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お話の練習 第一章 26~27 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

26照山街道は、車が行き交い、歩道には、会社帰りの男性や、スーパーの袋を持った女性や、高校生の団体が、歩いていました。
反対側の歩道から、自転車に乗った男の子が、走りながら、なにかこちらへ向かって叫んでいました。
「おーい!」
それは、松平くんでした。
「やっと気がついた、赤城、まだ学校にいたの?」
「うん。松平くん、どこ行くの?」
「これから、塾へ行くとこ」
「そっか、勉強がんばって」
「言われなくてもがんばってるって。じゃ」
「2度目のばいばい」
ももは、歩き出しました。
松平くんは、ちょっと気になったので、自転車をくるっと回転させ、止まりました。
「聞くけどさ、先生のアルバムを見ると、なにかいいことでも、あるの?」
ももは、お昼の放送のことを、話しました。
「あの話のね、ひめ子さんがいなくなったことは、本当のことなの。そのひめ子さんが、偶然、若山先生の同級生だってことが、わかって。それで、写真をみせてもらいたいと思ったの」
「ふーん・・・」
ももは、松平くんの反応が鈍いことに気がつきました。
「松平くん、お昼の放送、聞いてくれなかったの?」
「聞いてなかったよ、正直、俺は、給食の時、放送なんて、真剣に聞いたことがない」
ももは、放送委員です。委員としても、もも個人としても、松平くんの言葉を聞いて、なんだかとっても傷つきました。
「松平くんて、冷たいね!もう、いいよ。ばいばい!」
ももは、すたすたと歩き出しました。松本くんは、さすがに、悪いことを言ったと思い、大きな声でいいました。
「直接、先生ん家に行ってみたら?俺、知ってるよ」
ももは、立ち止まりました。
「ほんとに?」
「通り道だからさ」

 27ももは、松平くんと一緒に、先生の家を、訪ねました。
先生の家は、照山街道の一本となりの道を行ったところにあり、進学塾から、そう遠くない場所にあるのでした。
「この家が、そう」
松平くんは、指差しました。
「ほら、ね。表札見てよ」
「若山」と書かれていました。
松平くんは、自転車を、門の前に停めました。門から中に入ると、庭があり、石畳を踏み歩いていった先に、玄関がありました。松平くんは、呼び鈴を鳴らしました。
ピンポン、ピンポン。
「はーい」
先生のお母さんらしき、年配の人が、エプロンをつけて、出てきました。
「こんにちは。若山先生は、お帰りですか。僕たち、先生にお話があるんですが」
「あらまあ、そうなの。いらっしゃい、今帰ってきたのよ。どうぞ、上がってくださいな」
「失礼します」
松平くんは、ももに合図して、くつを脱いで上がりました。ももも、急いでくつを脱ぎました。2人は、客間へ通されました。
「そこで、待っていらっしゃいね。博之!生徒さんが、あなたに会いにみえてるわよー!」
すると、2階から、
「えー?なんだい?」
「生徒さんが、来ているのよー!」
先生のお母さんは、さらに、大声で呼びました。
「分かった。すぐ行くよ!」
ドタドタと、階段を駆け下りる音がして、先生が、まもなく現れました。
「君たち、一体、どうしたんだい?」
「僕は、付き添いなんです」
ももは、どぎまぎしながら言いました。
「あの、あたし、今日は、具合が悪くなって保健室で寝てしまって、帰りの会にも出なかったんです。」
「そうだったね、先生も心配してたんだ。でも、その様子じゃ、もう大丈夫だね。うんうん、級長、それで、赤城くんを、家まで送ってあげるのかい?」
「いえ、僕は、そういうわけじゃなくて」
そこで、先生のお母さんが、現れました。
「どうぞ、何もないけれど、お茶でも飲んでいってね。あなた達は、博之のクラスの?」
「はい。いつもお世話になっています」
「どうぞ、ごゆっくりね」
先生のお母さんは、会釈して、部屋から出て行きました。
「それで、君たちは、他に何かあるんでしょう?」
先生が問いかけてくれたので、松平くんは、言いました。
「赤城が、先生に話したいことがあるらしいです」
ももは、先生に、嫌がられるかもと思いつつ、聞いてみました。
「先生の卒業アルバムを、見せてもらいたいと思って来たんです。だめですか?」
先生は、片目をつぶって困った顔をしました。
「うーん、実は、アルバムを、どこかへやってしまったんだ」
「ええっ」
「確か、しまってあったはずなんだが。本当にごめん」
「そうですか・・・」
「それから、僕のアルバムには、ひめ子さんはのっていない。先生は、南小出身だからね」
「えっ、そうなんですか。あたしてっきり同じ学校だと・・・」
「君たち相手に、先生の初恋の話なんて、学校では絶対にしないと思うから、せっかく来てくれたことだしね、今しゃべってしまおう。白井ひめ子さんは、そりゃあ可愛くて、先生はひとめぼれしたわけだよ、わかるだろう?松平くん」
「はっ!?いや、まあ」
突然、話をふられて、松平くんは、めずらしく慌てました。
「いやいや。いいんだよ。僕が、白井ひめ子さんを最初に見たのは、書道教室だった。当時は、あまり会話した記憶がない。遠くから見ているだけだったからね。字がとっても上手な子だった。それから、中学校で再会してね」
先生は、腕組みをして、話を続けました。
「中学校で、1年生の時に同じクラスになった。それからクラス替えがあって別々になった。部活もクラブも委員会も違っていたから、たまに廊下ですれ違うくらいの存在だった。ひめ子さんは、おとなしいのに、とても目立っていた。まるで、一輪挿しのゆりの花のようだった。ゆりの花は、たった一本でも生けてあれば、あたりによい香りを放つだろう。その香りは、学校中の男子生徒を酔わせるほどのものだった。先生もそのうちの1人だったと、こういうわけです」
ももは、先生の話に聞き入っていました。
「赤城さんは、その後、おばあさんの家に行ったのかい?」
ももと松平くんは、顔を見合わせました。ももは、先生に、一人で行かないほうがいいと言われていたのに、一人で行ってしまったことに今、気がつきました。
「あの、あたし、一人で・・・」
先生は、とくに怒るわけではありませんでした。
「おばあさんの感じはどうだった?」
「おばあさん、元気です。あたしが、ひめ子さんのことを聞くと、ひめ子さんのことはもういいんだって言っていました・・・でも、あたしは、おばあさんの気持ちは、違う気がするんです。」
ももは、思っていることを口にしました。もっともっと言いたいことはあるのに、うまく言葉になりませんでした。
「おばあさんがそういうのなら、ひめ子さんのことは、これ以上触れないほうがいいのじゃないかな。心にいつまでもひめ子さんをとどめていても、求める答えは出ないかもしれない。赤城さんの気持ちは、分かるけれどね。いろいろな家の事情があるよ。家族が揃っているのが一番だと、先生もそう思う。だけど、それがかなわない人もいる。僕だって、ひめ子さんの家の事情は、多少なりとも気にはなっているし、誰か知っている人がいたら、聞いてみようと思うけれど、ただの好奇心で、これ以上、君たちに調べさせるわけにはいかない」
ももは、先生を怒らせてしまったと思い、黙って聞いていました。
すると、ドアをコンコンと叩く音が聞こえ、先生のお母さんが、そっと、顔を出しました。
「博之、ちょっと」
先生は、立ち上がって、客間から廊下へ出ました。


2007-11-03 05:09  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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