SSブログ
myoko.jpg  ←~生命地域~妙高高原♪

別天地へ行け 9 友情 [地下世界ヲ脱出セヨ 乃亜シリーズ♪]

01_02_15_02002803.gif9 友情

「何しているの?」
「乃亜はここで待っててくれる?ごめん。里奈、ちょっと一緒に来て」

蓮は里奈を連れて、公園のほうへ歩いて行った。橋のたもとで待つことになったわたしは、2人が行くのを見守った。
1か月前、蓮のあの言葉を聞いてから、私は、思い出す度、心臓がどきどきした。

(・・・乃亜は、卒業しても、僕を、ずっと見ていてくれよ)

男は、所詮、ひとりの女の子を思うことなんてできやしない・・・そういう世の中なんだってわかっているはずなのに、矛盾した想いが胸に涌いてくる。
もしかしたら蓮は・・・社会から逸脱してもひとりの女の子を愛そうとする人なのかも知れない・・・なんて、夢のようなことを考えていたこの1か月間。
私は、首を振る。
そんなことがあるわけがない。

(私が蓮のたったひとりの女の子だったなら・・・)

そんなふうに夢見るのは、里奈に失礼だ。
けれども、里奈との友情よりも、なんだかとってもときめいていて、悔しいけれど胸のたかまりが抑えられなくなる。
そして今、里奈と蓮の並んだ背中を見ていて、胸が苦しい。
わたしは、蓮のことが好き・・・?
それでもまだわからない。
人を好きになる気持ちは、もっと、純粋できらめいているもので、こんなに苦しいものじゃないと思う。
これはただの嫉妬だわ。
人を想う気持ちは、もっと輝いているはずだもの。
ひどい心を、里奈に、いいえ、誰にも見せたくない。
心の中だけとはいえ、蓮のことを奪い、裏切ってごめんね、里奈。

ひとりで帰ろうときびすを返した時、里奈が走って戻って来た。
「乃亜!待って!」

途中ころんでついたひざの汚れを両手ではらい、顔を上げるとその顔は、失望と怒りに満ちていた。

「ちょっと聞いてよ!」
「どうしたの?」

里奈は、息を飲み込んだ。

「男子達がね、保健局に登録する前に、私に求愛したいって言うのよ!」
「えっ!?」
「もう行こっ・・・早く行こ!」

里奈に背中を押され、私達は、公園の橋を渡って、岩壁ストリートへ戻った。遠くの方で、男子達が何かしゃべっているのが聞こえたが、段々声が小さく聞こえなくなっていった。

「あたし、知らなかったわ。男子達にも、あったなんて」
「あったって、何が?」
「『夕月の誓い』の男子バージョンよ」
「はじめて聞いたわ。そんなの」
「あそこにいた男子全員で、あたしに求愛させろっていうのよ。それでね、みんなであたしのこと取り囲んで。男子達、すごく興奮していて、ばかみたいだった」
「蓮も?」

里奈は、その質問に、口をゆがめた。

「そうよ。蓮はばかな男子達とは違うと思っていたのに!」

それから、大粒の涙を流し、嗚咽し始めた。蓮が、男子達と、里奈を囲んで求愛するだなんて、本当だろうか?

「里奈、大丈夫?」
「あたし、勘違いしていたみたい。ううん、というか、やっぱり・・・男の子ってばかみたい!」

 彼女の泣いている姿を見て、幼い頃からのことを思い返した。いつもそうなのだ。男子達は、こぞって里奈と話したがり、笑わせたり、泣かせたり、いじめたりする。その度に、里奈が泣きついてくるから、蓮に注意をしてもらうのだった。今まで、里奈のことを、かばってくれる唯一の男子が、蓮だったのだ。

01_02_15_02002803.gif10←次のページ


2010-07-01 20:20  nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証: 下の画像に表示されている文字を入力してください。

 
短篇小説 W   別天地へ行け

このブログの更新情報が届きます

すでにブログをお持ちの方は[こちら]