雪の小道をねこと歩く [妙高市応援してます♪]
雪の積もった矢代川沿いの小道を、ねこのみいと一緒に、歩く。
川向こうのダイセル工場の碧い煙が風もないのにたなびいて、そこはかとなく寂しい気もしたけれど、
雪の上を、静かな足音が鳴るのが嬉しくて、つい長距離散歩になった。
「みい、振り返らないでね。そのまままっすぐ」
みいは、聞いているのかいないのか、にゃぁとも言わないで、ひとつひとつていねいに、ねこの足跡をつけていった。
その後ろ背中の感じが、なんともよかった。
あたしは、かすかな気配を感じて振り返った。
足跡が並ぶ雪地の向こうに、ちいさな小鳥が、いた。
「小鳥ちゃん、あたしたちと一緒に?」
小鳥は、なにも言わなかった。
みいは、小鳥を追いかけた。
あたしも、走った。
雪の上に、アップテンポな人とねこと小鳥の足跡が刻まれた。
小鳥は、灰色の空へ飛びたった。
みいは雪まみれのしっぽを、振った。
あたしは、雪だまをつくって、空へ放り投げた。
「なんていうか、静か過ぎるね」
今日の空はまるで、ちゃんと見えているのに何も見えていないかのようだった。
「にやぉう」
みいが、もう冷たいのは御免だと、店じまいのような声を出した。
矢代川は、ごうごうと流れていた。
川の真ん中あたりには、雪がたくさんまるく積もっていた。
誰が食べるかわからない、天然のアイスクリームだ。
重く冷たそうな水のせせらぎが、なにもかも全部を押し流すような音で、あたしの心にも迫ってきた。
冬の小道を散歩すれば、どんな思いが出てくるかわからない。
あたしは、雪の上から、みいのからだを抱き上げた。
みいはかわいそうに、冷たくなった手でダッフルコートの布地につめを出して、ひっついた。
「帰ろうか、みいちゃん」
みいを上着の中へ入れて暖め、顔だけ出させると、気に入った様子になった。
ごろごろとのどまで、鳴らしている。
帰りは、行きでみいがつけた丁寧な足跡に、感心しながら歩いた。
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