうだめだとあきらめて当然でも
あなたは あきらめなかった
そこまでして わたしなんかに
どうして かかわってくれるのか
心の底で感じても
信じられなかった

わたしは
いつもあなたのほうを見なかった
視線が合うのが怖かった

話しかけられると
話を合わせてくれる彼が
信じられなかった
なんだか調子がいいだけな気がして

毎日必ず話しかけてくれる中で
わたしが元気がない時や
困っている時に
いらぬ心配をしてくれたこと

なんやかやと仕事のことを
おせっかいに教えてくれたこと

ちょっと強気に大人ぶった発言を
してみたこと

あたしは その度に思ってた

それは本気の発言なの?
それともただ 
あたしに 合わせているだけ?

その社交性と明るさは本物?

情熱を秘めていると思ったのは
仕事中の背中を見たとき

まだ未熟なところも
これから成長していくって
感じられた

あなたの行動は
次第に エスカレート
重いものを持ちそうになる状況を
事前に察知して
先回りして運んでくれたり

休憩をむりやり一緒にとろうとしたり

やけに距離が近かったり
遠回りして あたしのそばを通ったり

あたしは ずるい
そんなにいつも わかっているのに
認めようとしなかった
あなたの存在
見つめようともしなかった

だって あなたは まぶしかった
すごく 軽やかで
おしゃべりで 素直で
もったいないくらいに男前で

あたしは すごく 悩んだ
毎日 毎日 心が揺れていた
揺れ続けて 常識に負けてしまっていた

あなたは あたしとは反対に
自分の情熱を抑えることなく
鉄砲玉みたいに まっすぐだった

あたしは どきどきしながら
きわめて普通の態度で接してたけど

あなたが 突然 休んだあの日
気がついた
何にもできないし 連絡もとれない
あたしの存在ってなんだろう
仲良くなるチャンスもふいにして
あの人を 無視して

あたしは あの人をどう思っている?
初めて真剣に自分と向き合った

あたしは 孤独をよりどころにして
なんでもひとりでできるようになりたくて
頑張ってきたけれど
このままで本当にいいの?

あの人と一緒にいると
あたしは 新しい自分を感じてた
それは 他の人の前では 見せたことのない
あたしの感情

あなたは 受け入れてくれる
引き出そうとしてくれる
不満はないか 困っていないか
どうしたのか だいじょうぶか

かたくなだったわたしの気持ちは
ようやく あなたに向かい始めた
あなたがこの世にいてくれて
ほんの近くにいてくれて
わたしは すごく支えられている

あなたがいると どきどきして 楽しい
もっとたくさん 話がしたい
もっといろんな表情が見たい

あなたは いったいどんな人なんだろう

それは 今では
わたしの心が よく知っている

あなたは 情愛こまやかに
わたしを 支えてくれる 唯一の人

言葉では 伝えられない
あなたの気持ちに 触れていたい

































2008-08-15 00:42  nice!(0)  コメント(0) 
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声をかけずにいられない [お話のかけら(練習中♪)]

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君の心は遠い
表情の奥に 何を思っているの
ふとした瞬間 長い時間のはじまり

まるで 旅立つ恋人同士が
電車の窓ガラス一枚隔てているような
そんな遠さに 立ちすくむ僕

だからね
しつこいくらい
声をかけずにいられないんだ
名前を呼べば 君は
夢から目覚めたような瞳で僕を見る

一体どうしたら
繋ぎ止めておけるのだろう 
君の心

どうすれば 伝えられるのだろう
怖いくらい激しい
僕の気持ち

東西南北 どこへ行っても 
君の夢の国には 入れない
それは 入口も出口もない空想の国

早く気がついて

僕の心が 君の心の偽りを 映すよ

僕の心には 君がいる
君の夢の国には 本当は 誰もいない
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2008-08-02 23:37  nice!(0)  コメント(0) 
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不信の城の王子様 [お話のかけら(練習中♪)]

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近づいてはだめ
不信の王子様の住むお城には
塔の上まで 黒い雲が渦巻いている
話しかけないで 彼には
言葉をかわすたびに
心が 真っ黒になってしまうから

