one road~深い穴の淵から [詩と文学♪]
「僕は今、大きくて深い穴の淵を歩いている。暗い穴の底をのぞくと落ちてしまいそうだから、なるべく見ないようにしているよ」
「気をつけて。穴を見ないで歩いていては、足を踏み外してしまうじゃないか」
「他に道はないんだ」
「それならば、怖がって、穴を見ないのではなくて、きちんと穴を見たまえ。穴を怖がってしまう己の心の弱さを見つめ、克服したまえ」
「そうだね。だが、そうとばかりも言えない。穴の中には、僕の心以上に、無視できないものがある・・・それは、暗い穴の底から伸びてくる手なんだ。暗い穴の中に、誰かがいて、僕を呼んでいるんだ」
「暗い穴の底から伸びてくる手とは、一体、誰の手なんだ?」
「悪意がある人か、あるいは、苦しんでいる人の手か・・・それは判別できない」
「穴の中はどうなっているんだ?」
「わからない。でも、きっと、今の僕では、その手を引っ張り上げることはできない。穴のふちから、元気づける余裕もない。だからその手を無視している。存在を感じ、見つめてしまったら最期、一緒に穴の中で苦しむことになりそうな気がして、恐ろしいのかもしれない」
「穴の中にいる誰かは、ずっと底にいたいのか?上に上がりたいのか?」
「わからない。ただ、存在を感じると、胸が苦しくなるんだ」
「それは一人で抱えることができない問題だ。大きくて深い穴を見渡すのも、分担してやれば怖くない。一人より二人、仲間と手を取り合って歩むほうがいい。だがもし、それが許されない状況だと言うのなら・・・」
「わかった」
「気がついたかい」
「勇気を持って進んでいけばいい」
「You can do it! やればできるさ。勇気はいつだって君のそばにあるんだ!」
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