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別天地へ行け 30 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]

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30
少年の住む家へ行くことになった私たちは、歩きだした。二人の長い影が、前方にのびて、まるで、影のほうが、私達を、導いているみたいだった。
今は、何時なんだろう。あのキサマは狂い光りをしていたので、時間はわからなかった。振り向けば、巨大なキサマは、青白い炎をあげていた。ああ、なんだか、あれは、人魂のモニュメントのようだ。あのキサマはこれからも、ずっと、あんなふうに、光り続けるのだろうか・・・?

「そうだ、これを見て」 
少年は、腰に巻いてあるカバンから、小さな八面体の、薄緑色の石を取り出した。
「見て、ほら、触っていいよ」
大事そうに、手のひらの上に載せた。私は、その石を、親指と人差し指でそっと持ち、明るい向きへかざした。
「わあ、きれいな石ね」
「この石は、温かくすると、青く光るんだ」
「まあ、それじゃ、キサマに関するもの・・・?」
私は、ちょっと怖くなって、石を触る指の範囲を少なくした。
少年は、首を振って笑い、私から石を受け取って、誇らしげに言った。
「いや、これは、僕の宝物。父さんにもらったんだ」

少年が、笑った。はじめて見せてくれた笑顔はなんだか、とても胸にしみた。
「素敵ね。きれいに劈開でカットされてる」
「劈開で?」
「ええ、そうよ。ねえ、もう一度見せてちょうだい」
私は、手のひらを上に向けて、少年の八面体の石を見せてもらった。
「この石の名前は、蛍石ね。子供のころに、1度、触ったことがある。蛍石は六面体で出てくるのを、八面体にカットするの。ここいらの洞窟で取れる石だとすると、もしかしたらここは、蛍石採掘場の跡かしら」
少年は、考えた。
「それはわからない。父さんは、変わった鉱物を集めるのが趣味だったんだ。どんなところへも入って行ってしまうから僕は、怖かった。普通の人が、恐れて足を踏み入れない場所でも、少しでも身体が入る場所なら、入ってしまうのだから。父さんは、ある時、誰も入ったことがない危険な裂け目へ入って行ったんだ。無事に帰ってくるか心配したけど、その時は、ちゃんと帰ってきた。その時、僕、『父さんは勇気がある。誇らしく思う』って言ったんだ。そうしたら、『オレは、勇気があるんじゃなくて、無謀なだけだ』って言って、僕にこの石をくれたんだ」
「そうだったの」
少年は、続けて話し出した。
「だからこの石は、父さんの無謀さの証。でも僕にとっては、父さんの勇気の象徴。だけどね、しばらくして父さんは、帰らぬ人となった。水晶の洞窟を見つけたと行って出て行ったきり、戻ってこなかった・・・」
私は、自分の父さんのことを思い出した。どこへでも出かけて行った父さんのことを。
「あなたの父さんは、素晴らしく美しい魂の持ち主だったと思うわ。たとえ、死ぬことになったとしても、己の目的のために、果敢に挑んで行ったのですもの。大丈夫よ、きっとあなたも、立派な大人になれるわ。父さんの勇気を受け継いでいるはずよ」
私は、少年の背中を、手のひらで、バンと叩いた。なぜか、応援せずにはいられなかった。父さんがいない同士、頑張って生きていかなければならない。
「ありがとう・・・えっと、今呼ぼうと思ったけど、君の名前、まだ聞いていなかったね」
「私は、乃亜よ」
「そうか、乃亜。僕の名前は、ケイだ。よろしく」

少年は、これから、どうするのだろう?このまま、ここで、キサマとともに、生きていくつもりだろうか、それとも・・・?








2009-07-03 00:57  nice!(0)  コメント(0) 
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