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別天地へ行け 父さんからの手紙 [乃亜シリーズ♪(混沌的原案)]


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愛する乃亜へ

 君は、今、どんな気持ちで、この手紙を見ているだろう。もしかすると、うらんでいやしないだろうか。そうでないことを祈る。君の住んでいる世界は、まだ正常だろうか。これから父さんが書き記すことを、よく読んで欲しい。
 父さんは、子供の頃、土捜しの仕事をしていた時に、大きな石版のかけらを見つけた。かけらはいくつも出土して、組み合わせると、文章が浮かび上がった。それは読めない文字の羅列だった。周囲の大人はそれを、必要のない土くれだから捨てなさいと言ったが、父さんは、大事な宝物としてとっておいた。時々取り出しては、見たこともない文字が並んでいるのを眺めていた。不思議で刺激的だった。
 それから、猛勉強を始めた。石版の文字をどうしても解読したい一心でね。高校へあがるころには、書かれていた文字を読みこなせるようになっていた。
 石版の文字は、まぎれもなく古代文字で書いてあった。古代の人たちが、残してくれた遺物だったんだ。書いてある内容については、あまりにも荒唐無稽で、周りの人に話せば話すほど、気違い扱いされたが、父さんは、石版に書かれていたことが、真実かどうか確かめたかった。
 父さんは学者になり、旅に出た。各地で出土した石版を集めてまわった。びっくりしたことに地下世界は、どこまでも続く迷路のような世界だった。灯りの届かない場所もあった。たいまつの灯りを頼りにして進んだが、とてもまわりきれるものではなかった。いいかい、それほど地下世界は複雑な構造になっている。
 思えば不思議だね。ヒサマもキサマも、どうして光るのか、誰も道理がわからないんだ。学者たちが研究しているが、父さんはね、その謎は、この地下世界にいる限りは、わからないと思っている。
 君の住んでいる世界は、おかしくなってきている。人口が減る一方だ。政府は、子供をたくさんつくらせることを奨励しているけれど、それはどうしてだと思う?人口の減少を防ぐためなんだよ。その弊害として、血縁者同士の結びつきが多くなってきている。それは、人類にとってとても危険なことだ。乃亜が大人になる頃には、世界は滅亡の兆候を帯びてくるはずだ。
 誰かが、地上へ行き、未来に光をともさなければならないんだ。父さんは、悔しい。当然、自分がその役目を負うはずだと思っていたのに、この様だ。君が手紙を読む頃には、死んでいるのだからね。
 乃亜は、父さんのことを大好きでいてくれたね。乃亜がもし、父さんのこの手紙の内容を読んで、理解してくれたなら、どうか、地上という名の別天地をめざしてほしい。君は、探究心旺盛な子だ。父さんは、幼い時分から君の未来の姿を、夢みていた。父さんは、乃亜に、世界を救う人になってほしい。
 親の身勝手と笑うだろうか。石版に書かれていた内容と地下世界の地図は、神棚の後ろにしまってある。もし決心がついたなら、開けて読んでみて欲しい。父さんはいつでも、乃亜の最高の幸福を祈っている。そして、母さんのことを、いつまでも大事にしてやって欲しいと思う。
 最後に、こんなに早くにいなくなってしまった父さんを、許してもらえることを切に願って、筆をおく。
                                        2314年 1月23日 父さんより


2008-01-23 01:29  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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