雨の音♪ [さらさちゃん♪水想録]
外は雨。
お部屋の中は、薄暗く、雨の音が響いています。
今日は、ボーイフレンドの成田くんが、遊びにきていました。
みーちゃんは、水槽の中のさらさちゃん達を紹介しようかどうしようか、考えていました。
というのは、成田くんが、お魚に興味があるかどうかわからなかったからです。
もし、さらさちゃん達を紹介して、変な顔されたらどうしよう・・・?
そう思うと、うまく切り出せなかったのでした。
「みー、金魚飼ってんだ。でけぇ水槽!」
テーブルについてコーラを飲んでいた成田くんが、ふいに言いました。
みーちゃんは、彼が金魚に興味を示してくれたことに嬉しくなり、やっぱりさらさちゃん達を紹介しようと思いました。
「そうなの!金魚ってね、すごくなついて、可愛いの。おいでおいで~なぁんて、へへへ」
「まじで!?」
成田くんは、立ち上がって水槽の前まで行って、腰をかがめました。
小赤のさらさちゃんと、黒でめ金のでめちゃんは、眠っているように水中に浮かんでいました。
みーちゃんは、どきどきして、その様子を見守っていました。
すると、成田くんが、水槽から目を離さずに、ちょっと眉をひそめました。
「ん!?何だお前ら、やけに俺をじっと見て?」
みーちゃんは、笑いました。
「うちの子達、ほんとにいつも、こっちばかり見てるから。ほら、さらさちゃん、でめちゃん、成田くんですよ~」
「ははははっ、金魚に、名前つけてんの!?」
みーちゃんは、いけないっと思いました。
金魚に名前をつけているなんて、そんなマニアックな女の子を、成田くんは、どう思うだろう?
嫌いにならないだろうか。
ついうっかり、いつもみたいに、名前を呼んじゃったけど・・・。
外は、どしゃぶりの雨。
家の中にいても、水槽の濾過器のぶくぶくの音が、かき消されてしまうほどの、ものすごい降りです。
みーちゃんは、気がつきました。
「お魚達、今日はおとなしい。この時間ならね、いつもはもっと、泳ぎまわるはずなの。あぁ、眠ってるみたいだわ」
「人間と一緒で、雨降ってると、憂鬱になるんじゃねー?」
「あ、そうかも知れないね」
ますますひどくなる雨の音に、話し声さえ、聞こえなくなりそうでした。
部屋の中は、まるで、水槽になってしまったように、ひんやりとして感じられました。
「お魚達は、きっと、雨の音を聞いているのかも知れない」
「まるで、魚になった気分だなぁ」
みーちゃんと成田くんは、寄り添いながら、昼寝しているお魚達を、眺めるのでした。
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