心の中の大事なもの
美しいものが失われていくよ
誰にもわからないくらいに 
すこしづつ すこしづつ 煙になって

強い不信の力が
信じる気持ちを
正体のつかめない黒い煙に変えている
誰にも信じてもらえない

不信の城から
彼をとりまくすべてに
悪意が 漂っている

わたしは 近づきたくない
そばによると 悪鬼がとりつくから
わたしのこころにも
なのに
わたしは 近づいてしまう
不信の城に住む彼のこころの
すぐ近くに いつもいる







2008-07-11 23:52  nice!(0)  コメント(0) 
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憧れのギルバート [お話のかけら(練習中♪)]

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「あたしね、ギルバートが、永遠の憧れなの」
「誰それ?」
「赤毛のアンのギルバートよ。アンが、石板で頭を叩いちゃった男の子」
「あぁ、それか、知ってるよ。確か、主人公のアンの赤毛を、からかった男子だろ。
そんな口の悪いやつがいいの?」
「それは、子供のころの話だもん。赤毛のアンはね、その後も話が続いて行くの。
『アンの青春』『アンの愛情』、それから2人が結婚した後の話もあるのよ」
「へー、知らなかった」
「ギルバートはね、すごく素敵な青年になるのよ。そして、アンだけに一途な愛を捧げるの。
『アンの愛情』では、2人の大学時代が描かれているの。
ギルバートは、アンを愛しているのに、アンは、彼との友情を壊したくない一心で、愛を受け入れようとしないのよ。
それから、アンには理想の彼が現れて・・・。
ギルバートは、アンの気持ちのゆくえを気にしながら、友情を大事にしつつ大学生活を送るんだけど、
その間も、ずっと、絶望しながらも、
アンが自分を愛してくれることはないものかと思っているの。
アンとギルバートは、誰が見てもお似合いなのに、
アンが愛に未熟なために、ギルバートのことを友達以上には考えられないの。
そんなある時、ギルバートが、病気になってしまったの。
彼が、もし死んでしまったらと考えたとき、アンは、やっと自分もギルバートを愛していたことに気がつくの。
なんかね、アンとギルバートの心がひとつになった時は、あたしも、感動よ。
嬉しくて。ギルバートみたいな人、どこかにいないかなぁ」
「ふーん。ギルバートみたいなやつ、ごろごろいそう。俺は、全然いいと思わないや。
そんな男のどこがいいのか!
女に好かれようとするとこが、絶対に気持ち悪い。そんなに好きなら、惚れさせてみろって!」
「じゃあ、どうするの?具体的に言ってみて」
「それは、き、企業秘密」
「純愛に憧れる夢見る女の子の気持ちを、少しは理解してよねっ、もう」


2008-07-02 22:51  nice!(1)  コメント(2) 
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「おはよう」のない朝 [お話のかけら(練習中♪)]

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「おはよう」のない朝は、胸が凍えちゃう。
一日のはじまりに、あなたと言葉を交わせない朝は、
あなたが次に、こっちを見てくれるのは?
話ができるのは、いつ?
と仕事が手につかなくなっちゃうよ。

だからといって、こちらから声をかけるには、
殺気が漂っているあなただから、
チャンスがなかなかなかったり、
みんなが見ていたりして、はずかしく、
勇気も、今ひとつ出てこなかったりするんだ。

誰にでも、あいさつできるのに、
あなたとだけは、タイミングが、
ドンピシャと合わなければ、できないのは、
意識しすぎているからなのかな。
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「さようなら」が言えない夜は、
「さようなら」を言える場合と、同じだね。
どうころんでも、胸が痛くなっちゃう。
あなたに会えない長い夜がはじまるならば、
いっそ、顔を見ないでお別れした方が、いい気がする。

あなたの顔を、去り際に見ると、
さびしい気持ちが、ブレンドされちゃうから。
純粋笑顔を作れなくなっちゃう。
敏感体質、ばか正直が、顔にでちゃうんだ。

クールに「ばいばい」できるわたしよ、
一体、どこへ行っちゃったかな。
気持ちのアップダウンを、
少しは、変化として楽しめるようになりたいな。

そんな毎日を送っていますが、
仕事抜きのあなたに、早く会えますように。


2008-06-29 01:17  nice!(0)  コメント(0) 
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瞳のマジック [お話のかけら(練習中♪)]

