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ももシリーズ 69 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]

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69
松平くんとゆうこちゃんは、用務員室のドアをノックしました。
「こんにちは」
返事がないので、そっとドアを開けました。
用務員のおじさんは、とても小さな部屋の畳の上で、お茶をすすっていました。
「用務員のおじさん、こんにちは」
大きな声で、もう一度、あいさつをしました。
用務員のおじさんは、まっすぐ前を向いたまま、両手でお茶碗を持って、石像のように固まって動きません。
松平くんが、言いました。
「シカトじゃないっすよね」
「わたしが話しかけるわ」
ゆうこちゃんは、用務員のおじさんの前にまわって、話しかけました。
「用務員サン」
その時、松平くんは、ゆうこちゃんの周りに花びらが舞っているように見えて、目をこすりました。
「用務員サン、うちのクラスが、焼きいもを作ってるの。おじさんに、火を見ててもらいたいんです。いいでしょう?」
用務員さんは、ちょっと頬がポッとなり、われに返りました。
「これはこれは、麗しの姫君・・・。ああ、君たち、ごめんよう。おじさんは、夢を見ていたんだ」
「お話、進みました?」
ゆうこちゃんが聞くと、用務員のおじさんは、しーっと言いました。
「だめだめ!おじさんをからかっちゃ。お話進みましたとは!おーっ!そこの6の3の級長くん、おじさんが、童話を書いてるなんてこと、誰にも触れて回んないでね!このことを知ってるのは、図書室の先生と、倉沢さんしか、いないんだからね、いや困ったことになったぞ」
用務員のおじさんは、両手で頭をかかえてしまいました。
すると、ゆうこちゃんが、松平くんに、耳打ちしました。
「あとね、ももちゃんも知ってるの」
用務員のおじさんは、ひとしきりじたばたした後、お茶を片付けたらすぐに行くよ、と請合ってくれたのでした。2人は、用務員さんの部屋を出ました。
「なんつーか、大人げないおやじだな」
松平くんが、ため息をつきました。
「子供に言われちゃおしまいって感じだわね。でもね、わたしは、用務員さんて、近づきやすくて大好きなの」
「ふーん」
「興味なしって返事でしょ」
「まあね」
「マツケンって、何に興味があるの?」
「そんなこと聞いてどうすんの」
「みんなが、マツケンのこと、どう言ってるかとか、気にならない?」
「べつに」
「はぁーーーっ、もう!」
ゆうこちゃんは、なんだかイライラしてきました。
そんなゆうこちゃんに対して松平くんは、言いました。
「ってか、倉沢、なんか、いつもつっかかってくるでしょ、俺に。俺、正直そういうの疲れちゃって」
「わたしだって、マツケンのことなんて、興味なんかないわよ」
ゆうこちゃんは、言い返そうと思って、やめました。
そして、自分のこころが本当はマツケンに何を聞きたいのか、ちゃんと整理しようと思いました。
「マツケンが、ももちゃんと仲がいいのが、気になるの。わたしが、塾へ行っている間に、2人がどんどん仲良くなっちゃったでしょう。マツケンは、女の子なんか興味ないって思ってたから」
松平くんは、ゆうこちゃんが急にしおらしくなり、おそらくは本心であろうことを話し始めたので、面食らいました。
「・・・え~っと」
ゆうこちゃんは、松平くんからどんな言葉が出てくるのかと思い、待ちました。
「倉沢!ハマーがさ、おまえに会いたがってんだけど、見舞い行くだろ?」
「えっ?」
急に、浜口くんの名前が出てきて、ゆうこちゃんは、動揺してしまいました。
「浜口のことなんて、今関係ないでしょ」
「関係ないことないよ、てか、俺にとっては、めちゃめちゃ重要だし」
ゆうこちゃんは、話をそらされたことに、腹を立てました。
「わたし、先にいく」
これでは、先ほどとは形勢逆転です。
ゆうこちゃんは、松平くんに、一本とられてしまったようです。




2008-03-11 23:56  nice!(0)  コメント(0) 
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