アーネスト・ダウスン作品集 南條竹則 編訳 [読書記録♪]
アーネスト・ダウスンさんは、19世紀イギリスの世紀末の時代の詩人です。
ダウスンさんの作品集の中には、素敵な短編があります。
昔なつかしい少女マンガに出てくるような優しい世界が広がっていて、
情景描写も美しく、心ひかれます。
「ブルターニュの林檎の花」 という作品です。
~一、より抜粋
プリマリエルで聖母昇天祭が行われている、午後の暑い盛りだった。
鳩小屋のある小さな教会で夕の祈りを済ませてきたベネディクト・キャンピオンは ―
プリマリエルでは万事そうだが、夕の祈りさえも町方より早く行われるのだった。―
市場に陣取って、行列が通るのを見物しようとしていた。
その時、ちょうど行列の先頭が広場に入って来るところだった。近在の村から来た男たちが
長い列をなして、帽子を冠らず、聖歌を歌いながら、十字架のあとに従ってやって来る。
みな風情ゆたかなモルビアンの農民衣装をまとっていて、
多くの者は端正なブルトン人の目鼻立ちと峻厳な面差しを持ち、
堂々として気品のある姿だった。
そのあとから、若い娘たちが頭に白い面紗(ヴェール)を被き、旗を持って随いて来る。
― あれはウルスラ会修道院の付属学校の生徒たちだ。それから二人ずつ、
雑多な取り合わせで、
(白い頭巾を被った農婦が、洗練されてはいるけれども風趣に乏しい衣装を着た、
裕福な町人の妻や娘たちと歩いている)
プリマリエルの住人の半分がやって来る ―
それ以外の人間は、キャンピオンのように見物する側にまわって、
市場の栗の木陰に灼けつく陽射しを避けていたのだ。
おしまいに、総勢四、五名の聖職者の一団と、丸い頭の少年たちの小さな合唱団、
それに当教区の司祭ルテートル氏その人が、本を見ながら聖歌を誦(ず)して、
しんがりをつとめていた。~
ベネディクト・キャンピオンは、40過ぎの独身。
毎年、長期休暇を、プリマリエルの村で過ごします。
そして、この村の修道院の司祭のもとで暮らしている少女の成長を暖かく見守っています。
その少女というのは、幼い頃、両親を亡くし、
父親の友人であったキャンピオンが、その少女の後見人を引き受けているのです。
聖母昇天祭の日、行列の中に、その少女の姿を見つける様子が、間もなく描写されるわけですが、
少女の姿が、キャンピオンの目に一際輝いて見えるのです。
少女は、修道院付属学校を卒業した後の進路を、考えなくてはならなくなり、
修道院でシスターになろうかどうか迷っていました。
司祭は、それよりも少女にとっては、キャンピオンと結婚するのが自然なのじゃないか思い、
そのことを、キャンピオンに進言します。
少女も、キャンピオンのことを想っており、心の中で、結婚の申し出を期待しているのですが、
キャンピオンは、戸惑います。
そういった流れに、美しい情景描写が加わり、淡い恋物語がすすんでいきます。
ほんとうに、白いりんごの花の香りがするようなお話です。
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はじめまして!
2008年7月に出た、南條竹則さんの「悲恋の詩人 ダウスン」(評伝・集英社新書)もすばらしかったですよ。
坂田やし古参の漫画のようなロマンティックな世紀末ロンドンのやさしい空気のなかへ連れて行かれるようでした。
by yam (2008-07-15 14:08)
yamさん♪コメントありがとうございます!探して読んでみます☆
by 青い海の愛魚 (2010-08-24 21:00)