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銀河鉄道の夜 読解⑦ [銀河鉄道の夜を読み解く☆]

第七章 北十字とプリオシン海岸

汽車の中で、カムパネルラが言いました。
「おっかさんは、ぼくをゆるしてくださるだろうか」
ジョバンニは、びっくりしました。
カムパネルラは、泣き出したいのをこらえて、
「おっかさんにとってのほんとうの幸」について、問いかけるのでした。
やがて、銀河の河に、白い十字架が立った一つの島があるのが見えました。
どの人も、「ハレルヤ、ハレルヤ」とお祈りをしています。
思わずふたりとも立ち上がりました。
白鳥の停車場では、二十分の停車時間がありました。
改札口には誰もいません。
二人は、白い道を通って水晶の砂でできた河原へ来ました。
河原の小石は宝石でできていました。
プリオシン海岸では、人が何かを掘り出しているようでしたので、走って行ってみると、
大学士たちが、古代の獣の化石を掘り起こしている最中だったのでした。
地質調査をしていたのです。
話を聞いているうちに時間になり、ふたりは、風のように走って汽車に戻りました。

< この章の意味 >

二人の旅は続きます。
宮沢賢治氏の幻想世界が描き出されています。
プリオシンとは、鮮新世のことで、花巻の町はずれに化石が発見された川岸の地質時代のことを指しています。
前章では、電車の中から見た風景描写でした。光、風、波、空気、水、空、野原、花などの表現がありました。
この章では、島、土、水晶、黄玉(トパーズ)、水銀、瀬戸物、骨、岩、くるみ、地層といった大地にまつわるものが登場します。
実際に電車から降りて川床の土を触ってみると、きしきしとした感触がしたり、落ちていた黒いものを拾ってみると、くるみだったりするのです。
こんな幻想的な世界にも、天の川を研究している人たちがいて、熱心に作業を続けているのです。
幻想的な風景にも、歴史を証明しなくてはならない人達がいるということです。

< 感想 >

宮沢賢治氏は、「美しいもの」を、感覚的に表現して、幻想的な世界を生みだしました。
美しいという言葉は抽象的です。
ひとこと、「美しいものでした」と書けば、1行で終わってしまいます。
宮沢賢治氏は、「どのように美しいか」を、感じさせる文章をつくり、私たちの脳裏や心の内側に焼き付けることができる天才なのです。
銀河の水についてかかれた文章を引用させていただきます。
これを読んで、どう感じるでしょうか。

「ジョバンニは、走ってその渚に行って、水に手をひたしました。けれどもあやしいその銀河の水は、水素よりももっとすきとおっていたのです。それでもたしかに流れていたことは、二人の手首の、水にひたったとこが、少し水銀いろに浮いたように見え、その手首にぶっつかってできた波は、うつくしい燐光をあげて、ちらちらと燃えるようにみえたのでもわかりました」

今までこんな水に触ったことはないのにもかかわらず、想像の中で手を浸したように感じませんか。
私は、この文章が、とても好きです。





2007-09-16 10:26  nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

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