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ももシリーズ 66 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


66
あおいちゃんやゆうこちゃんならずとも、好きな子の話題が出るのは、もっともです。
そわそわ、わくわくしながら、時が過ぎて行きます。
お昼休みになりました。
浜口くんへと書いた色紙がクラスを回っていました。
そこにはすでに、男子の寄せ書きが書いてありました。
「なるべくはやめに書いて回してくださいって。はい、ももちゃん」
手渡されたとき、女子のメッセージは3人分が書かれていました。
ももは、隣の子とダブらないように水色のペンを使って、メッセージを書き入れました。
そして、色紙をゆうこちゃんに渡しました。
ゆうこちゃんは、黒いペンを使って色紙に何か書こうとして一度ペンを置き、それから、筆いれの中を探ってペンを出したり引っ込めたりしていました。
「ゆうこちゃん、どうしたの?」
「何色のペンで書こうか迷っちゃったの」
「そうかぁ、何色がいいんだろう?」
ゆうこちゃんも、迷うことがあるんだと思いながら、ももはみんなのメッセージに目を走らせました。いろんな色で好きなことが書かれてありました。
「ねえ、これおかしいよね?」
ももが指をさしました。ゆうこちゃんが目をやると、こう書かれていました。

俺にまかせておけ! メロス

「ほんとね、メロスって、誰よ?」
ゆうこちゃんは、そう言って笑って、色紙に、先に自分の名前を書きました。
そして言いました。
「なんだか、うまい文章が思いつかないの。ももちゃん、なんて書いたらいいかアドバイスちょうだい」
ももは、自分なんかそう気のきいたことを書いていないしアドバイスになるかわからないと思いながら、言いました。
「気持ちだよ、気持ち」
「そうだ、そうよね」
すると、ゆうこちゃんは、すぐにすらすらと一文を書きました。そこには、

うるさいひとがいなくてせいせいしてるけど、静かすぎるのもあれなので、はやく元気になりなさいよ

と書かれていました。
「ねえ、ゆうこちゃんが思う浜口くんって、どんな子?あたしはね、これ書いてて夏のプールを思い出したの」
ゆうこちゃんは、色紙を後ろの子へ回して、ペンをしまいながら言いました。
「プール?」
「うん。浜口くん、水泳が得意だったでしょ。プールの光みたいとか思って」
ももにとって浜口くんは、夏のプールに照り返す光みたいに、明るい存在だったのでした。
プールサイドから勢いよく水に飛び込む浜口くんの元気な姿が目に浮かびます。
秋になって思い出すと、今クラスにいないその存在が、ひときわまぶしく感じられるような気がするのでした。
「キラキラしてるってこと?水に太陽が映って反射してるって感じ?」
ゆうこちゃんは、そう問いかけながら、思っていました。
(そういえば、・・・浜口が、水泳を教えてくれようとしたことがあったっけ)
「ゆーうこちゃん?固まっちゃったかい?」
ゆうこちゃんは、浜口くんのことでもやもやしている気持ちがずっとありましたが、誰にもまだ話していませんでした。


2008-02-11 17:40  nice!(1)  コメント(0) 
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