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別天地へ行け 29 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]

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29
私は、言った。
「薬で、いくらでも、どうにでもできるって、どういうこと!?あなた、その意味が、本当にわかっているの?灯の元が、人間の命だというのなら、一体、人間は、何のために生きているの!?そんな問いかけを、あなた、自分にしてごらんなさいよ!あなただって、人間なのよ。子どもだからって、私は許さない」

「僕はね、闇の中で生きてきた。ここでは大人も子どもも関係ない。知恵ある者が生き残る。何をしたって、灯をともさなければ、闇の中でもみ消される」

「あなたが、していることは、人殺しよ!」

「殺しているわけじゃない!人が勝手に飛び込んで行くんだ!灯が必要なのは、人間も植物も一緒じゃないか。人間は、土からできる植物を、食べるよね。だったら逆に、植物が、人間を食べたら、どうしていけないの?」

「・・・それは、神様が、世の中を、そういう風におつくりになっているから、だわ」

少年の言っていることは、これまで、私が一度も考えたことのないことだった。植物が人間を食べるだなんて。

「君は、知らないだろう?、人は今、地獄の大渓谷に、好んでやって来るんだよ。そして、身を投げていく・・・。そんなやつらを、僕は、とめない。 
薬なんか・・・、つらい奴らが勝手に飲むんだ。そこらじゅうにあるだろう?いつでも飲める。あれをやると、馬鹿になって、ラクに、生きていける。でもみんな、すぐに死にたくなるんだ」
「あなたも、薬を飲むの?」
「僕?」
少年は、少し考えてから言った。
「薬をやったら、クセになる。だんだん量が増えて・・・生きていても、死んでいるのと同じになるんだ。そうなってしまったら、本当に僕が僕であるかどうかさえ、僕自身にも判断ができなくなる。そんなのは嫌だから・・・僕は、飲まない」

「そう」
少年の言葉を聞いて、私は、胸をなでおろした。

「闇の中でうごめくだけの、あわれな大人にはなりたくない!でも、このままだと、僕は、そうなるかもしれない。暗がりで一人で生きていくのはもう嫌だ。死んでいく人を見るのも・・・。もっと灯を感じたい。明るくて素晴らしい場所が、この世界のどこかに、きっとあると思うんだ」

少年が、私に近づいた。

「君を困らせたよ。ごめん。すぐ解放するから・・・」

そう言うと少年は、桶に入ったドロドロしたものを、キサマの根元に流しかけた。

「さあ、今のうちに、身体を離すよ、そら!」

少年が身体を引っ張ると、キサマの密着力が弱まり、私の身体は、すっと涼しく、気分がよくなった。

「ふー、やっと動けるわ」
 
私は、解放感から、思わず、手足を振りまわした。

「君、キサマから、生気を吸われても、そうやって元気にしていられるのかい?すごいな」


2009-06-30 23:12  nice!(0)  コメント(0) 
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