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哀詩 エヴァンジェリン ロングフェロー作 斎藤悦子訳 岩波文庫 [読書記録♪]


~哀詩 エバンジェリン 序より~

ここは太古の森。
風のまにまに囁く松や栂(つが)は、
苔の髯(ひげ)をつけ、
緑の衣を着て、黄昏にははっきりと見えず、
丁度、昔のドゥルイッド僧のやうに、
悲しい預言の声をあげ、
丁度、白髪の伶人のように、胸に髯を垂れ下げて居る。
近傍の海は、胴魔声で、
岩穴の中から音高く呶鳴る(どなる)。
そして其もの淋しい調べは、森の悲鳴と合奏している。


~哀詩 エバンジェリン 第二編 一より~

「そんな夢を見て、待つことはもうお止めなさい。ギャブリエルと同じ立派な男は外にもある。公証人の息子のバプチィスト・ルブランは、昔からお前が好きで待ちあぐんで居る。
手を任せて楽しく暮らしたらどうかね。美しいお前が、聖カザリン様のお髪(ぐし)を編んで、日を過ごすことは勿体ない。」
 エヴァンジェリンは、静かに悲しく答えた。
「できません。心の向う行方に、私の手は従って行きます。
心が、ランプのように、先立って行方を照らすときに、万事が暗闇から引き出されて、はっきり判る気が致します。」
 すると、彼の女の味方で、懺悔を受ける神父の僧侶は、微笑んで云った。
「そうだ。娘。それは心の中の神の御告げだ。無駄な愛情などと、口にしてはならぬ。
愛情は決して無駄にはならぬ。
愛情の流れは他人の心を養わずとも、源に返って、降る雨のように回復の水で基源を充たすのである。
泉より沸き出づるものは、やがてまた泉へ帰るのである。
忍耐せよ仕事を成就せよ。愛情の事業を成就せよ。悲しみと沈黙は強い。
そして忍耐、辛抱は、神に近い。
愛の仕事を成就せよ。そして、そなたの心が神に近い迄に清く、力づき、完全になり、一層天国にふさわしくなられよ。」
 
作者のロングフェローさんは、18世紀半ばの北米の詩人です。
こちらは、イギリス、フランスの植民地争奪戦により引き裂かれた恋人たちが、互いを探し求め、すれ違う悲しい運命を描いた物語詩の一部です。
戦争は、愛し合う恋人同士を引き裂き、美しい乙女を路頭に迷わせます。
乙女は、自身の心のままに、恋人を探し続け、時は無常に過ぎていくのです。
白髪まじる放浪の果てに、彼女は恋人を見つけ出しますが、そのとき既に、彼の命の灯はまさに消えようとしていました。
悲しく静謐な美しさに包まれた物語詩です。


2008-02-20 17:52  nice!(0)  コメント(0) 
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