オナカスイタヨ♪ [さらさちゃん♪水想録]
「おはようみんな、元気なの?」
そうやって、金魚たちに、声をかけるのが、みーちゃんの日課でした。
和金のさらさちゃんは、臨戦態勢で、口を大きく開けて、立ち泳ぎをはじめています。
黒でめ金のでめちゃんは、起きたばかりのような様子で、ゆらゆらと浮かんでいます。
「ほら、ごはんだよぅ」
楽しいごはんの時間です。
どんどん食べていくさらさちゃんに対し、
でめちゃんは、なかなか、えさをとることができません。
「でめちゃん、ぶきっちょだなぁ、だいじょうぶかな。ほら、顔の前に落とすからね、食べて、ほら!あ~また後ろへ行っちゃった」
(あ~これで今日も、さらさちゃんが、でめちゃんの分も、食べちゃうね。けれど、お魚って、そんなに食事を与えない方がいいっていうし・・・まあ、だいじょうぶかな?)
でめちゃんは、黒いからだに大きな目、丸い胸ひれに優雅な尾ひれをしています。
翌朝、みーちゃんは、びっくりして叫んでしまいました。
「でめちゃん!どうしたの!?」
でめちゃんは、左へ右へななめになってふらふらと泳いでいるのでした。みーちゃんは驚いて、でめちゃんを、別の部屋(ピンク色のバケツ)に移しました。
「でめちゃん、大丈夫?なんか言って!」
「武士ハクワネド・・・」
するとその時、玄関のチャイムが鳴りました。成田くんが遊びに来たのです。
「よぅ、みー、どうした?」
「成田くんっ、あのね、見て!うちのでめちゃんの具合がおかしいの。この間から、ごはんもろくに食べなくてね、今日になって、斜めになっちゃったの!あああ、でめちゃんが死んじゃったらどうしよう・・・わーん」
すると、成田くんは、言いました。
「ん~、まあちょっと、落ち着きなって。俺は、金魚のことはわかんないけど、そいつ、もしかして、腹が減ってふらふらになってるんじゃ?」
「え、まさかっ」
「最近、えさの量、減らしてるって言ってたじゃん」
「それはそうだけどっ、そんな単純な」
「単純で悪かったな~」
みーちゃんは、試しにえさを幾粒か落としてみました。
すると・・・
ぱくっ
「あっ、食った」
ぱくっ ぱくっ
「おっ、また食った。やっぱ、腹が減っては戦はできねえってことだ、単純な奴だ」
「でめちゃん・・・そうだったの、ごめんね」
数時間後、でめちゃんは元気に泳ぐようになり、みーちゃんは、想いを新たにしました。
「あたし、いつも、このこたちの何を見ていたんだろう。病気のことばかり気にして、お腹がすいていたでめちゃんを放っておくだなんて」
「餓死寸前(笑)」
「なんで笑うの!」
「かわいそう過ぎて、笑っちゃうよな」
「もう!でも、本当かわいそう過ぎるよね、あ~」
「さて、俺らも、飯食いに行くよ」
腹が減っては戦はできぬ。金魚にとって、朝のご飯の時間は、戦いそのものなのかもしれませんね。
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