静かな午後のひと時♪ [さらさちゃん♪水想録]
「みーちゃん、どしたの?」
和金のさらさちゃんは、人間のみーちゃんに、話しかけました。
黒出目金のでめちゃんも、一緒です。
「こっちを見ているような、みていないようナ・・・?」
「見ていないようで、いるようナ・・・?」
じつは、みーちゃんは、
水槽の水を隔てて向う側のガラスに映っている、さらさちゃんたちお魚の影を見ていたのでした。
そして、指さして言いました。
「さらさちゃんもでめちゃんもね、あちら側に、影が映っているのよ」
「影?」
「うん。とっても芸術的な感じだわ」
さらさちゃんは、尾ひれをひらめかせて、水槽内を何回か、泳ぎまわってみるのでした。
「いつも、顔を見ながらおしゃべりしちゃうことが多いでしょ。だから、可愛さのあまり、お魚のシルエットがこんなにきれいだったってこと、忘れてた。そうだわ、ちょっと待っててね」
そう言うとみーちゃんは、奥の部屋から、何やら取り出してきて、今度は、真剣な目つきで、さらさちゃんとでめちゃんのことを、じじじーっと見つめるのでした。
さらさちゃんは、ぴしゃんと水しぶきをあげて、ちょっとばかり視線を意識しながら泳いで、横目でみーちゃんのするのを、観察していました。
「でめ、みーちゃんが、また何かはじめたよ、ナニしてんのかナ」
「ぼく・・・寝てもいい?」
「みーちゃん、手を動かしてるよ、あ、みてみて、でめ!」
みーちゃんは、スケッチブックに、お魚たちの絵を描いていました。でも、なんといっても、お魚たちは、ずっと動いていますので、かたちをとらえるのは大変なことでした。
「うまくいかないなぁ、きみたち、動くんだもん・・・って当たり前かっ」
「もしかシテ、アタシたちを描いてるの・・・?」
「そうよ」
「それ、なんかヘンじゃナイ?」
「そんなことないもん。ほらね、見てごらん。口があって、目があって、ひれがあって、あとこれはえーと、その・・・なんの器官だっけ?まじまじ見たことがなかったなぁ今まで。あ、そっか!えらだわ。えらがあって、そのよこに、これ、ねえ、さらさちゃんのそこのそれ、なに?」
さらさちゃんとでめちゃんは、顔を見合わせました。自分たちにも、よくわからなかったからです。
それで、しばらくの間、じっと動かずにモデルをして、みーちゃんが正確に絵を描いてくれるのを待ちました。
そして、何分かの後・・・
「よーし!できたわ」
いつの間にか、2匹の魚は、お昼寝をしてしまっていました。
みーちゃんは、その様子を見てまた、絵を描き始めるのでした。
流れる水の音と、紙に色鉛筆が擦れ合う音だけが、部屋に響いていました。
共通テーマ:趣味・カルチャー
コメント 0