別天地へ行け 12 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]
12
家を出ると、外気が冷たかった。
私は、帽子を深くかぶり、マントの前紐を結んで、人声のするほうへ近づいた。
マナさんを連れた男たちは、ボロボロの薄いシャツと半ズボンを身にまとっている。
やっぱりおかしい。母さんの言った通りだ。保健局の人間はあんな格好はしない。
そして、人声がはっきりと聞こえてきた。
「騒いだって誰も助けちゃくれねえ、静かに着いてくるだ」
「どうか、どうかお許しを。私は、胸をわずらっています。発作が出ると、死んでしまいます」
「ばかいうでねえ!おいら達だって、おまえを連れて行かなきゃ、大変なめにあうだ」
乱れた足音と、男の声とマナさんの声がかわるがわる聞こえた。
「観念しろ」
「静かにするんだ。そうすりゃ、乱暴しねえだよ」
「お願いです・・・助けてください」
マナさんが連れて行かれようとしているのがこの先だとすれば、横穴しかない。
横穴から先は、居住区外だ。
いつの間にか、大勢の男たちがマナさんを台車に乗せようと待っていた。
私は、衝撃を受けた。
(居住区外へ行く気なの?マナさんを連れて?)
居住区外は、どういうところか・・・。
子供の頃から、絶対に近づいてはいけないといわれている世界には、何があるかわからない。
男たちが、マナさんを抱えあげて、台車へ乗せてしまった。
「待って!」
私は、反射的に叫んでいた。
「あ?」
「なんだおまえ?」
「着いてきただか?」
「マナさんをどうするの?」
男たちのにやけた顔には、うつろなおろおろとした表情が浮かんだ。
「どこへってそりゃあ、横穴の向こうさ」
「へっへっへっ」
「すぐ向こうさ。あんたも着いてくればいい」
男の一人が近づいて、私の腕を引っ張った。その時、マナさんが、悲鳴をあげた。
「だめよーーー!!!、来てはダメ・・・乃亜ちゃっ・・」
マナさんは、こちらへ伸ばした手をもがくようにして胸の前に持ってくると、そのまま台車から転げ落ちてしまった。
私は、男の手を振り放して、マナさんのもとへ駆け寄って助け起こした。マナさんは、青白い顔色で胸を抑えている。息が激しく乱れている。
「マナさん、大丈夫ですか!?皆さん、この人は病気なんです。早く病院へ連れて行ってください!」
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