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あなたの瞳が 悪戯な少年みたいに
ささやくから

普段みんなに見せることのない
魔術師の少年のような
その瞳の

ささやきの意味を知りたくて
わたしは 追いかけてしまうの

振り向くあなた 
見つめあう視線
照れて染まった頬

あなたが
一瞬 目をそらして 見つめ返す
その瞬間から 
マジックがはじまる


2008-06-28 01:09  nice!(1)  コメント(2) 
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『癒し文字』 [お話のかけら(練習中♪)]

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「 うわぁ読めない!この字なんて読むの?」

ぼくの字を見ると、誰もが仰天するのは、いつものこと。
字が下手なんだから、仕方がない。言われ続けて云十年。
なんと言われようと、慣れっこになっている。
面と向かって下手だなんて、失礼なことをいう人は、あんまりいないけど。
依然、言い続けるのは、ぼくの妹くらいなものだ。

「 にいちゃんの字、見せて 」

まただ。
ぼくのノートを見せろという。

「 やだ 」

お断りだ。
それでも妹は、しつこい。
とうとう、ノートはあきらめて、ぼくの参考書をめくりだした。

「 あった!にいちゃんの書き込みを発見!あ~ん読めちゃったぁ~」

・・・読めちゃっただって?
おちょくられているようにしか聞こえない。

「 うわぁ!これはっ!?すごいやっ!にいちゃん!絶対、誰にも書けないよ。
  独自の感覚を、作り出しているねぇ。
  この3行文なんて、アラビア文字かモンゴル文字で書いたみたい 」

妹は、携帯のカメラで、ぼくの文字を撮影して、うなずいている。

「 にいちゃんの文字は、ずっと見ていてもあきない。
 『 癒し文字 』だねぇ。今度、あかさたなはまやらわを、全部教えてね。研究するから 」

ぼくの下手な字を・・・『 癒し文字 』だなんて。
妹は、まったく変なやつだ。


2008-06-24 23:43  nice!(2)  コメント(4) 
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心に素直に限りなく純粋に [お話のかけら(練習中♪)]

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ふたりは、気遣い屋さん。
相手のことを、まずは、優先するタイプ。
そんなふたりが、出会いました。

相手を喜ばせようとして、
お互いに、気を遣い合って話しているのがわかったので、
あなたは、なんだか違うな~って思えて仕方なかったのでした。
相手に、そんなに、気を遣わせたくないな~って思うのでした。

話せば話すほど、相手が遠くなっていくような気がしていました。
そんなとき、何度も偶然が重なって、
あの人と二人で話す機会がありました。

徐々に、仲良くなっていくにつれて、あなたは、あの人の本音を知りました。
それは、一見してスマートに見える彼の、激しい性格でした。
情熱的で、大胆不敵。
あなたには、ないものを内面に持っている彼に、あなたは惹かれました。

あなたは、受容性に満ちていて、人の目を気にしますが、
彼は、積極的で、自己本位です。
あなたは、無計画で、夢見がち。
あの人は、計画的。
あなたは、すぐにあきらめますが、
あの人は、辛抱強く一途に追い求めます。

あなたとあの人が関わると、プラスとマイナスが惹かれあうように
磁力が生じます。
それは、想像もできないくらいの、一心同体といった感じで、
他の人では、満たされない感じなのです。

そして、誰も信じられず、城壁を築いていたあなたの心に、
まるで、そんなものないかのようにして、いつも寄り添い、
心を開くのを辛抱強く待ってくれているあの人は、誰よりも深く、
あなたを、愛しているのでしょう。

心に素直に、限りなく純粋に。
あなたも、あの人の一途さに応えてあげてください。
あなたの愛は、あの人を元気にしますよ。


2008-06-18 22:29  nice!(1)  コメント(0) 
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素直がいちばん [お話のかけら(練習中♪)]

