別天地へ行け 1 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
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「乃亜、16歳になる前に、地上へ行きなさい」
私の父は、そういい残してこの世を去った。享年、40歳だった。私が、14歳の春のことだった。
どうして、地上へ・・・?
私は母さんに聞いた。地上には何があるのかと。
母さんは、ただ驚愕し、悲しみにくれるだけで、何も教えてくれなかった。
地上へ行くなどということは、おとぎばなしのようなもの、ファンタジーの世界へ行きたいと願うようなものなのだ。
私達地下民族にとっては、地上が、ユートピアか地獄か、それすらもわからない。
異世界なのだから。
私は、調べるのをやめた。まだたくさんの時間があると思った。
16歳になる頃にはきっと、わかるはずだ。大人になったらきっと、なにもかも。
西暦2315年冬。私は、この日、4年制中学の卒業式を終えた。これから春休みに入るという楽しい帰り道を、親友2人とともに歩いていた。学校は随分と地底にあるが、さらに下っていった先に橋があり、川が流れているのだった。その川を渡る橋のたもとで、里南、園、私の3人は立ち止まった。
「明日からどうする?」
3人の中で一番幼く見える里南が、2人の顔を交互に見て言った。
凍りつくような風が通り過ぎた。あまりの寒さに、明日からの楽しい計画を相談するには不向きだと思った。
けれど、今日話しておかなければ、明日からは、みんなそれぞれの道を進み、ばらばらになってしまうのだ。
今日が、卒業式。もう学校で会うことはない。
そう思うととても寂しかった。
「園、もうじき誕生日だよね。お誕生パーティーやってあげるね」
里南がそう言うと、圏は、マフラーで顔を半分隠し、肩をすくめた。
彼は、青い髪の似合う背の高い少年だ。照れ屋な性格は、昔から変わらない。
「誕生会なんて、やらなくていいよ」
里南は、園の腕をつかんで、言い聞かせる調子で言った。
「15歳は、立志の年というのよ。すごく重要な年齢なんだから。いいでしょう?園のことお祝いしたいんだもん。あたしの時も、お祝いしてもらいたいしね」
里南は、昔から、園のことが好きなのだ。
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