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お話の練習 41~43 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


41
グラウンドの横の道を歩いていると、もも達の50m程先に、小学生がいました。道の真ん中に座り込んでいます。ランドセルが大きく見えます。まだ低学年の男の子のようです。
「あの子、まだ1年生じゃない?ちっちゃいのに、今帰りかしら」
「下校時間、とっくに過ぎてるよね」
男の子は、道の真ん中で、ランドセルのふたを開け、なにか探しているようでした。ももは、自分がすごくお姉さんになったような気がして、男の子の横に座り、声をかけました。
「ちょいと通りがかりのもんだけど、きみ、どうしたの?」
男の子は、無視していました。
「お家の鍵をなくしちゃった?」
ももは、自分の経験から想像して聞きましたが、男の子は、何も言いませんでした。
「お腹が痛くて、休んでるの?」
「何か、落としたとか?」
「道の端っこによけないと危ないよ?」
男の子に何を話しかけても、首を横に振るので、ももは、困ってしまいました。ゆうこちゃんは、最初立って見ていましたが、スカートを手で払い、一緒に地面に座ると、ちょっと強い調子で言いました。
「ねえ、きみ。口があるでしょ。口は何のためについているんだと思う?」
男の子は、ちょっとびっくりして、ゆうこちゃんのほうを見ました。ゆうこちゃんは、にっこりとして、ももの背中に手を当てて、言いました。
「このお姉ちゃんは、きみのことが心配なの。だからいろいろ質問しているのよ。」
男の子は、きっと口を結んで、怒っているようでした。ゆうこちゃんは、強い態度で言いました。
「わかったわ。じゃあ、きみがここで、車にひかれたって、お姉ちゃんたち、知らないから!」
「ほんとに、車が来たよ」
ももとゆうこちゃんは、土手のほうへよけました。男の子は、顔を真っ赤にしながらも、意地になっているのか、よけようとしませんでした。前方から、クラクションを鳴らす音がしました。
「んもう!ももちゃん、あの子のランドセルごとひっぱって!私は、足を持つから!」
「OK!」
男の子のからだを2人がかりで持ち上げて、土手のほうへ移動させました。
「車にひかれたら、死んじゃうのよ!死んだら生き返ったりしないのよ!」
男の子は、ついに泣き出してしまいました。
「なによ、泣くくらいなら、最初からよければいいんじゃない」
そう言ったゆうこちゃんの顔も真っ赤になっていました。男の子は、立ち上がると、そのまま、とぼとぼと歩き出しました。
「あの子、なにかあったのかな?家に帰りたくなかったりして・・・」
「そういえば、名札を見るの忘れちゃったわ。・・・どこの子かしら?ちゃんと家に帰るかしら?ごはんだってまだなのよね、きっと・・・」
ゆうこちゃんは、さっき買ったチョコレートの残りをバッグから出しました。
「これ、あの子にあげてくるわ」
ももは、なにもあげるものがありませんでした。ゆうこちゃんは、走って男の子に呼びかけました。
「ねえきみ!ちょっとストップ!」
男の子は、一瞬振り向くと、途端に走りだしました。また、怒られると思ったのです。
「待って!待ちなさいってば!」
こうなったら、ゆうこちゃんも、意地になって追いかけます。男の子は、人の家の畑の間をぬって、道なき道をどんどん行きます。
「あっ、あんなところに!」
男の子は、畑の終わりで、ランドセルを空中へ放り投げました。ランドセルは、石垣の上のフェンスを越えて、向こうに落ちました。男の子は、すばやく石垣とフェンスをよじ登ると、中へ消えてしまいました。
「あたしが行く!」
ももは、ゆうこちゃんを追い越して、男の子の後を追いました。
「あ、待って、ももちゃん!チョコレート!」
ゆうこちゃんも、ももの後を追って、ゆっくりと畑の中を進みました。

