SSブログ
myoko.jpg  ←~生命地域~妙高高原♪

別天地へ行け 17 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]


17
横穴の向こうは、天井が低かった。
入り口からわかれ道を右へ歩いて行くと、壁のあちこちに、人がやっとくぐれるほどの横穴があり、さらに奥へ奥へと別の道が続いていた。
歌声や怒鳴りあう声、笑い声や叫び声などが、どこからともなく聞こえてきた。
道なりに行き、階段を降りて、並んでいる横穴の9つ目に踏み入った。
地下道の途中に、広場のようなたまり場があった。
大勢の人の姿が見えた。
座ったまま動かない者、寝そべっている者、やせ細った小さな子供と母親などが、ひしめき合っていた。
なんともいえないにおいが鼻を突いた。
もう幾日も身を清めていないようなにおい。
それから、アルコールのにおいと、食べ物のくさったにおい、そして、これはなんのにおいだろうか?
かいだことのない気の遠くなりそうなにおいがする・・・。
ふと見ると、地面に紫色のビンが落ちていた。
そこから強烈なにおいがしているとわかった。
よせばいいのに、なんとなく手に取った。
「・・・あ?」
そのにおいをかいだら、不思議なことに、先ほどまでの嫌なにおいを忘れてしまった。
鼻が麻痺したのだろうか。
気分が高揚してふわふわとする。
「酒か?貸しな」
男は、私からビンを取り上げて、飲もうとしてやめた。
「ん?」
男は、ビンのラベルを見て、言った。
「薬だ」
「薬?」
薬が、地面にころがっているとは、ここの人達は具合が悪いのかしら。
ふと目をやると、暗がりの隅に、ビンがまるで並べてあるかのように落ちていた。
「ああ、あっちは宝の山だ。ちょっと待ってな」
男たちは、宝の山、つまり、薬だか酒だかのビンが大量に落ちているほうへつられていった。
(逃げるなら今だわ)
私は、男たちに気づかれないように、今来た道を引き返し、一目散に走った。
大丈夫、道は覚えているのだから。
ところが、足が前に出ていかなかった。
ひと足ひと足が、まるで、かせをはめられた悪い夢を見ているかのように重いのだ。
(前に進めない・・・!)
私は、それでも心だけは一生懸命に前へ進んでいるつもりだった。
だが、目の前の景色はいっこう変わらず、心臓がどくんどくんと高鳴り、焦りと恐怖に胸が縮れた。
(誰か助けて!)
自分との格闘の結果は、無残だった。
私は、地下道の真ん中で眠りこけてしまったのだ。


2008-02-20 10:01  nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 
短篇小説 W   別天地へ行け

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]


この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。