別天地へ行け3 居住区へ [地下世界ヲ脱出セヨ 乃亜シリーズ♪]
3 居住区へ
学校からの帰り道、川沿いの道を下っていくと、ところどころに橋が架かっていた。地下世界には、居住区が23区あって、私や里奈の住んでいる第22区の特産品は、セラミックだった。橋を渡れば、街、公園、その先は、セラミック窯場へと続いていたし、岸壁ストリートを行けば、家々があるのだった。
「それじゃあ、明日、街でね」
「うん」
明日の休みの計画を話し、里奈と分かれた私は、ストリートを歩いていた。
すると、立ち話をしている女性達に出会った。女性達は、買い物かごを手に持ち、にぎやかに談笑していたが、その中に、お隣のお姉さんがいた。
お姉さんは、私に気づいて、一緒に帰ろうと、集団の輪の中を出た。
「乃亜ちゃん、遅いのね。今帰りなの?」
「うん。少し、遅くなってしまって」
「そう、早く帰りましょう。もう、宵の月だもの。道は暗いわ。さあ、手をつなぎましょう」
「うん」
お姉さんの名前は、マナさんだ。マナさんは、小さな頃からいつも私の面倒を見てくれる。それは、今でも変わらなかった。年齢は、18歳で、私より2つ上だ。
「ゴホン・・・、ゴホン、ゴホン、ゴホン」
マナさんは、急に、咳き込み、つないでいた手を離し、口を押さえて身体を折り曲げた。
「マナさん、大丈夫?」
「・・・ごめんね、乃亜ちゃん。大丈夫よ。いつものことだから。ゴホン、これでもね、最近は、ゴホン・・・まだいいほう・・・ゴホン、ゴホン、ゴホン」
「しゃべっちゃだめ」
マナさんは、昔から身体が弱い。発作が出ると、大変だ。
幸いにも、家がもうすぐだった。私は、マナさんを、家の前まで連れて行った。おばさんは出かけており、他の兄弟姉妹が、出迎えてくれた。にぎやかな家族だった。
「マナさん、それじゃあ、お大事にね」
「・・・ええ、ありがとう」
私は、マナさん家の戸を閉め、自分の家へ向かった。
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