別天地へ行け 8 卒業式の帰り [地下世界ヲ脱出セヨ 乃亜シリーズ♪]
8 卒業式の帰り
1カ月後。
男子生徒30名が終業式を、女子生徒4名が卒業式を迎えた。
学生の間は、男も女も関係ないという意識でよかったけれど、
これからは、男女それぞれの道を歩んでいくのだと思うと、胸にいいようのない悲しみのようなものが広がった。
校門の前で、私たち女子4人は、しばらく抱き合ったり会話をしたりして、別れを惜しみ合った。
「あたし達の絆は永遠よ」
「これからも、ずっと一緒よ」
「じゃあ、またね」
卒業式の帰り道を、里奈と一緒に楽しんだ。
里奈は、さんざん泣いた後、すっきりしたみたいだった。
「学校生活が、すべて、終わっちゃった」
「うん」
「涙も、とまっちゃった」
「とまらない涙なんてないもの」
「あるわ。さっきは、本当に悲しくて、川のように涙が流れて、目が溶けてしまうかと思った」
「目はついてるわ、泣き虫ちゃん」
「よかった!泣くとすっきりするのって、なんで?不思議だわ」
私と里奈は、学校の川べりで、川の流れを見つめた。
私たちをいつも潤してくれた大切な川。川は、私たちの命の源だ。これからも、私たちのために、ずっと変わらず、流れ続けてくれますように。
そして、キサマも、私達に、永遠に、希望の光を照らしていてくれますように・・・。
さらさらという瀬音とともに「正午」の時が来て、キサマが、強烈な光を放ち始めた。
「正午」の灯は、心も体も照らし出してくれる光だ。
「わぁ、暖かい。元気出るね」
「そうね。こうして目を閉じたら・・・」
水の流れる音をBGMにして、まぶしい光が、私たちを包んでくれる。そのなかで感じるささいな異変。
(・・・何かしら?このにおいは・・・?)
わたしは、はっとした。
風がどこかから吹いてきている。そのなかに、本当に微量な、何かのにおいが混じっていた。
「里奈、あなたも感じる?」
「なあに?」
「風が吹いてる・・・その中に、なにかいやなにおいが混じっていない?」
「あたしには、わからないな・・・乃亜は敏感ね」
「嫌な予感がする。速く帰ろう」
私たちは、手をつないで、岩壁ストリートを急ぎ足で歩いた。
生ぬるい風、いやな風。
正午の光で温められた空気に、対流が起きたせいだけだろうか?
つないだ手に、汗がにじんだ。
橋を通り過ぎる時、公園に、男子達が、集っているのが見えた。
どきっとした。
蓮が、大きく手を振っている。
「何かしら?行ってみよう」
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