お話の練習 49 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]
49
「僕の友達が、堤防の崖で怪我をしたんです。歩けないので、助けを呼んで欲しいんです」
「待ってな。今、祭りの関係者に話してきてやるぞ。怪我をした子は、今、どこにいるんだ?」
「この先のサイクリングロードを1キロほど山のほうへ行ったところです。俺、怪我をした友達を置いてきてしまって・・・」
松平くんは、急に目頭が熱くなり、言葉に詰まってしまいました。
胸がいっぱいになり、泣きそうでした。我が事ながら、信じられない気持ちでした。
男の人は、松平くんの肩に手を置いて言いました。
「よしよし、大丈夫だぞ。おじさんたちが、友達を助けてあげるよ」
松平くんは、自分にがっかりして、無力感を覚えました。
思わず、涙ぐんでしまったことや、子供扱いされてしまったことが、くやしかったのです。
「友達って、もしかして浜口くん?」
ももは、心配そうに訊ねました。
「・・・ああ」
「松平くんも、どこか痛いんじゃない?大丈夫?」
「べつに痛くなんかないよ!」
はねのけるように言葉を返しました。
こんな時、思いがけず、優しい言葉をかけられると、調子が狂ってしまいます。
お祭りのライトが明るく感じられ、いつの間にか、日は暮れていました。
ももは、かばんを捜しに来たことを、思い出しました。
「あっ」
「何?」
「・・・ううん、なんでもない」
松平くんの顔には、「変なやつ」と書いてありました。
「赤城、祭りに誰かと来てたんでしょ?」
「ううん、あっ、ううんじゃない。そうなの。ゆうこちゃんとね。でも、ゆうこちゃん、もう帰っちゃったから。あたしも、ここに一緒に残る」
松平くんは、はっとしました。
「・・・いや、だめだ。赤城は帰って」
「えっ?どうして!?」
「赤城がいたって・・・役に立たないから!」
ももには、松平くんという人が、わかりませんでした。
さっきは、泣きそうな顔をしていたくせに、今は、こんな憎まれ口を叩くのです。
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