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ももシリーズ 74 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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74
松平くんは、学校から帰ると、自転車に乗って、浜口くんが入院している県立病院へ急ぎました。
病院の売店でサンドイッチとコーラを買って、エレベーターの6階のボタンを押しました。
浜口くんは、足の怪我で、6階小児科病棟に入院していたのでした。
浜口くんのいる4人部屋は、中からにぎやかなしゃべり声がしていました。
松平くんは、開いている戸から、そっと中を見て、安心したのか、ふーっと息をついたのでした。
「うっす」
部屋の中へ入ると、男の子達3人が、みなこちらを向きました。
「おーっ!マツッ!?おまえ!?」
「な、なんだよ!?」
「やべえ!差し入れかよっ、パンの耳とかじゃないよね、それ?」
「なんで、パンの耳とか言う?」
「だってよ、マツ、よくさぁ、給食の余りのパン、持って帰ってたじゃん?」
「ばっか、違うよ!あれは、モルちゃんにやるためだろ!」
隣のベッドの男の子が、聞きました。
「モルちゃんって?」
すると、浜口くんが、言いました。
「へ!?モルちゃんにやってたのかぁ。俺全然知らなかった。
あのね、モルちゃんっつーのは、俺っち照小で飼ってる動物なんだよね。黒くて茶色くて白くて、ピーピー鳴くやつね」
「え~?」
「モルモットでしょ」
「そうそうそう!」
浜口くんは、満面の笑みを浮かべました。すると、お腹が、ぐーっと鳴りました。
「ねえねえ!もうすぐ、飯だぜ!ちょっとさ、今日の晩飯来てるか、見てきてよ」
浜口くんが、一番戸口にいた、腕にギブスをした男の子に頼みました。
男の子は、うなずいてベッドから降りました。
「ちぇー!早く、ギブスとれないかなぁ、俺!動きてぇ!なぁ、マツ、もう飯食った?」
「いや、まだ」
松平くんは、買ってきたコーラを1本、浜口くんにあげて、もう1本のふたを開けて口をつけました。
「俺、ここで食べていこうかなと思って」
「あ~そうなの。サンキュー、コーラ。俺っちも、飲もうっと。あ~!うめぇ!
うちの母ちゃんさ、冷蔵庫にジュース買っといてくれるのはいいんだけど、炭酸、1本も入れといてくれないからさ」
「まじで」
「パイン100%ジュースとか、まじいらないし」
「それ、きついね」
「マツんちの、母ちゃん、今日は?仕事?」
「そ。夜勤。だから、気がラク」
「だよな。うちもよ、母ちゃんが来ると、うるせーから。こいつらと話してると、おもしろいぜ。
こっちのやつは、南小の5年でさ、飯見に行ったやつは、照小の3年なんだ。あいつ、使えるんだぜ!」
「ハマー、足代わりに使ってんな」
「おぅよ、この足が治るまでは、がんばってもらっちゃうもんね」
廊下に、食事をのせた台車が、運ばれてきました。
看護師さんが、それぞれのベッドまで、夕食を運んできてくれました。
看護師さんは、浜口くんの食事を持ってきて、松平くんに目をやって、にっこりとしました。
「あら、内科の松平さんの息子さんね。お母さんは、今日は夜勤?」
「はい。僕、もう少し、この部屋にいたいんですけど・・・いいですか?」
「そうね・・・。面会時間はもう終わっているのだから、本当はだめなんだけど。
でも、静かにしていてくれるのなら、いいわよ。浜口智也くんのお友達なのかしら?
じゃあ、なるべく早く、帰ってちょうだいねって言っても、無理ネ~きっと。
なにしろ、智也くんったら、話し出したら止まらないんですからね」
「なになになに!俺、この頃、超静かにしてんのに!まだ、そんなこというの~?がっかりしちゃう。もう、俺、一生しゃべんないかも」
「はいはい。じゃあ、食べ終わったらまた、食器を片づけに来ますからね。
今夜は、智也くんのお母さん、もう来ないって聞いてますから」
そこで、松平くんが、看護師さんに言いました。
「片づけなんていいっすよ、こいつが食べ終わったら、俺が、片付けますから」
「あら?そうしてくれる?さすがは、松平さんの息子さんね。じゃあ、よろしくお願いします。
智也くん、後でまた、お熱、測りましょうね」
看護師さんは、他の子達にも、同じように声をかけて、部屋を出て行きました。
「あの看護師さんさ、いっつも、もっと怖いんだぜ!おまえがいたから、怒れなかったんだよ、きっと」
「うちの母ちゃん、もっと怖いってか」
「あっ、やべぇ、俺、まずいこと言った?」
「べつに。でもさ、家じゃ、怒んないよ。てか、怒れない?俺が、家事とかやっちゃうし」
「マツんち、父ちゃん、いねーもんな。父ちゃんいねーと、やっぱ大変だよな」
浜口くんは、はっとしました。いけないことを言ってしまったと思いました。
「ごめん、俺、なんか変にしみじみとしちゃったよ。飯、食おーぜ!」
「おぅ!」
松平くんと浜口くんは、久々に会えたことに、あらためて、コーラで乾杯しました。



2008-06-05 21:59  nice!(0)  コメント(0) 
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