SSブログ
myoko.jpg  ←~生命地域~妙高高原♪
前の3件 | -

交差点でエンジンストップ!その時私は… [ちょいと休憩♪]

先日、車に乗っていた時のことです。

私は、国道片側二車線通行の道路で、追い越し車線を走っていました
赤信号で停止した時、急に、エンジンが切れました
エンスト?? と思い、エンジンをかけ直そうとしましたが、
エンジンはかからず、その場から動けなくなってしまいました

「うそでしょ!? こんなとこで!?」
状況が呑み込めず、信じられず。
明らかに、迷惑になっているため、後ろの車には、窓から手を振って、合図して追い抜いてもらうしかなく。
幸い、二車線プラス右折車線があったので、後ろに停まってた車は、次々と私を追い越していきました。

でも、いつまでも、追い越し車線で、停車しているのは、あまりにも危険です。
冷静にならなくちゃと思っても、心臓がバクバクしてきて、手も震え、
どこへ電話したらよいか、わからなくなりました。
JAFの電話番号が、どこかにあったような?
それより、こんなところにずっと停まっていたら、後ろから追突されて、事故になるよね。
どうしよう???
焦った私は、スマホに登録してある、いつもお世話になっている自動車整備工場に電話しました。
それから、ロードサービスにかけるよう言われ、
ロードサービスにかけたら、まずは、交通の妨げになっているようであれば、警察に電話するよう言われ、
人生で初めて、警察へ110番しました。


私「今、交差点で、ちょっと動けなくなって、エンジンがきれて、ありえないところに停まっているので、どうしたらいいでしょうか」
警察「どこの交差点ですか? 住所は言えますか?」
私「××市の●●交差点です」
警察「〇分位で行きます。車を降りて、安全な場所で待っていてください」
私「はい」

でも、私は、車から降りるほうが、危険な気がして、ドキドキきょろきょろしながら、車の中にいました。

すると、軽トラの運転手さんが、右折車線に停まり、窓をおろして、私に声をかけてくださいました。

軽トラの運転手さん「大丈夫ですか?」
私「エンジントラブルで動けなくなっています。もうすぐ警察が来てくれることになっています」
軽トラの運転手さん「私が後ろから押しますよ」
私「えっ、本当ですか?」
軽トラの運転手さん「ギアをニュートラルにできますか」

私は、エンジンキーをカチッとまわし、ギアをNにしました。

私「できました! すいません、お願いします」
軽トラの運転手さん「そのまま、ハンドルを左に切れますか」
私「はい」
軽トラの運転手さん「行くよ、それっ」

軽トラの運転手さんは、自分の車を降りて、私の車を、道路際まで手で押してくださいました

「ありがとうございました。あの、お礼をしたいので、お名前と連絡先を……」
「いいですいいです」

お礼の言葉もそこそこに、運転手さんは、そのまま急いで走って、車に乗って行ってしまいました。
ご自身だって危ないのに、それを承知で、交差点で車を停めたまま、危険を顧みずに車道に出て、助けてくださったのです。
見ず知らずの私に、本当に親切にしてくださった運転手さんのことは、忘れてはならないと思いました。
頭を下げるしかできず、申し訳なかったですが、
本当に助かりました!!!
その後、パトカーが来て、警官のお二人が、私の車を、さらに安全な場所へ、手で押して移動してくださいました。
警察には、怖いイメージを抱いていたのですが、笑顔を見せてくれましたし、とても親切で、優しいご対応でした。
そして、車の保険会社が提携しているロードサービスが、偶然、いつもお世話になっている整備工場だったため、車のレッカーから、エンジン点検、代車の手配、修理まで、そちらでやってもらうことができました。
その結果、エアコンの部品が外れて、エンジンをロックしていたことが判明しまして、修理してもらうことになり、9万円程かかりました($・・) イタイ出費。。。

本当のことを言うと、前の日から、エンジンをかけた時に、うっすら異音がしていたんです。
でもまあ、そんなこともあるかな? くらいに、軽く考えてしまっていたのが、いけなかったですね。
認識が甘かったと反省しました。

予兆に敏感になるのは、時には心配し過ぎかとも云われますが、
命を預けている自家用車の整備は、やっぱりとても大切です。
今後も、すこしでも、異変を感じたら、見てもらおうと感じました。

皆様も、ちょっとした異変を感じたら、自分の感覚を信じて、トラブルになる前に対策しておくことをおすすめします。

今回のことで思ったのは、

1.ロードサービスのついている車の保険に入っておく(私の場合は、全労災マイカー共済ロードサービスで、100㎞まで無料でした)
2.スマホに、ロードサービスや、自動車整備工場の電話番号を、登録しておく(すぐかけられるように)
3.なるべく近所で、信頼できる自動車整備工場を探しておく(ロードサービスにかけた時に、どこの車屋さんに、車両を運ぶか聞かれますので、そのための対策です)

それでは、今日は、このへんで。
またね
_67a5f871-23f8-4c95-a759-e41917552232.jpg


2024-02-26 17:07  nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法 山口揚平 著 [読書記録♪]

