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物語のメモ書き♪

真友は、リュックに荷物を詰め自転車に乗って、とあるところへ向かっていました。
(今年こそは・・・宿題は早めに終わらせて、後半は、うんと遊ぼう)
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夏休み初日、真友は、そう心に決めていました。それが、いざ、夏休みが始まってみると、毎日うきうきわくわくして、宿題のことなんて考えていられませんでした。外へ出かけて、近所の子と遊んだり、のら猫を探したり、地面を歩いている蟻の行列を観察したり、水連の葉の下に隠れているかえるを見に行ったり、つばめの巣を見に行ったり・・・と、数え上げたらきりがないくらい、遊ぶことが宝の山ほどありました。
 緑色に輝く水田のあぜと近所の家の軒下をいったりきたりしているつばめが、農道を走っている真友の前をさっと横切っていきます。
(時間は、待ってくれないものね、あたしも、今日は、せっせとがんばろう)
真友は、少し上り坂になっている道を、ペダルに力をこめてこぎました。
さて、もうすぐ目的地に到着します。自転車の前かごにのせたリュックの中には、ジュースをいれたマイボトル、フルーツのあめが3つと、ふでばこ、夏休み帳、日記が入っていました。
じつは真友は、今日のうちに、7月分の夏休み帳を終わらせ、できれば、8月分の夏休み帳もだいぶ先まで進めておきたい考えでした。そして、たまっている日記も書かなくてはならず、少しばかり焦っていたのでした。
(1週間前のことが、もう思い出せないや。変わり映えのしない毎日なんだよね、あたしの日常って。夏休みだからといって、特別どこかへ行くわけじゃないし。そういえば、ゆいちゃん、ディズニーリゾートへ行くって言っていたなぁ。もう今頃は、ミッキーさんと写真撮っているかなぁ。あたしは・・・まずは、昨日のことから思い出さなくっちゃ。何が大変って、宿題よりも日記が一番大変!先に書いちゃうわけにもいかないし、嘘書けないし。毎日、ねこと遊んでいましたって書くのも、何してるのって感じになっちゃうしね)
さて、着いたところは町の公民館です。自転車置き場で、見慣れた自転車が停めてあるのを見つけました。
(瞬くんの自転車だわ)
町の公民館には児童図書館があります。朝9時から午後4時まで開館していて、本の貸し出しも行なっています。じつは、市の中央にある市立図書館のほうが大きくて、本がたくさんあるのですが、子供が一人でいくにはちょっと遠すぎました。真友の学区内の子供達は、ここへ来ることが多いのでした。
公民館の裏手は林になっていました。木漏れ日が木陰をつくってくれて涼しく、セミの鳴き声がたくさんします。そこで真友は、地面に、たくさんの穴ぼことめずらしいものを発見したのでした。
ちょうどその頃、図書館から出てきた瞬くんは、真友がうずくまって地面をずっと眺めているのに気がついて近くにやってきました。

「真友、何やってるの?何か落し物?」
「おはよう、瞬くん。そうじゃないよ、これ見て」
落ちていた枝にそれをのせて瞬くんに見せると、瞬くんは、わーっと言ってよけました。
「セミの抜け殻じゃん。キモいもの見せないでよ」
「そう?貴重なのにな。あ、そうだ。アメあげる」
真友は、リュックのポケットから、アメを3つ取り出して、瞬くんにあげました。
「このアメね、本物のフルーツの味がしておいしいの。巨峰と夕張メロンとサンフジ、どれがいい?」
「どれでもいい」
「じゃあ、巨峰ね」
「ん、うまい」
「でしょう?」
瞬くんは、アメの包み紙をポケットにしまうと、自転車にまたがってスタンドを蹴りました。
「よし、お礼に、アイス1本とは言わない。うまい棒1本くらいなら、おごってもいいぜ」
「めずらしいね、瞬くんがおごってくれるの?」
「うん、野々屋へ行こうよ」
「えっ、野々屋?」
夏休みは、野々屋の前で男の子達が集まって、どこかへ遊びに行くのが通例でした。なので、好きな男の子がいる女の子は、わざと、用もないのに店の前を通りかかったり、店に買い物に来ては、好きな男の子を待つのでした。そして、その場でデートに誘う女の子もいて、瞬くんも、何回か誘われることがありました。最初は、ちょっといい気分だった瞬くんも、この頃は、何回も誘われて、うっとうしい気がしていました。真友のほうは、好きな男の子もいないのに、野々屋に行く気にはなれませんでした。
「真友も、来ればいいじゃん」
「あたしはいいよ」
「こんなとこに一人でいたって、つまんないじゃん」
「あたし、ここへ勉強しに来たんだもん」
瞬くんが笑いました。
「嘘だぁ」
「本当だよ。それにいろいろ忙しいの。今だって、セミの抜け殻の観察をしていたところだし」
「勉強っていうよりは、自由研究のネタ探しか、暇つぶしってとこじゃないの?」
瞬くんに、そんなふうに言われることは、百も承知していた真友は、言い返しました。
「あたしね、いつも思うの。動物や虫とはおしゃべりできないから、よく観察して、何を言いたいのか考える。そうやっているとだんだん、動物や虫とも、お話をしているような気持ちになれる。そうじゃない?」
「犬や猫ならともかく・・・って、真友、あれ見て」
話し終わった時、瞬くんが、公民館の裏の林の奥を指さして言いました。
「犬がいる。すごくでっかい白い犬」
「え、犬?どこ?」
「あっちへ走っていった。行ってみよう」
言うより早く、瞬くんと真友は、犬を追いかけて走りました。

