別天地へ行け 18 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
18
私は、いつの間にか見覚えのない室内の、明るい光の中で目を覚ました。
腰掛けていたのは、長い緑色の椅子で、暖かく居心地がよかった。
椅子はたくさんの人を載せて、どこまでもどこまでも続いていた。
座っている人達は、見たことのない格好をした人ばかりだった。
左隣には、同じ年頃の女の子、そして正面には、年配の女性と若い男の人。
他にも、多数の人が、少しずつ距離を空け、黙って腰掛けていた。
その光景は、遠目でもはっきりと見えた。
室内は、ずっとさっきから、明る過ぎる光の中で、規則正しく揺れていたのだった。
ドーンドーンドーン!
部屋が大きく揺れた。
どこからか、男の人の声が聞こえてきた。
「ただ今、隕石落下警報が発令されました。運行に支障はございませんが、皆様、しばらくの間、お席をお立ちになりませぬよう、お願いを申し上げます」
すると、正面に座っていた年配の女性が、目をつぶって熱心に何かつぶやき、
若い男の人は立ち上がって向こうへ行ってしまい、
隣に座っていた少女は座ったまま、私に話しかけてきた。
「今度こそ破滅かな。わたし、ここで死ぬわ。あなた、証人になってちょうだい」
少女は、黒い薬のビンを出してふたを開けた。
強い匂いが鼻をついた。
「ひと飲みしちゃうわ」
私は、見たことのない顔色の少女が動かす手元を見て、そのビンに毒が入っているのだとわかった。
「あんたも、一緒にいく?」
少女は、笑った。
私は、黙って首を振った。
「勇気がないんだ、ふふ・・。サヨナラ」
少女が、ビンを口にあてたので、私は、その手を押さえた。
「何するの!」
「死ぬなんて、だめよ」
「どうして?」
私は、少女はなぜ聞いたりするのだろうと思った。
「みんなが、悲しむでしょう。お母さんや、お父さんや、友達や」
少女は、なんだそんなことならという風に、口に手を当てて笑った。
「アハハ。お父さんもお母さんも、もうこの世にいないから、関係ないし。悲しまないでしょ、誰も。人のことなんて思ったりするのもばからしい。隕石なんか降ってこなくたってどの道、このご時世、いつ死んだっていいのよ。
だって、みんないつかは、死ぬのよ。
お父さんは、会社で爆破テロにやられた。お母さんは、熱波で死んじゃったし。弟は、少年海外派兵隊に連れて行かれて、こないだイラクで死んだわ。
それから、クラスの友達だって幻覚にやられてさ。みんな待ってるのよ、死ぬのを。毒を持ち歩かないと不安で、外なんか歩けない。
あなたは、怖くないの?生きていることが?」
その時、またどこからか男の声がした。
「~カスミガセキ、カスミガセキ」
「もうすぐ、着くわね。ちっ、飲み損ねたわ。あんたのせいだからね」
少女は、そう言うと黒いビンを袋に入れ、なにか奇妙な光る石版のようなものを出した。
「もうすぐ、10時。あんたは、どこで降りるの?」
「私は・・・」
私は、これから、どこへ行くのだったろう。
それに、ここはどこなのだろう。
少女に、聞けば教えてくれるだろうか。
「あたしは、ここで降りるから。じゃあね」
少女は、立ち上がり、急に壁に開いた大きな穴から、姿を消してしまった。
共通テーマ:趣味・カルチャー
好調ですね。うちは、何か定まりません。が、がむしゃらに進めています。
by lamer (2008-02-28 17:50)