9571178.gif
新聞代の値上げに伴いまして、
代替になるWEB媒体を探していた時のことです。

PRESIDENTオンラインで、気になる記事を見つけました。

「頭のいい人がまったく新聞を読まないワケ」

それは、山口揚平さんの著書「1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法」の一部だったんです。

頭のいい人ってそうなのかと驚き、その先に興味深い内容が続いていたので、図書館で探して、読みました。


1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法

1日3時間だけ働いておだやかに暮らすための思考法

  • 作者: 山口 揚平
  • 出版社/メーカー: プレジデント社
  • 発売日: 2019/03/01
  • メディア: Kindle版



題名に、「おだやかに~」とありますが、この本は、徹底して「考えること」の凄みを書いている本でした。
さすが、事業家であり、思想家さんのご本です。

第1章から第3章まであるなかで、全ての内容が刺激的でした。

私なんかが、この本の凄さを語るには、全く言葉が足りませんし、うまく言えませんが、
パラダイムシフトについての濃い内容が、時に太字を使って、わかりやすく書かれている本だと思いましたし、考えることが人間の強みなのだと、うなずける内容でした。

なかでも、はっとしたのが、第3章にあった「文脈の毀損の問題」です。
引用させていただくと、

1杯のコーヒーに込められた生産者の想いや入手経緯などのストーリーは、 「一杯500円です」と言い換えた瞬間、瞬く間に漂白される

現代人は、金額に見合った価値があるかどうかで、判断することに慣れているのかもしれません。
当たり前すぎて、考えもしなかったことを、気づかせてもらいました。
どんなものにも、物語があり、どのような背景があるのかを知りたいと思う気持ちを、大切にしたいと思いました。

山口揚平さんのように、賢い人がいることがわかり、
人間の強みを知るきっかけができました。

どちらかというと、人間よりも、動植物に惹かれる私ですが、
人間も、自然界の一部なんですよね。
ちょっと、話しがずれますが、前に炭鉱跡を見に行った時に、「人間って、こんな巨大な洞窟を掘れるの???」 と、かなりびっくりした記憶があります。

人間って、私が思っているより、凄い生物なのかもしれません。
せっかく、人間に生まれてきたので、山口さんがおっしゃるように、考える力をもっとフル稼働させて生きてみたくなりました。
新聞を止めるかどうか悩んでいて、面白い本に出合えて、良かったです。


2024-02-22 01:15  nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

満月の夜の冒険(むしの描写あり※苦手な方はご注意ください) [中編童話 満月の夜の冒険]

_ca1c3278-6015-44fb-be9c-4a1e452c7f8f.jpg
一 リビングルーム

 「明日から、家族がふえるんだよ。」
 それを聞いた、ねこのみりは、かいぬしのすずかちゃんのひざの上に前足をのせ、しっぽをピンとたてて、「にゃあ」とへんじをしました。
「みり、いいこちゃん。」
すずかちゃんは、みりのせなかをなでました。すると、みりは、またへんじをしました。
「にゃあ。」
 それを見ていたお母さんが、キッチンから声をかけてきました。
「それで、みりは、なんて言ったの?」
「にゃあ、って。」
「にゃあは、にゃあでも、どんなにゃあ?」
「え、それ、どういういみ?」
すずかちゃんは、笑いました。
「だって、ほら、今、みりに、大事なおはなしをしてたみたいだから。みりにつたわったのかなって思ったのよ。」
「みりに?」
「そうよ。みり、こっちにおいで。おやつあげるわ。」
すると、みりは、さっと身をひるがえして、お母さんの足元にかけよると、おやつをもらったのでした。
「みんなで、おやつにしましょう。なににする? お母さんはねえ、おからのクッキーに、ゴーヤとバナナのジュース。すずかちゃんは?」
「わたしも!」
「すずしくなってきたし、お庭にもっていって食べようか。」
「うん。」
それから、お母さんとすずかちゃんとみりは、お庭のテーブルのところで、楽しくすごしました。
 その晩、お父さんが、仕事でおそくなるとのことだったので、すずかちゃんは、お母さんと二人で、夕食をすませた後、リビングルームで、テレビを見ながら、お父さんの帰りを待っていました。するととつぜん、ねこのみりが、さっと立ち上がり、カーテンの下のすき間に入り、身をかがめたのです。見ると、しっぽの毛が逆立ってふとくなっています。
「みり、どうしたの?」
話しかけても、みりは、身を固くしたまま、なにも言いません。窓の外のほうに、目を見はらせているところを見れば、なにかにおどろいたようなのですが、いったい、なににおどろいたのでしょう。お母さんが、立ち上がって、窓のそばへ行き、カーテンをめくりました。
東の空から満月がのぼっていたおかげで、庭ぜんたいが青白く光って見えました。母屋の前には庭があり、テーブルとイス、その向こうに、木でできた小屋がありました。小さな畑もあります。お母さんは、この家を買う時に、庭で、花や野菜を育てるのが夢だったのです。ねこのみりも、小屋へ入って遊んでいることがありましたが、ねこというのは、せまいところが好きなものです。
「なんかいる? やあだ。」
すずかちゃんは、みりのふとくなったしっぽに、そっと手をやると、みりは、しっぽを左右に大きく動かしました。そして、そのままきびすをかえして、二階への階段をかけあがって行きました。
お母さんが、カーテンを閉めて、ソファに座りました。
「ねこってふしぎよね。もしかすると、わたしたちには見えない、ふしぎなものが、見えたのかしら。」
お母さんが、まじめな顔で言ったので、すずかちゃんは、なんだか気になって、あたりを見まわしたのです。
その時、急に、リビングルームの戸がすーっと開いたので、緊張が走りました。
「ハ、ハ、ハックショーーーン!」
「うわっ、びっくりした! お父さんか。ああ、もう。」
「ただいま。わるいわるい。おどろかせたかな。」
お父さんのクシャミは、家中どこにいても聞こえるくらい、迫力があります。お母さんは慣れっこですが、すずかちゃんも、みりも、いつもおどろかされてしまうのでした。
その後、お父さんが、お風呂に入り、お母さんが、キッチンへ行ったタイミングで、すずかちゃんは、二階の自分の部屋へ行くことにしました。