林を抜けて、犬はどんどん歩いていきます。民家の裏の歩道を、南小の方角へと走って行きます。
「ねえ、あの犬、どこの犬だろうね。どこかから逃げ出して来たのかな」
瞬くんは、目をきらきらさせて言いました。
「よし、俺は、今から名探偵になってあの犬の謎を解くから」
「名探偵?」
「そう。まずは、あの犬を尾行しよう」
「瞬くん、尾行って言っても、どこにも隠れるところがないよ」
「犬に見つからなければいいとしよう」
「わかったわ」
「お?犬が立ち止まった」
真友は、小さな蟻の観察も面白いけれど、大きな犬を見るのはもっといいと思いました。白くてふさふさの毛は、どんな手触りだろうと想像するのでした。あと20メートルくらいまで近づいたところで、犬が座り込みました。
「おっきい犬だねえ」
真友がさらに近づこうとすると、瞬くんが後ずさりします。
「これ以上近づかないで、一旦、様子を見ようぜ」
「え、やっと追い付いたというのに?」
「だってさ、あの犬、すごいでかいから、怖いじゃん。襲ってくるかも知れないよ」
「まさか」
犬が振り向き、その目が2人をとらえたようです。
「んじゃ、俺、逃げようっと・・・じゃない、そうだ、野々屋へ行くんだったっけ。じゃ、また!」
「え?」
犬は、ゆっくりとした足取りでこちらへ歩いてきます。近づいてみれば、それはまるで、毛のふさふさした巨大な白い動物といった感じでした。瞬くんの姿は、もう見えなくなっていました。
「なんて逃げ足の速い名探偵なの」
真友があきれ顔で言うと、白い犬は、真友のそばに来て尻尾を振りました。
「君の方は、名犬ジョリーって感じだわ」
犬がしっぽを振るのを見ていると、家にある掃除用のハタキを思いだします。
「しっぽしっぽ、しっぽよ。あなたのしっぽよ~」
真友が昔どこかで聞いた歌を歌ったら、犬がさらに大きくしっぽを振りました。なんだか、意気投合したみたいです。
「よし、君の行きたいところはどこ?あたしも一緒に行くから教えて」
真友がそう言うと、犬は、しばらく座って真友の顔を眺めていましたが、やがて立ち上がり、歩きだしたのでした。知らない犬と一緒に歩くだけでも楽しいというのに、リードをつけて犬の散歩をしているのではなくて、犬にリードされて歩いているのだなんて、こんなちぐはぐさは、もう最高です。できれば、この様子を誰かに見せつけたい。 そんな真友の気持ちとは関係なく、白い犬は、どんどん先へ進んでいきます。そして、ある店の前へ来た時、急に止まり地面のにおいをかいでまわりました。
「急にどうしたのかしら?」
白い犬は、それから、くーんくーんと鳴きながら、あたりをうろつき、突然、はっと頭を持ち上げたかと思うと、猛ダッシュです。
「待って!」
真友も、100m走の時みたいに走ります。白い犬は、どんどん走って行き、とうとう道の終わりまで来て、街道で左に曲がりました。歩道をどんどん歩いて、信号のところまで来て止まり、はあはあと舌を出してしっぽを勢いよく揺らしています。
「どうしたの?」
真友が言うと、横断歩道の向こうに、白いシャツと黒い制服のズボンを身に付けた男の子が立っていました。男の子は、こちらに手招きして、よくとおる声で叫びました。
「ストップ!待てワンダー」


2011-10-26 01:34  nice!(3)  コメント(2) 
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lamer

ワンダーは彼を捜していたのでしょうか?
次を楽しみに・・・。
by lamer (2011-10-26 11:11) 

今井愛魚

lamerさん、いつもありがとうございます♪
by 今井愛魚 (2011-11-10 01:01) 

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