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別天地へ行け2 愛を夢見る少女 [地下世界ヲ脱出セヨ 乃亜シリーズ♪]

01_02_15_02002803.gif2 愛を夢見る少女

キサマは、時間とともに変化するのだった。

有明

正午
白光
夕月

三日月
半月
満月


「宵」の頃までに帰宅することが、校則で定められていた。携帯灯(けいたいとう)無しで歩くのは、危険だった。
里奈は、夢見る表情で語った。

「卒業したら、すぐ、子供を産みたいわ。たくさん産んで育てるの。早く産めば、たくさんの子供ができるでしょう。子供ってかわいいし」
「そうね。里奈は、可愛い母様になれるわよ」
「ありがとう。それともうひとつ」

夕月の揺れる灯りを見ながら、歩いていた里奈の足がふと止まった。

「あたしは、『夕月の誓い』を蓮としたいの」

好きな男の子ができたら、『夕月の誓い』をするのが、女の子の間で流行していた。
卒業間近で、離れ離れになる前に、『夕月の誓い』をしておけば、男の子が卒業したら真っ先に、自分に求愛してくれるという、約束事だ。
でも、実際のところ、誓い合ったカップルがどうなるかは知れない。学校を卒業してしまえば、私たちは、保健局に登録をし、次から次へと求愛されて、子供を産まなければならなくなる。好きな男の子がどうのって、言っていられなくなるからだ。

「乃亜は?『夕月の誓い』を誰かとしたいって思ったことないの?」
「ないわ。そんなの少女趣味、恥ずかしくって」
「少女趣味でもいいじゃない。あたしは、蓮にとって最初の人でいたい。大好きなんだもの。ねえ、乃亜はいないの?好きな人」

月灯りの柱(キサマ)は夕月の時を続けていた。

「私は、1人の人を心から思い続けることと、女としての繫殖の仕事というのは、別にして考えなきゃ生きていけない気がするわ。そうじゃないと、やりきれない気がする。好きな人を作って、一貫した愛を一番重要にとらえていくと、他の男性と交わる時にジレンマに陥って、たった一人の人への愛を捨てなきゃいけないことになってしまうでしょ。だからといって最初から誰も愛さないのは、人間として意味をなさないんだとすれば・・・結局、どんな男の人をも愛する努力をすることが必要な気がするの」

「じゃあ、好きな人は作らないの?」
「うん。いずれはできるかもしれないけれど、今は」
「そう。蓮のことは・・・好きじゃないの?」

いつか訊かれると思っていた。蓮のことをどう思っているのかと。実のところ、そう聞かれたら、どう答えようかと、シミュレーションしていたのだった。

「蓮は、好きだわ。でも友達よ。それ以上には思ってないわ」
「そっか」

里奈は、ほっとした様子で、息をついた。それから、再び、不安を口にした。

「また少女趣味って笑われるかもしれないけれど、あたし、蓮が、他の人に求愛したらと思うと本当に嫌だわ。一生にただ一人とだけ、愛し愛されたいって思うの」

私は、したり顔で言うのだった。

「でも、女性は、どんな男性でも必ず受け入れるようにできているものよ。男だってそうでしょ、たった一人とだけ交わるわけにいかないのよ。それが自然の摂理なんだもの。あたしたちは、まだ少女だから、わからないだけ。大人になれば、疑問なんてなくなるわ。里奈が、蓮を好きならば、蓮との間に子供をいっぱいつくればいいのよ」
「蓮が、他の人と交わるなんて、絶対に嫌!」
「そんなこと言ってちゃ、蓮に、子供だって笑われてしまうわ」

里奈は、こちらを向いてにらんだ。

「乃亜はどうしてそんなに澄ましていられるの?好きな人がいないからそんなこと言えるんだと思うわ」
その言葉に、胸が痛んだ。でも、それを悟られないようにしようと、両腕を頭の後ろで組んだ。

「乃亜の愛ってわからないわ。そんな風に計算して愛せるものじゃないわ」

そうかも知れない。私だって本当はまだ、愛なんてわからないのだ。だけど、里奈よりは、少し大人な自分でいたいのだった。

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2010-06-08 15:42  nice!(0)  コメント(0) 
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