二 庭 
すずかちゃん家の玄関の明かりが灯ったころ、庭のちいさな穴から顔を出したものがいました。それは、のねずみの子どもたちでした。子ねずみたちは、親ねずみのかえりを待っていました。穴ぐらから出ないようにと言われていましたが、つい心配で、顔を出してしまったのです。
「あ、おかあさんが、かえってきた!」
「ただいま。」
母ねずみは、めずらしいものを持ってきていました。それは、クッキーのかけらでした。
「おいしそう。おとうさんは?」
「もうじきくるわ。」
遠くのほうから、ひとまわり大きな父ねずみが、小走りでやってきました。
「お父さん、どこに行ってたの?」
「下見をしてきた。なかなかのはっけんだったぞ。」
「あなた、むちゃなことをしてはだめよ。おやしきのなかには、なにか、わながあるにちがいないのだから。」
「うむ。」
子ねずみたちは、顔を見あわせました。
「ぼくたちも、おとうさんみたいに、ぼうけんがしたい!」
子ねずみたちの目は、夜の星のように、きらきらとかがやいていました。いっぽうで、おとうさんの目の色は、やみをうつし出したように、暗かったのです。
「子どもたち。けっして、おとうさんについてきてはいけないよ。いいかね?」
父ねずみは、それだけ言って、ねどこに入っていきました。
子ねずみたちは、母ねずみからもらったクッキーのかけらを、大事そうに手で持って食べてから、父の後をおいかけて、ねどこに入って行ったのでした。


三 すずかちゃんの部屋
 その夜、時刻は、十時。すずかちゃんは、机に向かって、タブレットを開き、なにやらけんさくしていました。
「ねこのことば。」
パソコンのがめんには、ねこのことばだけでなく、きもちや、しぐさについても、たくさん書いてありました。
(ねこって、なくだけじゃなくて、しっぽでも、きもちをつたえてくるんだ。すこしのちがいで、意味がちがうのね。ごはんがほしかったり、あまえたり、ほうっておいてほしかったり。明日から、ちゅういぶかく見てみよう。)
その後、みりが部屋の前へ来て、すずかちゃんによびかけたのですが、ドアは開きませんでした。すずかちゃんは、ねむってしまったのです。みりは、ドアの前にすわり、しばらく待っていましたが、お父さんとお母さんが、階段を上がってきたのを見て、そちらに向かいました。
「みり、今日は、いっしょにねようか?」
みりは、お母さんに、頭をなでられましたが、まだ眠くなかったので、お父さんとお母さんの寝室には、入りませんでした。そのまま、階段を下りて、リビングルームへ行くと、すでに、明かりは消えていました。


四 みりのパトロール
 昼間はほとんど寝てすごしているみりですが、じつは、夜になると、元気いっぱい活動します。なぜかといえば、ねこの目は、暗くてもよく見えるので、明かりが消えていても歩いたり走ったりできるからです。みりは、水飲み場で、水を飲み、その後、顔を洗いました。そして、のびをしてから、玄関のほうへ歩いて行きました。
 では、どうして、みりが、わざわざパトロールをするのかといえば、まだまだ遊んでいたいから。夜遊びには、なににも代えがたいみりょくがあるのです。だから、ごくたまに、お父さんが、夜おそくまで起きて、リビングルームにいる時は、本当にうれしくて。いつまでもはしゃいでしまいます。うっかり、つめをたてて、お父さんにおこられることもあるくらい。でも、今日は、三人とも、はやめに二階へひきあげていったので、みりは、パトロールという名の、ひとりあそびをするのでした。
 みりがいちばん気にしているのは、おもちゃがころがったままになっていないかということです。ちいさいボールや、ペットボトルのキャップ、お父さんのくつしたなどは、よくみかけます。たいていは、おかあさんが、ひろってかたづけるのですが、忙しい日には、そのままになっていることがあるのです。
 みりは、キッチンの床、食卓の下、ろうか、おふろばの脱衣所などを歩きまわりましたが、あそべるものは、落ちていませんでした。玄関のくつをころがして、かみついて、足でけってみたけれど、どうも気がのりません。そこで、みりは、ろうかをダッシュして、スリッパにとつげきする遊びを思い出して、かなりの間、あそんでいたのですが、ようやく、ねることに決めました。
 お父さんとお母さんの部屋のドアは、みりが入って来られるように、開いていました。みりは、ドアのすき間をすりぬけて、お母さんのベッドの足元まで行き、まるくなりました。ところが、奇妙な音が聞こえてきたのです。
音は、クローゼットのあるかべの上、天井裏のほうから、聞こえてきます。みりは、気になって、ねむるどころではなくなり、ベッドをおりて、クローゼットのとびらの前にすわりました。とびらから服がはみ出ているところに顔を近づけて、前足をひっかけたら、とびらが、外側に開きました。みりは、頭と前足を上手に使って、クローゼットの中へと入って行ったのでした。


