別天地へ行け 31 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
「ねえ、ケイ君、とにかく私は、居住区へ帰らなきゃ。あなたと一緒に、ずっとここにはいられないわ」
「それなら、僕も、行く。すぐに、旅の支度をするから待っていてくれる?」
「でも、急いでね。旅の支度なんて、私は、してこなかったわ。着の身着のままよ。父さんのマントも、途中でおいてきてしまったし・・。こんな遠くに来る予定なら、もっと、重装備をしてきたのにな」
「身軽な方が、動きやすくていいさ。・・・君の父さんて、どんな人?」
「優しくて、勇敢で、旅ばかりしていたわ。家には、たまにしか戻ってこなかった。旅のみやげ話が、どんな物語よりも、わくわくして、おもしろかった。けれどね、父さんは、もう死んじゃったから、会えないの。また、会って話したいわ。困った時には特に、父さんに、会いたくなるわ」
「ふうん。僕たち、ちょっと、似ているかも」
「そうかもね、父さんのことが、大好きだったところが似ていると、私も、思っていたところよ」
2人で話しているうちに、ケイの住んでいる、洞窟へ着いた。
「まあ!まるで居住区内みたい。どういうこと?ここは、もしかして、居住区内と繋がっているんじゃないかしら」
「残念だけど、行き止まりさ。このずっと奥で、僕は、薬草を栽培している」
「え!?こんな角切り石ばかりの洞窟で、育つの?」
「まあね!僕の薬草は、生育がよく、とっても丈夫なんだよ。織物にもなるし、食べても栄養がある。すりつぶして粉にすると、甘い不思議な成分で、人をよびよせてしまうから、使いようによっては、危険なものになってしまうだけで・・・」
「ケイ、あなたって、まだ子どもなのに、一人でこんなところで、薬草を育てていたなんて、すごいわね…寂しかった?」
「この子たちに話しかけているとね、寂しくなんてなくなるんだよ」
そう言って、ケイは、濃い緑色をした「この子たち」の葉っぱをなでるのだった。
「植物には、心がある。この子たちはさ、好きで人を栄養にしてるわけじゃないからね。養分を吸い上げる。そういうつくりになっているから、仕方ないのさ」
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