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さらさちゃんのぶつかりげいこ♪ [さらさちゃん♪水想録]

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最近、金魚たちが、ろ過機のシャワーの口をつついて、砂利に落とすようになりました。
成長して知恵も力もついてきた証拠・・・でも、それを落とされると、水の中に手を入れて直さなくてはならないので、みーちゃんは困ったなぁと思っていました。

「こりゃ、またおイタしたの?もう、だめでしょ~」

みーちゃんが、そでまくりをして、水底からシャワーの口を取り出します。

「こら、こそばゆいよ」

金魚のひれはワカメみたいなやわらかい感触ですが、口でつっつかれると、結構力があるのがわかります。

「よし、なおったよ」

金魚たちは、再び水が出てくるようになったので、あぶくの下をくぐりぬけて遊んでいました。
そこへ、みーちゃんが、ぼうしをかぶって、しゃがみ、水槽に近づきました。

「じゃあ、行ってきます」
「みーちゃん、またどっか行くの?」
「うん、温泉にね。あさってには帰ってくるから、いいこにね」
「エー!?じゃあ、ごはん抜き?アンド抜き?あさってまで?」
「でめちゃんもさらさちゃんも、だいぶ大きくなってきたし、ごはんは2日にいっぺんでも、だいじょうぶなのよ」
「だいじょうぶって?」
「たまには、デトックスになるわ」
「ナ二それ?」
「体内の毒素が出てきれいになれるの。美うろこ効果があるわよ、きっと」
「・・・」
黒出目金のでめちゃんは、難しいことを言われるのが好きなので、説明を聞いてうなずきましたが、和金のさらさちゃんは、不服そうに、ちらっと目くばせしました。
みーちゃんがドアを閉めて出かけた後も、金魚たちは、しばらくドアのほうを見つめていました。

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その晩・・・

「ねえ、でめ、お月さまだよ」

暗闇の中で、窓明かりに照らされた金魚たちが2匹、背中を並べて空を見上げています。

「みーちゃんもいまごろ、あたたかい水につかって、お月さまをながめているよ、きっと」
「ねえ、でめ。アタシ、ぶつかりげいこしたいんだケド?」
「え、いま?」

さらさちゃんが言う「ぶつかりげいこ」とは、ろ過機に体当たりする訓練のことをいいます。
でめちゃんは、顔も尾ひれもブンブン横にふりました。

「やめといて、さらさ!けいこして、ろ過機の口が取れたら、どうするの?みーちゃん、いないんだから」
「ウ~~~~~ン」

さらさちゃんが、、口の中に砂利をいっぱい入れて、ばっと吹くのを繰り返し、ろ過機のまわりをぐるぐるうろうろと泳ぎまわるので、でめちゃんはハラハラしっぱなしでした。

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次の日・・・

朝から金魚たちは、並んでお日さまがのぼるのを見ていました。
でめちゃんは、水槽の中をぐるりとひと泳ぎしてから、ゆっくりと砂利をつつきはじめます。

「ごはんもないのに」
「日課だから」

さらさちゃんは、最初、でめちゃんがムダな行動をしていると思っていたのですが、
でめちゃんの後に続いて、砂利をつつきはじめました。
すると・・・

「あれ、ごはんの残り、みーつけた!」

さらさちゃんが、そう言って、でめちゃんのほうを見ると、でめちゃんは、もうお昼寝していました。

さて、昼下がりです。
さらさちゃんは、体操をしたり、あぶくで遊んだり、砂利をつついたりしていたのですが、
とうとう飽きてしまい、下から上へいきおいよく泳いで、ちゃぽんと水音をたてました。
眠っていたでめちゃんが、胸ひれを動かしてあくびをしたので、さらさちゃんは、そばに泳いでいきました。

「そろそろ、ぶつかっても・・・?」
「ろ過機の口が落ちたら、息苦しくなるから、だめ」
「ならナイんじゃナイ?なるようになるんじゃナイ?」
「なるようになっても、いいことはないさ」

さらさちゃんは、ぶつかりげいこってそんなに、危険なものカナ?と思いました。

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その次の日は、朝からずっと雨がふっていました。
でめちゃんとさらさちゃんは、窓の外の様子が気になります。
柿の葉っぱが雨にゆれるのを見たり、鳥の叫び声に「ナニゴト?」と思ったり、窓に当たる雨粒を観察したりしていました。
あまり動くとスタミナ不足になるので、さらさちゃんもでめちゃんみたいに、お昼寝して過ごしました。

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その晩は夜通し風の音がぴゅーぴゅーとやまず、朝になっても、窓ガラスには、雨風がいっそう強く吹き付けていました。
黒雲のせいで、部屋の中はお昼になっても、暗くどんよりとしていました。

「・・・」
「・・・」

金魚たちは、並んで砂利の上に腰を下ろして、じっと玄関のほうを見つめています。
みーちゃんが帰ってくるのは、きっともうすぐ・・・。
2匹は、ずっとそのときを待ってるのでした。
すると・・・かすかな物音に気付いたさらさちゃんが、半分眠りをしていたでめちゃんに、顔を近づけて起こしました。

「みーちゃんの足音ダヨ」
「お帰り?」

ガチャ!

「!」
「!」

「ただいま~」
「お帰り~♪」
「お帰り~♪」

金魚たちは、浮き上がって、みーちゃんを出迎えました。

「あっ、偉いわね。おイタしなかったの?」

みーちゃんは、水槽の中の2匹の状態が元気なのを確認してから、さっそく、ごはんをぱらぱらとあげました。
さらさちゃんは、猛烈な勢いでごはんに飛びつき、でめちゃんも、一生懸命ぱくぱくと食べたのでした。

* * *

その後、みーちゃんがお風呂から上がり、リビングに戻って来たときには、ろ過機の口は、もう下に落っこちていました。

「あれっ、さっそくおイタ~?(笑)」

さらさちゃんは、ごはんを食べて元気一杯ぶつかりげいこ♪ でめちゃんは、何食わぬ顔で、せっせせっせと砂利をつついています。
2匹は、みーちゃんがいてこそ、安心しておイタができるのですね。


2016-01-08 11:19  nice!(4)  コメント(0) 
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