五 屋根裏部屋
 満月が、南の空にのぼった頃、ちいさな黒いかげが、動きはじめました。それは、父ねずみでした。父ねずみは、すずかちゃんの家の外壁をのぼり、屋根裏部屋の窓のあたりで息をひそめていました。窓が、すこし開いていたのです。父ねずみは、それを、見逃がしませんでした。屋根裏部屋は、めったに人間が来ない場所ですが、万が一、人間に見つかったら、わなをしかけられ、二度と活動できなくなります。父ねずみが幼かったころ、両親がわなにかかり、かなしいお別れをしました。だからこそ、父ねずみは、子どもたちを同じ目に合わせるわけにいきませんでした。父ねずみは、屋根裏部屋の内部に入って行きました。
(せめて、雪のふるあいだだけでも、家族全員、家の中に入れてもらえたら、ありがたいのだが。)
月明かりに照らされて、父ねずみのかげが、長くのびています。父ねずみは、いよいよ屋根裏部屋を探険するつもりでした。
 屋根裏部屋は、人間が立って歩けるくらいの高さがあり、ひろびろとしていました。父ねずみが入ってきたのは、南側のちいさな窓でした。レバーをひねって上へ押し上げると、開くしくみでした。こちらの窓がうまくしまっていなかったため、父ねずみが入って来られたのです。
かべにはつくりつけの棚があり、下段には防災グッズ、中段には、お父さんの文庫本や、すずかちゃんの絵本、上段には、飛行機の模型やボードゲームなどが、置いてありました。
 父ねずみは、ふと窓のほうをふりかえりました。そこで、黒いかげが見えかくれしているのに気づいたのです。ひとつ、ふたつ、みっつ。なんと、その黒いかげは、子ねずみたちでした。
「これはおどろいた! ついてきてはだめだと言ったのに!」
「だって、おとうさんが、どこに行くか、気になったんだもの。」
それにしたって、こんなところまで来てしまうなんて。父ねずみは、三匹の子どもたちに言い聞かせました。
「ここから先に、入ってはいけないよ。かくれていなさい。」
子ねずみたちは、首をかしげ、うなずいたのかそうでないのか、あいまいなしぐさを見せました。父ねずみは、たしかな足取りで、部屋のすみずみまでチェックしてまわり、窓の下へもどりました。
 ところが、子どもたちの姿がありません。父ねずみが、たいへんあわてていますと、子ねずみたちの声がしました。
「おとうさん、こっち、こっち。」
見ると、三匹の子どもたちは、つくりつけの棚の上から、父ねずみを見おろしていました。
「ふう、まったく。おまえたちときたら。どうして、言うことをきかないのだ?」
「ちゃんとかくれていたよ。」
「おとうさんが、きけんなめに合わないか、見ていたよ。」
「ぼくたち、高いところにのぼれるくらいに、おおきくなったんだよ。」
父ねずみは、いつのまに子どもたちは、こんな口をきくようになったのだろうと思いました。
「まだちいさいくせに、言うことだけは、りっぱになったものだ。」
「それにね、いいものを見つけたよ。」
一匹の子ねずみが、父ねずみの前に、ピーナッツをひとつ置きました。
「おいしそうでしょう?」
「これは、ピーナッツだが、むやみに食べてはいけない。どくが入っているかもしれないのだから。」
「ほんとうに?」
子ねずみは、うたがわしそうに、ピーナッツのにおいをかぎました。
「人間がわざと置いて行ったの?」
「そうかもしれない。おいしそうにみえるものほど、あぶないのだ。」
 その時、近くの床板が持ち上がり、静電気で、パチッと光ったのです。そうかと思うと、すごいはやさで、大きなけものが、父ねずみにおそいかかってきました。
「窓の外へ逃げなさい!」
父ねずみは、子ねずみたちとは、反対の方向へ逃げました。けものが、父ねずみを追いかけます。子ねずみたちは、恐怖のあまり、棚の上で、ぶるぶるふるえてしまいました。
「おとうさあーーん。」
父ねずみは、子ねずみたちが、窓の外へ逃げるよういのっていました。そのために、必死に、けものの注意をひいて走りまわっていたのでしたが、とうとう、部屋のすみに追いつめられてしまったのです。
「はやく、逃げなさい!」
(わたしは、つかまってもいい。子どもたちが、無事ならば。)
父ねずみが、かくごを決めたその時、棚の上から、模型飛行機が落ちて、物音を立てました。子ねずみたちが、力を合わせて下へ落としたのです。けものは、びっくりして、一瞬、身を低くし、動きを止めました。
「おとうさん、今のうちだよ!」
そうして、そのスキをついて、のねずみの親子は、窓から外に脱出することに成功したのでした。
「お父さん、ごめんなさい。」
父ねずみは、三匹の子ねずみを、ひしと抱きしめました。
「これ、持って来ちゃった。」
見ると、一匹の子ねずみが、ピーナッツを持っていました。
「ピーナッツは、置いて行きなさい。」
そして、のねずみの親子は、おやしきを去って行ったのでした。
 けものは、さんざん遊んでつかれたのでしょう。防災グッズのそばにあった毛布の上にまるくなり、そのまま眠ってしまいました。