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わたしの周りには 幾重にも防御壁がはりめぐらしてあり
知らない人や怖い人は 入ってこれない
心は壁そのもの
1枚には 扉がついていて
その扉の鍵を持っているのは わたしだけだ

ごくたまに 
奇跡的に 扉を開けて入ってくる人がいる
その人の持っている心が わたしとぴったりと合うときだ
わたしは 永いこと 
心を許せる友達を 待っていた

素直になれなかった午後の 思い出が
扉の奥に夕日みたいに 差し込む

もう 思い出せないほどの時間
大切にしてきた友情

そんな毎日のなかで 
わたしは 心の扉の鍵を なくしてしまった
心の扉は 気が合わない人には 開かずの扉になった
気にする人など
誰もいなくなり わたしは
高台から 周囲を眺めた

遠くから
まっすぐに歩いて来た人がいて
防御壁の前に立って 表札を確認していた
知らない人だった

わたしは その人をよく見た
いい人そうだけど怖かった 壁があってよかったと思った

それから その人を再び見たとき
どくん どくんと 胸騒ぎがとまらなくて
胸が張り裂けそうになった
気がつけば 防御壁が1枚なくなっていた

わたしの心の壁は こんなにもろいものだったかと
驚いて間もなく 2枚目の壁も 消えてしまった

恐ろしい気持ちと 不思議な心地好さが
両方で わたしは 怖くてたまらないのか
嬉しくてしょうがないのか
どちらなのか わからないまま どうしようかと悩んだ

その人は 最奥の扉の前で 心の鍵を差し込んだ
だが 扉は開かなかった 

1枚の扉が 2人を隔てる永遠の扉だった
最後の壁だった
そんなものは もういらなかった

それなのに 素直になれないわたしの心は
壁をつくろうとしてしまうのだった
誤解の壁が 立ちはだかった

その人は 言った


一緒に風になろう 
手をつないで 空を飛ぼう


わたしは 
その人と手をつなぐために 
壁を飛び越えた

つないだ手は 温かくしっかりとしていた
わたしの心は 抱きしめられた

青い空に向かって
2人は 飛び立った




2008-06-02 00:46  nice!(1)  コメント(0) 
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光に [お話のかけら(練習中♪)]

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「みんなのほんとうの幸のために生きたい」

銀河鉄道の夜のジョバンニ少年の心に共感して、
あの時、確かにそう思った。
あれは、この先のあたしの人生設計のなかでの、ささやかな決心だった。
みんなの幸せを祈ると、現状はさておき、心は別世界へ入っていける気がした。
[夜]
夜更けに、窓辺に立つと、いろんな光が見える。
光は、ただ光っているだけなのに、さびしさを紛らわせてくれる。
暗い夜空の輝く一条の光に、あたしも、なってしまいたい。

すべてをそっと包んでしまうような愛の光になりたい。
わかんないや。
環境とか、いろんなことを理由にして、まとまらない想いが、流れ出してとまらないの。
鬱々として、ひきこもる気持ちも、まだ残っている。
我欲のために生き始めたら最後、すべてが崩壊していくような気がする。

だけど、祈りは、こころさえあれば、できるから。
あらゆるものの幸せを祈って、残りの人生、生きていきたい。
[ハートたち(複数ハート)]



2008-05-29 03:55  nice!(0)  コメント(0) 
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やわらかいソファーのような [お話のかけら(練習中♪)]

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もともと、君、依存心が強いんだろうな。
だから、余計に、人に頼らないで生きていけるようにならなきゃと思うんだろ。
助けてもらいたいところを、ぐっと抑えてる。
そういう生き方が、今の君をつくった。
自分を、支えに生きていて、
精神的支柱が、自分にある状態。
悲しくても、辛くても、弱みを人に見せない。

そもそもさ、君が思う「依存」ってなんだよ?
好きな人に、想いを寄せることも、依存になるの?
強い思いは、強い依存になっちゃうってこと?
わかる気もすっけどね。

すぐそばに、君を、守りたがっている人がいるよ。
えっ?信じないの?
このままじゃ、よくないな。

君さ、心がもろいって自覚があるのなら、支えを増やせばいいんだよ。
君の堅固な支柱の他に、やわらかいソファーのような支えをね。
その感覚、どうよ?

