別天地へ行け 25 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
「手を放したらだめだよ。しっかりとぼくについて来て」
いけないわ。こんな見知らぬ少年に、ついて行ったらどんなことになるか知れたものじゃない。
声しかわからない子どもの後について行くなんて。
もしかしたら、さっきの首長のところへ連れて行かれる可能性だってあるわ。
それとも、もっとおぞましい場所へ・・・?
「だめよ」
私は、少年の手をさっと振りほどいた。
「あなたにはついていけない」
少年は、暫しの沈黙の後、口を開いた。
「どうして? 残念だな」
すると、今さっき後にしてきた地下道から、荒々しい人声が響いてきた。
足音は、次第にこちらへむかって来るのだった。
「追手に違いないわ」
ぐずぐずしてはいられなかった。
私は、足を踏み出した。すると、少年が、私の腕を引っ張って止めた。
「だめだよ!そっちは!」
「!?」
その瞬間、私の右足は空を抜けて、地面に口をあけていた落とし穴に吸いこまれた。
体は斜めになり、倒れていく。
「!」
間一髪の出来事だった。
少年は、私の腕を引っ張りあげ、反動で私の下敷きになって倒れこんだ。
ゴツンという鈍い音がした。
「ごめん、君!大丈夫!?」
「痛い・・・」
地面に思い切り頭をぶつけたのだ。
「手を貸すわ」
するとその時、
松明を持った男たちが、私達の姿を見つけた。
「いたぞ!」
まっすぐにこちらへむかって走ってくる何人もの追手たち。
彼らは、待ち受けていた落とし穴に気付かず、松明もろとも、真っ逆さまに、落ちて行った。
「あっ!」
「!」
束の間見えた松明の残像が、目の前でちらついたまま離れなかった。
「みんな、落ちて行っちゃった・・・!ここは、一体!?」
「地獄の大坂道だよ・・・落ちたら命はない」
少年は、そのまましばらく、横になっていた。
「ぼく、このまま死んじゃうのかな。それでもいいような気がする」
「弱気になってはだめよ!じきに『闇』が終われば、『霊光』が、
すべてを照らし出してくれるわ。そうすれば助けを呼べる。」
「ぼく、わからない。何もまだ、わからないのに、死ぬのかな」
少年は、手を伸ばした。だが、その手は、屑折れた。
「君!しっかりして!」
そして、『闇』は終わった。
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