六 暗がり
 ほんとうは、外に出たいのに、なにかのひょうしに家におじゃまして、出られなくなってしまった生き物もいます。
(広いわ。ここは、どこなのかしら。)
そのむしの夫婦は、なかよく庭のすみっこで暮らしていました。ところがこの間、出かけた時に、雨やどりをしようとして、むしのおくさんのほうだけが、水路の筒の中を上がってきてしまったのでした。
(前にすすむだけが能じゃないって、頭ではわかっていたのですけど。)
そのむしは、手足がたくさん付いているため、前を向いて歩くのは得意だったのです。ただ、後ろに下がることは苦手で、とにかく、前へ前へと歩みを進めていくしかありませんでした。幸いに、筒の中を歩いている時に、食べるものはたくさんあったので、体力はありました。時おり、流れて来る水も、気持ちよくて、気づいたら、筒を通り抜けて、広い場所へ出ていたのです。
(とにかく、だんなさんに連絡しなくては。)
むしのおくさんは、テレパシーで、だんなさんによびかけようと、しょっ覚を、動かしました。すると、むしのだんなさんから、信号が送られてきました。
(だいじょうぶですか? きみは、今どこにいますか?)
(おまえさん、わたし、また、歩きすぎてしまって、今はひろい場所にいます。これから、戻ろうと思うのですが、長い時間がかかるでしょう。さびしい思いをさせてしまって、ごめんなさいね。)
じつのところ、むしのだんなさんは、先日の雨の日、マリーゴールドの植木鉢の下に、ひなんしていました。ところが、一日たっても、二日たっても、むしのおくさんが帰って来なかったので、心配していたのです。
(それでは、今から、迎えに行きましょう。)
(ほんとうですか? でも、それはそれは、遠い道のりです。待っていてください。わたしは、きっと帰りますから。)
(いいえ、方向感覚は、ぼくのほうがよいですから。それに、今宵は、満月。テレパシーが使えるのは、この三日間だけです。お互いに信号を送り合って、居場所を確認しましょう。そうと決まれば、今すぐ。)
(わかりました。わたしは、へたに動かず、おまえさんが来るのを、待っています。)
(待っていてください。)
(はい。)


七 水路
 暗い水路の筒の中を、休むことなく、進んで行くのは、むしのだんなさんです。たくさんついている手足を使って、今までこんなにいそいだことはないというくらいに、全速力で、歩いて行きます。
(歩くのは得意ですが、やはり、羽の生えている生き物がうらやましいですね。ぼくらのからだに、羽が生えていたら、最強なのですが。なかなかうまいぐあいにはいきませんね。)
むしのだんなさんは、そんなことを考えながら、ひたすら、まっすぐに進んで行きました。時おり、むしのおくさんがテレパシーを送ってくれます。
(おまえさん、今、どこにいますか?)
(まだ、筒の中にいます。きみは、だいじょうぶですか?)
(じつは、ねこがやってきたのです。わたしは、見つからないようにかくれましたので、ぶじでした。)
(それは、よかったです。ねこというのは、時に、とてもきょうぼうですからね。人間は来ませんでしたが?)
(人間も来ました。)
(人間は、きみを見ても、なにもしませんでしたか?)
(ええ、わたしの上を、またいで行きました。)
(それは、運がよかったですね。くれぐれも、見つからないように、気をつけてください。)
(そうします。)
むしのだんなさんは、おくさんが安全だとわかり、いきおいよく、手足がからまらないように、ダッシュしました。そして、ついに、筒を通り抜けたのです。そこは、たしかに、広い場所で、ところどころに、水たまりができていました。
(広い場所へ出ました。きみは、どこにかくれていますか。)
(ここですよ。)
むしのおくさんが、脱衣所からおふろばに移動して来ました。
(つかれたでしょう、まずは休んでくださいね。)
(いいえ、人間というのは、ぼくらがただ、いるだけで、大声をあげて、殺そうとしてきます。明るくならないうちに、ここを出なくては。)
外では、なきごえのきれいな秋のむしたちが、すてきな歌をうたっています。
(夜明けまでには、時間があります。すこし、休んでからでも、おそくはないでしょう。)
(そう、しま、しょう、か。)
むしのだんなさんとおくさんは、よりそってねむりました。


