ももシリーズ 67 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]
67
5時間目は、野外活動が組まれており、生徒達は、校庭に出て落ち葉拾いをしていました。
集めた落ち葉は大きな山となって積まれていきます。
班分けはなかったので、仲良し同士がくっついて楽しそうにおしゃべりしながら集めまわっていました。
「ももちゃん、私の苦手な授業、わかる?」
ゆうこちゃんは、色とりどりの葉っぱを一枚ずつ集めていて、ふいに言いました。
「えーと、言ってもいいの?」
「全然」
「水泳!」
ゆうこちゃんは、ぱちぱちと手をたたきました。
「さすが、当たりー!」
「ゆうこちゃん、夏、スクール行くって言ってたよね」
ももはその時、もしゆうこちゃんが通うなら、自分も通おうかと思っていたことを思い出しました。
「そうそう。泳げないのが悔しかったから夏休みのはじめ頃、体験入学もしたのよ。そうしたら、そこに、知ってる子がいたの」
ももは、その話は初めて聞くと思いました。
「ゆうこちゃんの知られざる話が、でたぁ」
ゆうこちゃんは、指先で落ち葉をくるくると回しながら続けました。
「その子、飛び込み台の高いところから宙返りして飛び込んだの。すごいと思って思わず見とれていたら、それが、浜口だったの。浜口がそのスクールに通ってたことは、私全然知らなくて。向こうも、私が同じところに入ろうとしてるなんて思わなかったと思うの。それでね、私、怖いけど、水の中になるべく顔をつけるようにしていたの。そうすれば、浜口は隣のレーンを泳いでるから、私に気がつかないだろうって思ったの」
ももは、思い出していました。夏休みが終わった後、ゆうこちゃんに、スクールの話をした時、スクールへは結局通わなかったと言っていたことを。
「それでそれで?」
「でもあの子、私に気がついて話しかけてきちゃったの。私、すっごくはずかしかった。だって、私が泳げないからここへ来たんだってこと、あの子、知ってたはずだから。そしたらね、インストラクターが浜口を冷やかしたりして、私も巻き込まれて、もう、うんざり」
「浜口くん、ゆうこちゃんに何て言ったの?」
「それは・・・ビート板の持ち方はこのほうがいいとかなんとか・・・」
「うんうん」
「向こうはいいわよ。スイスイ泳いじゃって得意なんだもの。私は泳げるかおぼれるかの瀬戸際で必死だったのに・・・すごく迷惑に思えて。だから私ね、浜口に、ついひどいこと言っちゃったのよ」
「何て言ったの?ひょっとして」
「言ってみて」
ももは、ゆうこちゃんがうっかり言ってしまいそうなことを考えました。
「触らないでよ!とか?」
「そうじゃないわ」
「めざわりよ!とか?」
「それは、あんまりだわ、ももちゃん。それは言ってない」
「じゃあ、あっちへ行って!?」
ふと見ると、クラスの子達が、こちらを見てひそひそ話していました。
もも達が二人でけんかしてるんじゃなかろうかと思ったようです。ももとゆうこちゃんは、腕を組み、
「仲良くやってまーす」
と言って手を振って見せました。
ゆうこちゃんは、言いました。
「あのね、『私にかまわないで』って言っちゃったの。ひどいでしょ?」
ゆうこちゃんは、はぁーっと息をついて、地面の落ち葉を手でかきまわしました。罪悪感が胸に広がってしまったようです。
「あぁ、それは浜口くん、ショックだったかも。きっと」
ももは、励ます言葉をかけようと思ったのですが、何にも言えなくなりました。
もし、自分が浜口くんみたいに言われたらやっぱりしばらく立ち直れません。
「わかってる。それにね、まだあるの」
ゆうこちゃんの胸には、ずっと鍵をかけたままの引き出しがあり、そこには痛々しい思い出が詰まっているようでした。
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かわいゆい女の子の顔が浮んでしました。
by (2008-02-14 13:22)
今晩は☆女の子達のおしゃべりはとまりません。
by 今井愛魚 (2008-02-15 17:40)