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別天地へ行け 20 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]

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20
こう何度も意識を失うと、今がいつで、自分が何をしているのかの記憶がだんだんと薄れてくる。
私が今、かろうじてわかることは、自分が今、地面にころがっているということと、川の流れるせせらぎの音が聞こえてくること、そして、さっきから、体のあちこちに痛みが走っているということ、この3つだった。
私は、ゆっくりと目を開けた。
あたりには、青白く光る岩石の世界が広がっていた。
ここは、場所は狭くない。
岩石だらけの広場だ。
さっき見た広場よりも、ずっと広い。
洞窟の中でもかなり奥のほうだろう、少し空気が薄い感じがする。
空気はどっちへ流れているのだろうか?
わたしは、指につばをつけて、気流を確かめた。
大丈夫、気流はある。
きっと上下に空気孔の抜け道があるはずだ。

天井にある大きな丸い灯が、今の時間が、『満月』であることを示している。
私は、上体を起こした。
あたりを眺め回して、同じように地面に寝ている女性達が、何人もいることを知った。
ここは、さっきのあの明るすぎる場所ではないようだ。
つい今しがた、動く部屋の中で毒を飲もうとした少女も、無表情で歩く人影も、どこからか聞こえてきたのかわからない声だけの男も、なにもかも、消え去っていた。
そういえば、今思うと、彼らは、まるで違っていた。
同じようには見えるけれど、なにかがまるでおかしかった。
生気が感じられず、ただ生きているだけのような、亡霊のような人たちだったのだもの。
 
そうだわ。
私、麻薬のビンの匂いをかいでしまってから、夢を見ていたんだ。
そう気がついてから、はっとした。
じゃあ、私は、眠っているうちに、ここへ運び込まれたのだわ。
マナさんの身代わりとして。
彼らが、首長とよんでいた者のところへ。
どこからか、煙が流れてきた。
マスクをした男達が、数人やってきて、広場の祭壇上の石の机のような場所に毛皮を敷いている。

「まもなく、首長が来る。さあ、皆の者、川で身を清め、宝珠を身につけなさい」

祭壇の上の石のテーブルに、輝く宝珠が置かれた。
それは、大きな首飾りに仕立ててあった。
私は、小川に入った。
水をかぶったら、だいぶ気持ちがすっきりとした。顔を拭いていると、隣にいた女性に声をかけられた。

「あんたのこと、はじめて見るだぁよ?」

私は、本当のことを言った。

「私、実は、マナさんというひとの、身代わりで来たんです」

「あぃや~、かわいそうに。身代わりだなんて・・・。あんた大人っぽく見えるけど、かなり若いだぁね。マナさんという人も、かわいそうな。首長の気に入りになると、暮らしは楽になるけんど・・・病気であろうがなんだろうが、無理やり連れてこられるのだぁもんな」

すると、その言葉を静止するように、もう一人の女性が言った。

「首長は、弱弱しくておとなしい人が好みなんさ」
「それって、とんでもなくいい方に考えればなぁ」
「病気がちなひとばかり、いつの間にか、集まるのなぁ」
「家に閉じこもっとるとこを、襲ってくるんだぁよ!」

私は、彼女たちみんなに話を聞いた。

「みなさん、何回くらい来ているんですか?」
女性たちは、ぽかんと首をかしげていた。その中の一人の女性が、こたえてくれた。

「ここにいるあたしらは、そんなに多くはないけんどね、それでも、両の手と両の足の指を足しても足りないくらいは、来てるな」

「あの、ここで行われていることは、求愛ですよね?私、それは、わかってるんですけど。皆さん、首長といつかは、結婚したいって思っているんですか?」

彼女たちは、顔を見合わせて、くすくす笑った。

「あたしらは・・・子供を生むために呼ばれてるんじゃないんだぁよ、あんた」
「そうだぁよ!求愛とかなんとか・・・。育ちがいい子は、学校で何を習ってきているのか知んないけんどさ、あたしらは、ただの、首長の土偶だぁよ。快楽のためのさ」


2008-03-05 17:05  nice!(1)  コメント(0) 
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