別天地へ行け 19 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
19
「待って」
急いで四角い穴から外へ出ると、強い風が後ろから吹いてきた。
そして、今しがた私たちが乗ってきた四角い部屋が、音をたてて私を追い越していった。
私がまごまごしている間に、少女はとっくにいなくなってしまった。
あたりを見回すと、大勢の人が無表情のまま全員同じ方角へ歩いていくのだった。
話しかけようとする私を、邪魔だとばかりに突き飛ばして。
私は、壁面に大きく書かれている文字を読んだ。
先ほどどこからか聞こえてきた男の声と同じく「かすみがせき」と読み取れた。
そこで、私は、急に思い出した。
横穴の向こうの世界へ連れてこられたことを。
それにしても、何か、おかしい。
ここは、確かに地下世界に違いないけれど・・・。
見回しても、見慣れた灯は見えない。
私は、とにかく、地下道の一段低い場所へ飛び降りて、走った。
一刻も早くこの世界の位置をつかみ、逃げ出すことを考えた。
今のままでは、ここが横穴のどの辺なのか、見当もつかない。
見覚えのある場所まで、行かなくては。
「危ない!戻りなさい!」
離れたところに立っていた人が、叫んだ。
私は、ふりむかずに走った。
少し暗がりを走るほうが、明るすぎる場所より、安全だと思ったのだ。
ところが、前方から、何か大きな圧力のある物体が押し寄せてきた。
巨大な光る目をもつ怪物のごとく、それは、轟音とともにあっという間に迫ってきた。
「あぶない!」
私は、とっさに、側溝へ身をふせた。
ゴォーーーーーッ!
地が避けるかと思うような振動音。
それが通り過ぎると、先ほどとは変わって、たくさんの人が私に近づいてきた。
「生きてるぞっ」
誰かが叫んだみたいだったが、私は、それ以上のことは、覚えていない。
またもや意識を失ったからだ。
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