八 ダイニングルーム
 翌朝、すずかちゃんが起きたころ、お母さんは、朝ごはんの支度を終え、お父さんとすずかちゃんが来るのを待っていました。
「すずかちゃん、おはよう。」
「おはよう、お母さん。いよいよだね。わたし、昨日の夜、ねこのことばを勉強したよ。」
「あら、すごいじゃない。お母さんにも教えて。」
スマホの画面を見て、お母さんが言いました。
「今日は、十時すぎに、ここを出て、こねこちゃんを迎えに行く予定よ。したくをしておいてね。」
「はい。」
時計を見ると、時刻は、八時ちょっと前でした。
「お父さんは? みりもいっしょかな?」
「そういえば、朝から、みりを見ていないわ。いつもなら、ごはん、ごはんって、待ちかまえているのに。どこにいるのかしら?」
「わたし、みりをつれて来る。」
「すずかちゃん、ついでに、お父さんも起こしてきてくれる?」
「うん。」
すずかちゃんが、寝室に入ると、お父さんは、まだ眠っていました。
「お父さん、起きて。朝ですよ。」
すずかちゃんは、お父さんのかけぶとんを、ばさりとめくりました。
「わあ、すずか、やめてくれ。起きる、起きるから。」
「あれ、みりは?」
「こっちには、入って来なかったぞ。」
「ここじゃないとすれば、一階のどこかにいるのかな。」
「そのうち、出て来るんじゃないか?」
「変なんだよ、朝ごはんも食べてないんだもん。」
「たしかにそうだなあ。よし、お父さんが見つけるぞ。」
すずかちゃんとお父さんが、一階へおりて行くと、お母さんが、二人に気づきました。
「グッドモーニング。」
「お母さん、みりがいない。」
すずかちゃんが言うと、お母さんは、用意しておいたみりのごはんを、いったんテーブルの上におきました。
「みりは、繊細な子だからね。今日、べつのねこが来ることを敏感に察知して、かくれちゃったのかもしれないわね。昨日の晩から、すこし変だったし。」
すずかちゃんは、みりのごはんのうつわをさわりました。
「そんな、もしも、みりが、きょうだいができるの、いやだったら、どうしよう。」
 その時、一階を見てまわっていたお父さんが、あたふたと戻ってきました。
「いやあ、たいへんだった。」
「ええっ、みりになにかあったんじゃないよね?」
すずかちゃんは、口元を両手でおおって、お父さんに問いかけました。
「違うんだ。おふろばを見にいったら、ムカデが、同時に、二匹も出たんだよ。」
「いやだ、こわい!」
お母さんが、たじろぎました。
「それで、退治してくれた?」
「退治したぞ。だがな、あのむしは、見た目はグロテスクだけれど、人間には悪さをしないし、ほかの害虫を食べてくれる、いいむしなんだがな。」
「うそでしょ! しんじられない。こわいし、気持ち悪いわ。」
「お父さんだって、気持ち悪いけどな。今度から、入って来られないように、しっかりガードしておこう。」
すずかちゃんは、むしは怖いけど、みりになにかがあったわけじゃなかったので、ほっとしました。
「わたし、外へ行って、見て来る。」
「ああ、待って。玄関は閉まっていたから、外にはいないと思うわ。」
お母さんが、すずかちゃんを引きとめました。
「じゃあ、どこへ行っちゃったの? みりー! みりちゃーん!」
いつもなら、名前を呼べば走って来るみりなのですが、足音も聞こえてきません。
「お母さん、昨日の夜、なにか変わったこと、なかった?」
すると、お母さんは、ピンと来たと言う感じで、手を打ちました。
「そういえば、ベッドサイドのクローゼットのとびらが、半開きになっていたわ。朝方、わたしが、閉めたのよ。」
「そうだったの。それなら、そこに閉じ込められているかもしれない。助けなきゃ。」
みりを探すため、すずかちゃん親子は、寝室へ集まったのでした。


九 クローゼットの内側
お父さんが、クローゼットの中をのぞきこみました。すずかちゃんは、自分も探したかったのですが、高い場所まで手が届かないため、お父さんにお願いすることにしたのです。
「みり、ねていない?」
「ここにはいないなあ。だが、もっとよく見てみないと、わからない。ねこは、上のほうへ上がりたがるからなあ。」
下段には、収納ボックスがあり、かばんや、季節ごとの服がしまってありました。上段のスペースにもやはり収納ボックスがあり、その横には、つっぱりぼうが設置され、上着やズボンやスカートがハンガーにかけてつるされていました。
「いなそうだぞ。」
お父さんは、服をよけて、上段に上がり、ひざをついた状態で、さらに上のほうまで腕を伸ばして、手さぐりで、確認しました。
「お母さん、ライトを持ってきてくれないか。」
「はいよ。」
お母さんは、手元にあった、スマホのライトをつけて、お父さんに渡しました。
「ありがとう。」
「なにか、見えた?」
すずかちゃんが言うと、お父さんは、天井付近をライトで照らして、言いました。
「ああ、そういうことか。」
お父さんは、天井板の一部が、下から押せば、かんたんにはずれるようになっていることに気づいたのです。
「前にも、とびらを開けはなしていた時に、みりが入りこんだことがあったんだよ。その時は、服の上でねていただけだったが。今日は、ここから、上へ行ったんじゃないか? もうそれ以外には考えられないだろう。」
すると、お母さんが、
「みりは、クローゼットを通り抜けて、異世界へ探険に行ったのかもしれないわ。」
「もう、お母さんたら、ふざけて。みりが、もしも、異世界転生して、戻って来なくなったら、お母さんのせいだからね。」
「そうね、ふざけたこと言って、ごめんなさい。わたしが、とびらを閉めちゃったから、出てこられなくなったのかもしれないものね。でも、まさか、みりがいるなんて思いもしなかったわ。」
お父さんが、クローゼットから出て来ました。
「すずか、みり救出のため、屋根裏部屋の『ひみつきち』へ行くぞ! だがその前に、はらごしらえだ。お父さんは、お腹がぺこぺこだ。」
「ごはんなら、とっくに準備できているわ。はやく食べちゃいましょう。」
「オッケー。」
みりが、どこにいるのか、なにをしているのか、はやく探したいけれど、すずかちゃんのお腹も、さっきからグーグーなっていたのでした。