42
「うわ!ロッククライミングしなきゃ!」
男の子が乗り越えて行った石垣とフェンスは、3mの高さがありました。けれども、勇気さえあれば登れると、ももは思いました。
 まず、右手と左手で石をつかみ、足をかけ、体重をのせます。そして上を見て、またさらに上の石をつかみ、足がかりをみつけ、体重をかけます。その繰り返しで上へ上がっていけばいいのです。よいしょ、こらしょ、どっこらしょ。何回か繰り返して、やっとフェンスへ手が届きました。するとその瞬間、なにか生暖かいものが右手に触れました。
「きゃぁーーーーーーーーっ!」
「どうしたの!ももちゃん!大丈夫!?」
ゆうこちゃんは、この時、道路のほうへ周りこんでいたのですが、驚いて走って戻ってきました。
生暖かいものの正体は、犬でした。犬が近寄ってきてフェンス越しに、ももの手に鼻息をかけペロペロとなめたのでした。
「なんだもう、ああ、びっくりした~。ゆうこちゃ~ん、犬がいたのぅ」
「それってどんな驚きの犬よ?ももちゃん、今、もし大声大会に出場してたら、間違いなく優勝してたと思うわ」
ももは、おっかなびっくりの声をだしながら、フェンスの上まで登ると、ふーっっと息をつきました。
「よぉしよし!いいこいいこ。静かに静かに・・・」
犬をてなずけて、地面に降り立った時、ゆうこちゃんが、正面の門から、いかにも驚いた調子で入ってきました。
「大変よ!ももちゃん、今度は正真正銘、驚いちゃっていいわ!じつは、この家は、例の家だわよ、『お騒がせの家』」
ゆうこちゃんは、急いだあまり、変なことを言いましたが、ももにはちゃんと通じました。
「まじで!?」
正しくは、『幸せの家』です。でも、2人にとっては、それはこの際、どちらでもいいことでした。いつの間にか探していた家の場所に到達していたという驚きが、ちょっとした言葉を間違えた驚きよりも、数百倍も勝っていたのでした。

43「これが施設?」
ゆうこちゃんは、ももと一緒に並んで、家を見上げました。丸太でできたロッジ風の家は、素敵なつくりでした。小さな庭と池、そして階段の上がり口には、テリア犬の形の案内板があり、「welcome幸せの家」と書かれていました。
敷地内には、ブランコや滑り台やジャングルジムがありました。付近の土地より少し高台ですから、ジャングルジムのてっぺんに登ったら、街一帯が見渡せそうでした。
「こんなに可愛い家だったなんて」
ももは、ひめ子さんが住んでいた養護施設は、もっと暗くて陰気な家なのだと勝手に思っていました。でも、そうじゃなかったことに、少しずつ嬉しさがこみ上げてきました。
2人は、窓から家の中をのぞきこみました。見えたものは、カウンターテーブルでした。目線を手前へ戻すと、他にも木製のテーブルと椅子がありました。ここは、食堂なようでした。本棚やストーブもありました。
誰かが明るいほうへ出てくるのが見えました。さっきの男の子でした。お盆を持って、テーブルにつきました。どうやら、これから食事をするようでした。
「いたいた。あの子、これからお昼ごはんを食べるみたい」
ゆうこちゃんは、男の子を見ているうちに、少し落ち込んだ様子になりました。
「ねえ、ももちゃん、また日をあらためて、ここへ来てもいい?その時には、私ね、こんなチョコの余りじゃなくて、もっとちゃんとしたお菓子をあの子のためにたくさん持って来たいの」
ももは、ゆうこちゃんが男の子に対してどういう思いを抱いているのか、なんとなくわかりました。ゆうこちゃんは、続けて言いました。
「男の子を、喜ばせる作戦を考えたいわ。なにもかもぶっ飛んでいくくらいの」
「『幸せの家』潜入計画ってとこだね」
「それよそれ!何をどうやって持っていくかよね。いきなり理由もなく入っていくわけにもいかないし、どうすればいいかしら・・・?」
その時、ゆうこちゃんのお腹がが、きゅるきゅると鳴りました。
「今何時?なんだか小腹がすいてきちゃったわ。おはずかしいことね、ほほほ」
ゆうこちゃんは、わざとらしくお嬢様っぽく笑いました。
ふと見ると、近くを歩いていた親子が、歩きながら、わたあめを食べていました。照山もみじ祭りへ行った帰りのようです。
「公園でもみじ祭りやってるんだよね。行ってみない?」
「そうね」
2人は、照山古墳公園へ向かって、歩き始めました。


2007-11-22 14:46  nice!(1)  コメント(1)  トラックバック(0) 

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チャッピィー

こんばんは、チャッピィーと申します。
数日前は、ブログにご訪問頂き有り難う御座いました。
仕事も落ち着きやっとお礼に訪問出来ました・・・
お礼の挨拶遅くなった事を心よりお詫びいたします。
素敵な記事ですね・・・
此からも宜敷 お願いします。
by チャッピィー (2007-11-22 20:38) 

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