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ももシリーズ 71 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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71
「ゆうこちゃん、大丈夫?ごめんね、一緒にいたのに気づいてあげられなくて」
ももは、早退するゆうこちゃんの背中をさすりました。
「いいのよ、わたしがおかしいの」
「倉沢、勉強のし過ぎじゃないの?」
前を行く松平くんが、そっけない調子で言いました。
「マツケンこそ、ついて来てくれなくて大丈夫よ。ももちゃんがいてくれるから」
ゆうこちゃんは、つっけんどんに言い返しました。
「あ、そう」
松平くんとゆうこちゃんが、険悪な雰囲気になってきたので、ももは慌てました。
「あのさ、ゆうこちゃん、塾は?行ける?今日は火曜だから、英語だよね?」
「うん・・・。どうしよっかな。ママのお迎えが来たら、自動的に連れて行かれちゃうけど」
「ゆうこちゃんのママ、具合悪ければ、きっと休ませてくれるんじゃないかなぁ」
「わたし、たまには、サボっちゃおっかな」
「えっ?」
ももは、完ぺき主義のゆうこちゃんがそんなことを言うなんて、初めてなので驚きました。そして、そんなことをいうのは、相当具合が悪いからなのだろうと思いました。
「ゆうこちゃん、心配になってきちゃった。早く帰って休んだほうがいいよ。ね、松平くん?」
すると、松平くんは、冷静な調子で言いました。
「そっちがそんな感じなら、仮病なんだろ?ばかばかしいから、俺、教室戻るわ。赤城は、つきあってやったら?」
ゆうこちゃんは、心臓がどきっと音を立てたような気がしました。本当は体の具合なんて悪くないのです。そして、こんなにも胸がもやもやするのは、マツケンのせいなのだと、今、はっきり思いました。
「大丈夫!わたし、やっぱり一人で帰れるわ。塾にだって行ける。これくらい、全然平気。じゃあね、ももちゃん、心配かけてごめん!また明日学校でね」
ももから、ランドセルを受け取ると、ゆうこちゃんは、廊下をあっという間に駆けて行ってしまいました。
「ゆうこちゃん!」
追いかけようとするももに、ゆうこちゃんは、元気に大きくバイバイをしました。
ももは、松平くんに聞きました。
「ゆうこちゃんが、仮病だなんて、どうしてそんなこと思ったの?」
「あいつ、頭を冷やしたいだけなんだ。そういう時は、ひとりのほうがいい。俺も、そういうことあるから、わかる」
「そうかな、ゆうこちゃん、大丈夫かな・・・」
「大丈夫だって。倉沢は、親の期待がすごいだろ?でも、裏切らないで頑張ってる。偉いやつだよ。でも、仮病は似合わねぇ」
「そう思ってたの?」
「うん、まあ」
「でもさっきは、もっと冷たい言い方だったよ。松平くん、もっとゆうこちゃんに優しくしてくれない?」
「いや、あいつは、そんなこと望んでないでしょ」
「なんでわかるの?」
「な、なんでって、そんなん、俺知らねーけど」
松平くんは、ももが相手だと、なんだか余計なことまで言いそうになってしまうのでした。
「それよりさ、俺から言うと、うんと言ってくれそうにないこと、赤城から倉沢に頼んでほしいって思ってんだけど」
「やだよ」
「えぇ?」
「ゆうこちゃんに、仮病って言ったこと、謝らないなら、あたしも松平くんの言うことなんて聞かない!ごめんね、松平くん」
ももは、松平くんを廊下に残して、すたすたと教室へ戻りました。


2008-04-10 23:53  nice!(0)  コメント(0) 
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