ももシリーズ 77 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]
ゆうこちゃんの目には、涙があふれていました。
「わたし、泣いてる・・・?」
占い師のお姉さんが、そっとゆうこちゃんの肩に手を添えました。
「涙は、浄化よ。嫌なことを流してくれるの。きれいな心に戻してくれる。・・・そうだわ、これをあげる。ムーンストーンペンダントよ。困った時は、両手にはさんでそっと願をこめるの」
ペンダントは、涙のしずくのかたちをしていて、銀の鎖がついていました。
「ありがとう!」
ゆうこちゃんは、涙をふいて、笑顔を見せました。
そして、思うのでした。
わたしを強く思ってくれる人って、誰かしら?
パパ、ママ?ももちゃん?それとも・・・!?嫌だわ!あいつなんて、大っ嫌い!なのに、顔が思い浮かんじゃったりして、どうなのもう!
さあ、帰って、宿題と復習とピアノと英語の勉強だわ!
パパとママには、心配かけたくない。
ゆうこちゃんは、席を立ちました。
「これ、とっても気に入りました。宝物になりそう。そうだわ、おいくらですか?」
「いいのよ。子どもから、お金はもらえないもの」
「いいえ、だめよ、お姉さん!?遊びでやっているんじゃあないんでしょ。しっかりとお金をとってください。じゃないともうからないわ」
ゆうこちゃんは、お財布から、1万円札を出しました。
占い師のお姉さんは、ぎょっとして、指輪のたくさんはまった両手を握り合わせました。
それから、我にかえって、自分に言い聞かせるように言うのでした。
「人に向けた好意は、いつか何倍にもなって返ってくるものよ。そのムーンストーンは、あなたへの好意のしるし。だから、素直に受け取ってくれたら、嬉しいわ」
「そういうものかしら・・・?」
「ええ」
ゆうこちゃんは、占いの店を後にしました。
「わたしって、意外と、素直じゃないのかもね・・・。涙を流したわたしが、本当のわたしだとしたら、
素直になるって、どういうことなのかしら・・?」
涙のしずくのペンダントを、手の中に握り締めて、少女は、行き交う人々の中を、家へと急ぎ歩くのでした。
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