依存心を克服した後に、保護してくれようとする人が現れるって、
人生って、おもしろくできてるよな、ほんと。


2008-05-19 23:59  nice!(1)  コメント(0) 
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運命の舟 [お話のかけら(練習中♪)]

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春まだ浅い日、僕の舟は帆を張り、大海をさまよっていた。
陸を出てから、幾度も夜を数えたが、南海諸島は、まだ、影も形も見えてこない。
水平線にまるく切り取られた水の上を、
風の向くまま、流されるにまかせていた。

内陸の生活は、僕のこころを乾燥させた。
生活のために生きることが、無意味に思えて、
冒険をしたいと思った。
ひきとめる奥さんを残して、僕は、南海の幻の水の都を探す旅に出た。
伝説によれば、南海の風に流されるままに、進めば、1000にひとつの確率で、
たどりつけるという。
生きるか、死ぬか、一か八かの賭けに出たのだ。

その時、不意に雷鳴がひびき、豪雨になった。
海面を、おびただしい水の雫が打ち、
僕の小さな船は、あっという間に浸水した。
僕は、海へ肩までつかった。
空を仰ぐと、再び、雷鳴がし、稲妻が、僕の身体をつらぬいた。

稲妻は、光のエネルギーで僕を包んだ。
その時、髪がゆるやかに長い美しい女の幻影を見た。
女の幻影は、想いを宿した視線を残し、消えていった。
鮮烈な残像を、僕のこころに残して。

しばし呆然としていた眼の先に、
ぼんやりと島が見えて、僕は、はっとなった。
島が見えた。
僕は、浜辺まで、泳いだ。
白い砂浜が、ずっと広がっているだけの、なにもない島だった。
浜辺から、島の真ん中へ歩いて行くと、そこに、小舟があった。
その中に、誰かが寝ていた。

僕の胸を、衝撃が走った。
この人を、僕は、あの稲妻に打たれた時に見ていた。
彼女の髪は、ゆるやかに波打って腰まであり、
粗末な服を着ていても、美しさは隠せなかった。
見つめるのが罪なくらいだった。

僕のこころは、高鳴った。
この人は、きっと、僕を知っている。
僕も、彼女を知っている。
時も場所も超えて、僕らは、運命により出会ったのだ。

もし、彼女が今、ここで目覚めて、僕を見つめたなら・・・。
あの稲妻のような、衝撃が走るだろうか。
あの想いを宿したまなざしにとらわれたなら、僕は、一歩も後に引けなくなるだろう。
このまま、立ち去るべきか、それとも・・・。

だけど、僕のこころは、彼女の瞳を確かめたかった。
ここで、待とう。
南海の孤島で、ひとり横たわっている彼女が、
目覚めるまで。

僕は、波の音を聴き、悠久を思った。



2008-04-26 00:33  nice!(0)  コメント(0) 
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花になるとき [お話のかけら(練習中♪)]

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やっと ここまで たどりついたのね
ここで
チューリップの花にキスをすれば
お花になれるんだわ

ありがとう
あなたのこと 忘れない
こんなに 助けてくれたこと

ずっとずっと 忘れないから
あなたも 忘れないでね

さあ 連れて行って
あの 大きなチューリップのもとへ

ほんとうに これでお別れだわ
帰り道は 気をつけて 帰ってね

ねえ
どうして 目を見てくれないの
ほんとにこれで さよならなのに

寂しいわ あなたがそんなだと
あたしは 胸が痛くなってしまう
ねえ 笑って お願い

ありがとう
よかった 最後に あなたの笑顔が
見れて

じゃあ そこで 見ていてくれる
あたしのこと 

ずっとずっと 見ていてね






2008-04-20 22:17  nice!(0)  コメント(0) 
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君よ花にならないで [お話のかけら(練習中♪)]

