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ももシリーズ 61 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


61
放課後、ももとゆうこちゃんが、教室で帰り支度をしている間に、松平くんは、他の男子達と一緒に、いなくなってしまいました。
「あ、松平くん、先帰っちゃった?」
気がついたももが、追いかけると、また男子達が冷やかしにかかりました。
「マツケン、カノジョ、カノジョ!」
「違うわ!おまえら~~!なに!」
振り向いた松平くんが、とても怖い顔だったので、ももは、ちょっと言葉を失いました。
「えっと、えっと」
松平くんは、ももが、戸惑った表情をしているのに構わず言いました。
「用がなければ行くけど?」
「今日一緒に・・・ううん、なんでもないよ。ばいばい」
さっき、放課後一緒に話そうと言った事を、松平くんは聞いてなかったのかなとあきらめて、ももは、松平くん達を見送りました。
「ちょっとさ、あいつ、やっぱりムカつくわ、私」
後ろから見ていたゆうこちゃんが、怒って言いました。
「ももちゃんが、あいつのどこが好きなのかわからないわ」
ももは、すこし心に痛みを覚えました。
「好きって、その好きっていうのは、恋人とかっていう意味?」
「彼氏にするには、もっと優しい人を選ぶべきよ、絶対!」
ももとゆうこちゃんは、階段を降りて、昇降口に向かいました。
「松平くんが彼氏?それは、ありえないよ。お互いに、そんな意味で好きになるはずがないもん」
「どうして?」
「うんと、それは・・・」
どうしてそう言えるのか、ももは考えました。
「本当に好きな人なら、駆落ちをしてもいいって思えるものだと思うから」
ゆうこちゃんが、はっとした感じでももを見つめました。
「ももちゃん、それはもし、逆にマツケンとの恋が周りに認められなかったら、駆落ちをしてもいいということ?」
「ううん、そうじゃなくて」
ももは、小学生のときに高校生と駆落ち事件を起こしたひめ子さんの話に、ことさら憧れてしまっていたのでした。
「でもちょっとは好きなんでしょ?」
「う~ん」
ももは、だんだん、頭の中がごちゃごちゃとしてきました。
「あたし、わからない。ごめんね、ゆうこちゃん。マツケンのことは、好きと嫌いとその中間があったら、きっとその中間なんだと思う。はっきりしない気持ちっていうか。あたしとは、だいぶ性格も違うから、分かり合えないところも多いような気がして。でも、だから、話していて楽しいのかもしれない」
学校の門を出て、ひまわり屋の前で、2人はさらに話しました。
「ごめんね、私こそ、なに熱くなってるのかしら・・・?ももちゃんが、私の知らないところで、急に大人になっちゃった気がして、焦っちゃったんだわ、きっと。考えてみれば私達、来年は中学生だもんね。恋のひとつやふたつで、わぁわぁ言うのも、子供だわよね」
「恋かぁ。ゆうこちゃんは、好きな人いないの?」
「私、理想の人はいるの」
「だれ?」
「ナラ王様」
「えっ、王様?なに王様?」
「マハーバーラタっていうインドの物語に出てくる王様なの」
「読んだことないや」
「今度貸したげるね。王様、騙されちゃうんだけどね、すっごく素敵なの」
「むずかくない?」
「そんなことないない」
「そうだ、ゆうこちゃんに話そうと思ったことあったのに、また話が脱線しちゃったね。まだ、時間大丈夫?」
ゆうこちゃんは、ひまわり屋の柱時計を見ました。
「うん平気」
「土曜の午後ね、ゆうこちゃんと別れてから、あたし、忘れ物を取りに戻ったの。そしたら、公園で松平くんに偶然会ったんだ。浜口くんが怪我したことを聞いて、救急車が来るまであたしも待っていたの。浜口くんは、案外元気そうにしゃべっていたけど、足にひどい怪我をしていて・・・。えっと、川原の大きな石に足がはさまってしまったんだって。痛そうだったよ」
「痛た、想像しただけで痛いわ。かわいそうに!ドジしちゃったのね。早く治るといいわね。浜口がいないと、教室がしーんとなることが多いって、今日思っちゃった。いつ退院するのかな」
「松葉づえで歩けるようになったら、登校したいって言ってた。みんなで、浜口くんとこへ、お見舞いに行って元気付けたら喜ぶかも」
「そうね。でも大勢で押しかけて、迷惑にならないかしら」
「浜口くん、ゆうこちゃんにお見舞いに来て欲しいって言ってたよ」
「ちょっと待って!ゆうこちゃんにって・・・。なんでそんなこと言ったの、あの子!」
ゆうこちゃんが、突然大きな声を出したので、ももは、軽く飛び上がりました。
「わっ、びっくりした!なんでかってか、来て欲しいと思ったからだと思うよ?」
「もっと、正確な感じには?何て言ってたの?」
「えっと思い出すと、『倉沢に会えなくなる、お見舞い希望』だったかな?」
「私、行かないわ。お見舞いなんて」
ゆうこちゃんはそう言うと、黙ってしまいました。


2008-01-15 01:17  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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