別天地へ行け 23 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
22闇・・・それは、全ての光が失われた世界。かつて、地上には完全な闇はなかったという。地下世界における闇は、完全に光のとどかないもので、それは、意図的なまでに、規則的にやってきた。だから、人々は皆、「闇」の時間の前に、家に戻るのだったが、そう、それは、「居住区内」だけの常識だったのだということが、今わかりつつあった。
「居住区外」と呼ばれる場所。私が今いるここでは、闇の中でも、どこかどこかで、人いきれがするのだった。あたりに潜んでいるもの、それら得体の知れないものから、意識をそらすことはできなかった。とにかく恐ろしくて息もできず、ひたひたと、こちらへやってくる気配に、私は、ひきつり、両ひざを抱え身を固くした。得体の知れないものが行き過ぎるのを、胸も張り裂けん思いで、耐えた。
だが、その「何か」は、私の足に触れた。私は、気配を消すように叫びたいのをこらえ、足の位置を換え、立ち上がろうとした。だが、「何か」は、両足首をつかみ、襲い掛かってきた。
見えない何かが、私を仰向けに押さえつけようとした。私は、全身で拒み、襲ってきたものを両足で思い切り蹴って、逃げようと膝をついて、立ち上がった。そこへ、再び背後から襲われた。
「助けて!!」
「おとなしくしろ!」
暗闇のなかで、「見知らぬ誰か」は、私を羽交い絞めにして離そうとしなかった。初めて知った。「求愛」の裏の意味を。学校では決して教えてくれない闇の世界を。
「嫌だ―――――っ!」
怯えは、恐怖を通り越して、身を守らなければという必死な感覚を呼び起こした。これが、人間の本能なのか。
私は、辺りのすべての闇を、切り裂くような悲鳴を上げ、相手に思いきり肘鉄を食らわせた。
その時、見えないものの力が緩んだ。私は、逃げた。体のそこらじゅうをぶつけ、何も見えないなかをそれでも全力で、走って走って、この場を逃れるしかなかった。
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