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僕の使命は、彼女の夢を援助すること。
なのに、心の中は、違うことを考えている。
僕の彼女への、たったひとつの望みは、
話すことができないんだ。
彼女は、ここで永遠に咲く花になるという。
そのために、長い旅をしてきたのだから。
彼女の幸せのためなら、どんなことでもする。
彼女が花になってしまったら、
僕の想いは、永遠に叶わなくなる。
僕は、耐えられるだろうか。
楽園に咲く無数の花の魂よ、君たちは、
本当に幸せなのか?
僕の問いかけに、花たちは、ゆれていた。
                    9117986.gif9117986.gif                   


2008-04-16 10:56  nice!(1)  コメント(3) 
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孤独の余韻 [お話のかけら(練習中♪)]

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あなたは どうして 優しいのですか
それを 聞いてはいけないような
感じやすいこころ

わたしが動揺していることが
どうして そんなにわかるのですか
なんにも 話していないのに

相談することも忘れていた
ひとりの時間が 長すぎて
なんでもひとりで 解決してきたから

寂しさなんて 当たり前だった
でも 本当は そうじゃなくって
弱い自分を 守るために必死だった

優しいあなたの気持ちもわからない 
冷たい女だなぁって ほんとうに
すごく 思っている今日この頃です






2008-04-16 01:07  nice!(1)  コメント(2) 
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花になりたい [お話のかけら(練習中♪)]

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窓の内側から見える景色は、いつもと変わらない。
わたしは、いつもここにいるの。
窓辺の椅子に腰掛けて、お庭の様子を眺めているときが、いちばん幸せ。
鳥さんが遊びにきたり、虫さんが飛び回ったり、たまには、ねこさんもくる。
みんな、うちのお庭が大好きね。
わたしも、お庭が大好きよ。
大きな桜の木のそばで、お花たちが、嬉しそうに咲いているでしょ、わたしも、嬉しくなっちゃうの。
太陽に向かって、嬉しそうに咲いているのを見るのが、好き。
わたしとは、全然違うもの。
一日じゅうをこうして家の中で過ごしているわたしは、どうしたら希望を持てるのかしら。

それでずっと考えているの。
わたしも、お花になれたらいいのになって。
そう思って考えているときには、必ず幸福感でいっぱいになれるんだわ。
クローバーに囲まれて、そっと咲いている、シロツメクサの花?
すっとのびている黄色いスイセン?
ピンク色のチューリップを見ているときは、もっと幸せかしら。
この家のお庭で、わたしは、いつかお花になるわ。
それには、どうしたらいいのかしら。
どうしたら・・・?

ああ、おばあさんは、どうして帰ってこないのかしら?
ひとりで家の中にいるようになってから、生活が変わってしまったのよ。
おばあさんがいた頃は、わたしを外へ連れ出してくれたのに。
もっと、近くでお花を眺められたのに。
この冬、おばあさんは、わたしを置いていなくなってしまったの。
春になったら戻ってくるって、そう思っていたのに・・・。
でも、わたし、悲しくなんかないわ。
おばあさんがいなくったって、ひとりで、生きてこれた。
頑張ってこれたんだから。
でも、ちょっともう、限界かな。
食料もなくなってきたし。
はやく、はやく、お花になる方法をみつけなきゃ。


2008-04-15 20:55  nice!(0)  コメント(0) 
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お話のかけら 桜追想 [お話のかけら(練習中♪)]

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桜の並木道は、川沿いを夢のように薄桜色に染めていた。
このまま、この道を、果てしなく歩いていけたら・・・。
道の終わりに何があるかなんて知りたくない。
わたしも、誰かさんと一緒に歩いていきたかった。
でも、その夢はかなわなかった。
認めたくなかった。
かなわない夢を見るには、別々の学校を選んじゃだめだったの。
でもね、こころの奥の奥ではわかっていた。
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わたしの恋は、この桜の花のように、はかなく散ってしまうこと。
満開の桜の花びらたち、わたしの気持ちを、覚えていてね。
忘れないでね。
                             onpu07.gif9117986.gif





2008-04-08 22:51  nice!(0)  コメント(0) 
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短篇小説 W   別天地へ行け

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