別天地へ行け 10 ストンサークルで遊ぶ少年 [地下世界ヲ脱出セヨ 乃亜シリーズ♪]
10 ストンサークルで遊ぶ少年
里奈と私は、公園に戻った。
その頃にはすでに、男子達の姿はなく、いたのは、幼い子供だった。
幼い子供は、広場にあるストンサークルで遊んでいる。
ストンサークルは、3重円になっていて、
外側のいちばん大きいサークルの中に中くらいのサークルがあり、中央には、まるい水色のタイルが敷かれている。
中央の水色のタイルは、特別な場所だった。
みんなで水色のタイルまでストンを飛んでいくのが、人気の遊び方だった。
「昔は、よく遊んだよね」
里奈は、涙を拭いて、幼い子の遊び相手になろうと、近付いていく。里奈は、大人から同世代、老若男女問わず、よく好かれるが、幼い子にはとくに優しく接する。
私自身は、どちらかというと、大人としゃべっている方がラクで、子供の相手は苦手だった。
子供というのは、すぐに泣いたりわめいたり忙しい。
けれど、この幼い子は・・・?
「あの子、一人で遊びに来ているのかしら。他に誰もいないわ」
「そうね」
「話しかけてみようか」
ストンの中央にいた幼い子に近づいた時、里奈が、あっと声をあげた。
「リウヤ君じゃないの」
「知ってるの?」
「ええ、第21区に住んでいる男の子よ」
リウヤ君は、顔をあげた。
里奈が近づき、目線を同じくして、話しかけた。
「誰と来たの?」
「おねえちゃんと」
「そう」
里奈がにっこり笑って、リウヤ君の頭をなでた。
「おねえちゃんはどこいったの?」
「あっち」
リウヤ君は、立ち上がって、1つの方向を指差した。
「里奈、どうする?」
「リウヤ君と、ちょっと遊んでから考えましょうよ」
里奈とリウヤ君は、2人で飛び石ごっこを始めた。
一緒にやろうと誘われたが、
私は、リウヤ君のお姉さんが、戻ってくるかどうか気になっていたので、リウヤ君が指差した方へ行ってみることにした。
このまま時間が過ぎれば、「夕月」「宵」と時間が過ぎる。
リウヤ君のお姉さんが、どこまで行ったかわからないが、幼い弟を残して、そう長時間離れるはずはないし。
そう考えて、ふっと息をついた時・・・
(あれ?)
広場の出口から、立ち入り禁止岩へと続く道の前で、私は、立ち止まった。
(なんだろう)
匂いが漂ってくる。
(この匂いは、・・・何かを燃やしたような匂い?この奥で何かが燃えているのかしら?何だろうこの匂い。こんなしびれるような匂いは初めてだわ・・・)
そこで、脳にしびれるような感じがして、気がついた。
(そうだわ。学校の川べりで、里奈と過ごした正午の時・・・あの時の匂いだわ。あの時は、こんなに強くなくて、微量だったから…気のせいじゃないかと思ってしまうくらいだったけど。でも、今度は、違うわね・・・)
そこで、わたしは、急に、誰かに腕を掴まれた。
「何してるの?」
驚いて目を開けると、暗がりの中に、人影があった。
11←次のページ
共通テーマ:趣味・カルチャー