十 夢の中
 みりは、つかれてぐっすりとねむっていました。夢の中で、みりは、お母さんねこや、四匹のきょうだいねこたちと、にぎやかに暮らしていたころにもどっていました。一匹、また一匹と、きょうだいたちがもらわれて行き、とうとう、みりがもらわれていく最後の夜になりました。お母さんねこは、長い間、みりを、やさしくなめてくれました。
「お母さん、わたしが出て行ったら、さびしくない?」
「そうね。」
「わたし、あしたは、どこかにかくれていようか? たとえば、おふとんの中とか、クローゼットの中とか。人間たちに見つからないようにしていればいいんにゃ。」
お母さんねこは、みりをやさしくかんで、それから、かおをなめました。
「だめよ。そんなことをしたって、みつけられちゃうわ。」
「でも、みんながいなくなったら、さびしいでしょ。わたしも、おかあさんとはなれるなんて、さびしいもん。」
「だいじょうぶよ、みりには、あたらしい家族ができるのだから。」
「いやにゃ。」
みりは、あたたかいお母さんねこのおなかに顔をおしつけて、めをつむりました。
「ねむくなったにゃ。」
「おやすみ、みり。」
みりは、お母さんねこのぬくもりを確かめるようにして、深い眠りの底に落ちて行きました。眠りの底で、みりは、自分の名前を呼んでいる声がしたように思いました。お母さんじゃない、ほかのだれかが、みりを呼んでいる声が。


