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銀河鉄道の夜 読解⑧ [銀河鉄道の夜を読み解く☆]

第八章 鳥を捕る人


< あらすじ >

ジョバンニ達は、いつの間にか、天の川の河原で鳥をつかまえて商売をしている「鳥捕り」の男が同じ車室にいることに気がつきます。
会話をかわすうちに、鳥捕りは、鷺(さぎ)をひらぺったく固めたものを、くれます。
食べてみれば、チョコレートよりおいしくて、
お菓子じゃないかといぶかしむ二人をよそに、鳥捕りは、天の川の河原へ鷺(さぎ)を捕まえにいきます。
その様子を車内から、すっかり見ていた二人は、またいつの間にやら、鳥捕りが車室に戻っていることに気がついて、あたりまえのようなあたりまえでないようなおかしさを、感じるのでした。


< この章の意味 >

鳥捕りとジョバンニたちの間で、たくさんの質問がかわされます。
それは主に鳥に関する話が多いのですが、話の大筋にかかわってくるのは、こちらの会話です。
始めのほうでは、

鳥捕り    「あなた方は、どちらへいらっしゃるんですか」
ジョバンニ  「どこまでも行くんです」
鳥捕り    「それはいいね。この汽車は、じっさい、どこまででも行きますぜ」
カムパネルラ「あなたはどこへ行くんです」

この時カムパネルラが、喧嘩のようにたずねましたので、ジョバンニや周りの人が思わず笑い出します。
どこに行くのかわからないことを、おちょくられたように感じる少年に対して、鳥捕りは、次で降りるのだと、普通に返事をしています。別段、笑うこともないというように。どこまででも行くのがあたりまえなように。

終わりのほうでは、

ジョバンニ  「どうして、あすこ(河原)から、いっぺんにここへ来たんですか」
鳥捕り    「どうしてって、来ようとしたから来たんです。ぜんたいあなた方は、どちらからおいでですか」
ジョバンニとカムパネルラは、思い出そうとしますが、答えることができません。
鳥捕り    「ああ、遠くからですね」
鳥捕りは、雑作なくうなずきます。

いっぺんに移動するのは、来ようとしたからなのであって、どうしてなんて理由は鳥捕りにはないのでした。同時に、どこから来たかも答えることができない二人のことを、やはり、それがあたりまえなことのように、うなずく鳥捕りという人。
あたりまえとあたりまえじゃないことを橋渡しする存在だといえます。

そして、鳥捕りは、「渡り鳥」をつかまえて、商売をしています。
この銀河鉄道の世界の「渡り鳥」は、天の川より出でて、天の川へと帰っていきます。
鷺(さぎ)、雁、鶴などの鳥達がそうです。
鳥達が、天の川の河原に舞い降りる瞬間に、つかまえて袋に入れますと、縮んで固まります。
それを食用として売るのです。
つかまえられなかった鳥も、天の川の河原に解けて同化して死んでいきます。
この世界の「鳥捕り」は、鉄砲で撃ちません。
「渡り鳥」が、旅を終えて、地に足がつく瞬間に、とらえるのです。
それは、死の瞬間を待つことです。
「渡り鳥」というのは、普通は旅の途中で、川辺や湖でえさをとって、休憩する性質があります。
そんなところが、人間に狙われやすいのです。
ですから、普通は、旅を終える前に、人間の食料になって、死ぬものもいるでしょう。
「天の川の渡り鳥」は、奇妙ですけれども、苦しみのない死に方をします。
その死の美しさは、食べられる悲しさに比肩します。

【 まとめ 】

ジョバンニとカムパネルラは、旅の始発も終着もわからないまま汽車に乗っているが、鳥捕りの話によれば、それは別段不思議なことではないようだ。銀河鉄道の旅は、渡り鳥のエピソードを織り交ぜて、幻想の世界をひた走っていく。
そこでは、死ですらも、美しくかたどられるのだ。


< 感想 >

私たち人間は、「鳥」を殺して、食べます。
宮沢賢治氏は、「鳥」に対しても、愛着がある人。
もしも、「鳥」が死ぬとき、苦しまずに美しく死んでくれるなら、救われるのにと思っていたかもしれません。
血を抜いて煮たり焼いたりするのではなくて、そのまますっとお菓子のように、なってくれたなら。
でも、もしお菓子になったなら、きっと彼は、食べないのかも知れません。
見ているとどうしても涙が出るので、仕方なく、やがては「鳥」を天の川へ返すのではないかと想像します。
悲しみと美しさと奇妙さが、死に行く鷺(さぎ)に対して鮮やかです。
このお話の印象があまりにも強いために、最初、読解のしようがないように思いました。
けれど、よく読んでみれば、やっぱり、深い意味がこめられていました。


2007-09-21 14:20  nice!(0) 
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