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お話の練習 45~46 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


45
松平くんと浜口くんは、巨石の岩場をよじ登り、堤防の崖からさらに上の道路へ出ようと行動を開始しました。
「気をつけろ、そこ、石がぐらぐらしてるから」
「わかってるよ!うわっ」
ぐらぐらしている石の上に全体重をのせてしまった浜口くんの足首を、不安定な石が、はさみこみました。
「痛ぇ!・・・助けて!」
石をどけようと、両手で血が出そうなほどいっぱいに石をひっぱりましたが、びくともしません。
「だめだ!動かない!」
必死に足を抜こうとしますが、抜けません。
松平くんは、巨石の岩場をすごい勢いで探し回り、漬物石くらいの大きさの石を持ってきました。てこの原理で、石をどけようというのです。
「うっ!」
ところが、石はかすかにごろっと動くだけでした。もっと、棒のように長いものでなければ無理なのです。浜口くんは、足を挟まれた痛みと恐怖に、失神寸前でした。岩場がななめになっているため、下手に足をひけば、反動で、体が下へころがり落ちてしまいそうでした。
「待ってろ!」
松平くんは、今度は、巨石の岩場の上へ登って、丈の高い草むらから、蔓性の植物とすすきを根こそぎひっこ抜いて持って来ました。それらをほどけないように結び合わせ、石に巻きつけて縛り、手で持つ場所をつくりました。
「いくぞ!俺が石をひっぱるから、少しでも持ち上がったら、足を抜くんだ!せいの!」
今度は、うまくいきました。浜口くんの足は、可哀相に、大きくすりむけて、紫色になり、血が出ていました。
浜口くんは、ほっとしたのもつかの間、自分の傷を見て、あまりなことに、すぐ眼をそらしました。それから、余裕を見せようと、口元で軽く笑みを作りましたが、痛みが一気に押し寄せてきました。
「わ、笑えないや・・・」
「傷口ふさがないと。それと、よもぎどっかに生えてないかな。血止めの効果があるから」
松平くんは、そう言いながら、上着を脱ぎ、その下に来ていたトレーナーを脱いで、浜口くんの傷口に包帯の変わりに巻き付けました。
「・・・いいよ。サンキュー」
浜口くんは、松平くんの肩に手をかけ、力なく立ち上がりました。気がつけば2人とも、肌寒いくらいの気温にもかかわらず、汗びっしょりになっていました。
「・・・俺につかまって!大丈夫か?ハマー?登る?それとも降りる?」
「・・・降り・・いや、の、登る、いやどうすっかな・・・やっぱ、そうだな、登るしかないっしょ!」

46
松平くんたちは、巨石の岩場を登りきりました。
途端に、胸の中にさっと暗雲が立ち込めました。わかっていたことですが、前方に、広がる世界に圧倒されてしまったのでした。彼らの行く手をはばんでいたのは、藪でした。草というには、あまりに生長しすぎた、小さな木のようにも見える枯れ草、すすき、つる性の植物たちが、びっしりと絡まって、藪をつくっていたのです。
「ここを行くしかないのか・・・」
まったく整備されていない堤防を上がってきたのです。ここを進むしかありません。ここさえ通れば、間違いなくサイクリングロードに出られるのですから。
「行くぞ」
勇気を出して、藪をかきわけながら進んでいくと、間もなく、足元に蔓が絡まりました。足を高く上げながらそこを踏み越えた時、くつが泥だらけになりました。泥なんかないのにおかしいと思い、よくよく眺めると、それは、泥ではなくて、小さな黒いとげが、びっしりとくっついたものでした。
松平くんは、背中越しに、浜口くんに声をかけました。
「なんだこれ?黒いとげがいっぱいくっついてるよ」
すると突然、足首や袖口や首の周りなどが、ちくちくし始めました。よく見れば、トレーナーやズボンやくつにまで、びっしりと黒いとげのようなものがくっついていました。
「うわっ、なにこれ?いつの間にこんなに?落ちない、落ちないっ」
手で払っても全然とれません。このとげを取るには、ひとつずつつまむしかなさそうです。でも、今はそんな悠長なことをしていられません。取っても取っても、まだまだいっぱいくっつくでしょう。

ササッ ササッ

 草むらで、何かが動いたような音がしました。どこもかしこも藪だらけですから、何が動いたかまではわかりません。あるいは、風かも知れませんが。
そういえば、さっきから、あらゆる大きさのバッタや見たこともないような虫を見かけます。もしかすると、そういった虫などを食べるへびなどがいるのかも知れません。
松平くんたちにとって、藪の中を進むのは、思っていた以上に大変なことでした。口に出さないでいたのですが、 ついに、浜口くんが、耐えかねて口を開きました。
「マツ!今なにか変な音がしたよ・・・。俺、おっかねぇよ。ここから出ないと、気が狂いそうだよ。さっき、絶対、そこを何か通ったよな?へび・・・大蛇・・・とかだったらどうする?ばくって、俺ら、飲み込まれてさ、そうして、行方不明になって、探してもどこにもいないって、大騒ぎになったりしてよ」
「『はい、こちらは現場です!照山小6年の男子2人組が、行方不明になりました。どうやら、川で大蛇に飲み込まれ、遭難したもようです・・・』」
2人の背中に悪寒が走りました。
「怖ぇよー!冷静なおまえまで、変なこと言うと余計怖いっ」
ようやく藪を抜け出した2人は、サイクリングロードにへたりこみました。
お互いの姿を見れば、いかに大変な旅だったかがよくわかります。
「ああ、写メしたい!おまえ、携帯持ってる?俺、家に置いて来ちゃったんだよね」
「何言ってんだよ、持ってねぇよ~」
空にはバサバサと、鳥の群れが飛んでいます。
「鳥になりたいって、思わん?こういう時。空から飛んでいけば、あっという間に家につくし学校にも遅刻しない。しかも、毎朝、3階の窓から、おはようございまーすだよ」
「俺、これからおまえを、おんぶするわ」
「おっと!おんぶなんて、現実的だね。、ドラえもんにタケコプターを出してもらえば早く済むのに!」
「非現実的・・・」
「どこでもドアのほうがいいけど、かさばるからねぇ」
「ドラえもんをまず、呼んでみろ」
浜口くんは、ひとしきり、軽口を叩いた後、はぁ~っとため息をついて言いました。

「こんなこと言いたくないんだけどさ、俺、足が痛くてもう、我慢の限界。俺を・・・置いていけ」
「まじかよ!のび太くん!タケコプター!」
「誰か助けを呼んできてよ。俺、ここで待ってるからさ」
この近辺には、人が通る気配がありません。浜口くんは、寂しがりやです。こんなところに1人で置いていかれることを好むはずもないので、よっぽど足が痛むのでしょう。
「・・・わかった!すぐ戻ってくる!」
「ごめんな、迷惑かけて」
「命かけて戻ってくるから」
「大げさだなぁ、走れメロスじゃあるまいし。まだ明るいし、大丈夫大丈夫」
空を見上げると、山のすぐ上に、夕日がありました。


2007-11-29 02:22  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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