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ももシリーズ 56 [照山小6年3組 ももシリーズ♪]


56
「おにいちゃん、気がついてたの」
「俺ぁ、猫がにゃあと言っただけで、起きちゃうからね。誰かが、そっと階段を上がったり下りたりすれば、わかるのさ」
得意気に言うおにいちゃんは、気配を消す達人で、みんなで居間でテレビを観ているとき、いつの間にかいなくなっても、誰も気がつかないのです。
「昨日、公園にかばんを忘れてきたのを、取りにいってきただけだよ。心配かけちゃってごめんね、おにいちゃん。あたしも、おにいちゃんみたく忍者みたいに気配消せたらよかったのにな。おんなじ血が流れているから、いつかは消せるよね?」
「修行が足りないな、ま~だまだだ。忍者の修行は、まずは朝飯から始まる。ほれ、飯、食べに行くぞっ」
 おにいちゃんと一緒に、1階へ降りるとお父さんは、新聞を読み、お母さんは、おみそ汁をよそっていました。
「ももちゃん、はい、それそこへ持っていって。ももちゃんのだから」
「うん」
「じゃあ、いただきます」
お父さんは、新聞をたたむと、ももに言いました。
「もも、今日はみんなで一緒に、お祭りに行って帰りにラーメンを食べようかって話しているんだ。どうだ?」
「いいねぇ。ラーメン食べたい」
お父さんは、今朝、ももが無断外出したことを、知っているはずなのに、あえてそのことを、食卓で話す事はしませんでした。
 ももにはお父さんが、口には出さなくても、自分のことを心配してくれていることが、なんとなくわかりました。いきなり問い詰めたりしないで、遠まわしにおにいちゃんに聞くという思慮深さが、お父さんらしい行動様式なのです。
 そうなってくると逆に、でかけたのにでかけなかったふりをすることに、罪悪感を覚えてしまうももなのでした。
 ももは、朝ごはんの後、お父さんに、今朝の外出のことを、そっと伝えました。
すると、お父さんは言いました。
「今度から、そういうことはしちゃだめだ。ちゃんと本当のことを言えない程、お父さんとお母さんのことが、信用できないかい?」
ももは、お父さんとお母さんに、忘れ物ばかりする自分をがっかりされたくなかったことを話しました。お父さんは、なあんだといった感じで、
「まあ、ちょっとくらい忘れ物が多いからって、それほど気に病むことじゃないぞ。お父さんなんて、一昨日、パジャマのズボンの上に背広のズボンをはいて、会社へ行っちゃってなあ、はっはっは!おっちょこちょいだろう?まあ、おっちょこちょいでも、忘れ物の王者でも、自分ひとりで困った参った!と思うだけならまだいいんだぞ。問題は、人に迷惑をかけなかったかどうかだ。人様に迷惑をかけるようなことは、しないようにするのが、大事だぞ。まあそれにしてもなあ、ひとつのことに集中すると他のことが見えなくなるところは、ももは、お父さんとよく似てるなあ。まあ、お母さんが心配するのは、極端なところもあるけれども、家族を思うあまりのことなんだなあ。それもまた、心配されたほうはたまらないが、素晴らしいことなんだなあ」
 隠し事をすることは、信頼を裏切ることになりかねません。小さな誤魔化しや嘘をつかなくてはならない理由がももにあったことを、お父さんは重視してくれたのでした。
 もものお父さんは、怒ると怖いけれど、むやみやたらと怒る人ではないのです。ですが一たび道理に合わないことをした場合には、徹底的に断固として、叱る人なのです。


2007-12-30 19:38  nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
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