十一 ひみつきち
 朝ごはんを食べ終えた、すずかちゃん一家は、二階のろうかに集まりました。ひみつきちに行くには、専用の入り口があるのです。まず、棒を使って、二階のろうかの天井板を押し上げ、あいた穴のふちにある金具に、はしごをかけてのぼるのです。
 お父さんは、はしごの具合を確かめた後、すずかちゃんをふりかえりました。
「お父さんが行って見てくるよ。すずかも、行きたいか?」
「もちろん。」
「よし、それなら、さきにのぼりなさい。お父さんが、下で支えているから。」
「うん。」
すずかちゃんは、はしごの一番下の段に、足をかけました。そして、一歩ずつ、上へ上がって行ったのでした。
「すずかは、身軽でいいな。お父さんは、少しばかり太ってしまったせいか、はしごがきしむ。」
すると、お母さんが、くすくす笑いました。
「そうよ、お父さん。はしごをこわさないでちょうだいね。」
そうこうしている間に、すずかちゃんは、屋根裏部屋に上がることに成功しました。
「いる、いる。みりが、ねてる。」
すずかちゃんは、つくりつけの棚に重ねてある毛布の上で、みりが丸くなっているのを見つけました。
「やっぱりいた。よかったあ。」
すずかちゃんは、みりのもとへ行き、しゃがみこみました。よく見ると、みりの肉球は、黒ずんで汚れていますし、からだじゅう、ほこりだらけでした。
「みりったら、泥んこになっちゃって。」
すずかちゃんは、みりの額のあたりを、指でそーっとなでました。それから、手のひらで、みりのお腹のあたりも、なでてみました。みりは、本当にぐっすり眠っているようで、なかなか起きません。
「ハ、、ハ、ハックショーーーン!」
「わあ!」
後ろで、お父さんが、特大級のクシャミをしました。すずかちゃんは、びっくりして、床に腰をついてしまいました。すると、みりも、うっすら目を開けて、あくびをしたのです。
「おはよう、みり。」
みりは、すずかちゃんに抱っこされて、ごろごろいっています。
「じゃあ、もどろう。もうみんな、朝ごはん食べちゃったんだよ。」
その頃、お父さんは、屋根裏部屋のすみっこをまわり、床板を確認していました。
「みりは、本当に、かしこいねこだ。こんなところから上がれるなんて、ちっとも気づかなかった。」
お父さんは、部屋をひととおり見てまわり、落ちていた飛行機の模型をひろいあげて、棚の上に置きました。
「おや?」
お父さんは、窓の外をながめながら、窓がすこしひらいているのに気づきました。いったん全開にして、閉めようとした時に、窓枠の内側に、ピーナッツが一つ置いてあることに気づきました。
「前に、柿の種を食べた時、落としたか?」
そう言って、お父さんは、ピーナッツを、窓の外の庭のほうへほうりなげてしまいました。
(この窓が、開けっぱなしになっていると、みりが外に出てしまうかもしれない。あぶないな。今度から、気をつけるようにしよう。)
お父さんは、レバーを内側にひいて、しっかりと窓を閉めました。
 二階のろうかから、お母さんが、すずかちゃんたちを呼んでいる声がしました。すずかちゃんは、穴から下を見おろしました。
「みりはいたの?」
「うん、ねてたよ。」
「ああ、よかったわ。早くおりてきてね。そろそろ出かける準備をしないと、間に合わなくなっちゃうわ。」
「みり、ひとりではここからおりられないよね。お母さん、はしごを上がって、みりを受けとめてくれる?」
「はいよ、みり、おいで。」
ところが、みりは、身を固くしてつめをたててしまい、なかなかお母さんの腕の中へ行こうとしません。
「怖いのかな、お母さん、だいじょうぶ?」
「だいじょうぶよ。ちょっと、待っててね。」
お母さんは、いったん、一階へおりて、みりのあさごはんを持って、戻ってきました。
「みり、ごはんよう。」
その声を聞いたみりは、怖さも忘れて、お母さんの腕の中へとびこみました。
「お母さんの作戦勝ちだね。」
「おなかがすいていたのよね、みり。」
みりは、そのまま、お母さんを誘導するかのように、一階へ行き、朝ごはんをもらったのでした。
「みりの白い毛が、灰色になっちゃったわ。まるで、シンデレラね。」
「シンデレラ?」
すずかちゃんは、みりがおいしそうにごはんを食べるすがたを見ながら、不思議そうに聞きました。
「シンデレラって、『灰かぶりひめ』っていう意味があるのよ。」
「そうか、そういうことか。」
「ごはんを食べおわったら、みりをきれいにしてあげたいけど、もう時間がないから、あとでいいかしら。」
「それなら、わたしが、おるすばんしている間に、みりをきれいにしてあげる。それから、こねこが来る部屋のチェックもして、もしも、足りないものがあれば、連絡するよ。」
「まあ、すずかちゃん、ひとりでおるすばんしてくれるの?」
「ひとりじゃないよ、みりと、ふたり。」
すずかちゃんは、今は、みりといっしょにいたほうがいいような気がしたのです。
「お父さん、すずかちゃんが、家にいてくれるって。」
「悪いな、すずか。そうしたら、しっかり戸締まりして、待っていてくれよ。こねこを、つれて来るぞ。」


十二 玄関でお見送り
 すずかちゃんは、両親をお見送りするため、みりを抱っこして、玄関の外へ出ました。お見送りをする時、お父さんが、みりの頭をなでました。
「みり、すずかといっしょに、おるすばんを頼むぞ。」
「にゃあ。」
車に乗り込もうとした時、お母さんが、花だんを見て、思い出しました。
「いっけない。バタバタして、お花の水くれをするの、すっかり忘れていたわ。」
「このあいだ、雨が降ったばかりだし、だいじょうぶじゃない?」
「植木鉢のお花にだけ、いそいでお水をあげちゃうわ。」
お母さんが、あわてて、小屋のほうへ行って、じょうろをとってきました。
「あとでいいだろう。お母さん、もう行かないと。」
お父さんが、腕時計を見ながら、お母さんを急かしています。
「あとは、わたしがやっておくよ。」
みかねたすずかちゃんが、声をかけると、お母さんが、じょうろに半分だけ水を入れた状態で、すずかちゃんの近くに置きました。
「おねがいね、行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
 両親が出かけた後、すずかちゃんは、みりを芝生の上へおろして、じょうろを手に持ちました。
「みり、遊んでおいで。あとで、洗ってあげる。」
みりは、芝生のほうへ行き、長くのびた草をかじりました。それから、木によじのぼり、鳥とおはなしをし、あたたかな日光と風のにおいを、楽しみました。お庭のふちに並べてある植木鉢のところで、すずかちゃんが、お花の水やりをしています。赤や白やオレンジ色の花が、とてもきれいです。
「よし、水やり、おわり! お家へ入ろうか。」
それを聞くと、みりは、すずかちゃんのいるほうへ、走って行きました。その途中、オレンジ色をしたマリーゴールドの植木鉢の下にいた、むしの夫婦は、無事に家へ帰ったようすでした。
「みり、帰って、からだをふいたら、おやつだよー。」
それを聞いて、みりは、あわてて、玄関へむかって走って行きました。
 今日は、みりに、おとうとか、いもうとができる、記念日です。みりには、そのことがちゃんとわかっていました。お父さんとお母さん、すずかちゃんとみり、そしてこねことの、あたらしい生活がはじまるのです。
 すべての家族にとって、しあわせな生活が送れますように。


2024-02-18 23:39  nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

前の3件 | -
短篇小説 W   別天地へ行け

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。