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銀河鉄道の夜 読解③ [銀河鉄道の夜を読み解く☆]

銀河鉄道の夜 宮沢賢治 著

第三章 家

<あらすじ>
ジョバンニが家へ帰ると、母親が、入り口に近い部屋で休んでいました。
ジョバンニは、姉さんがこしらえてくれたトマトの食事を、
ひとりで先に食べながら、お母さんと、話をします。
その後、お母さんのために、牛乳をとりに行こうと、家を出ることになります。

<この章の役割について>
会話の中で、たくさんのことがわかります。以下は、ジョバンニとお母さんの会話です。
ジ=ジョバンニ  母=お母さん

ジ 「お母さん、いま帰ったよ。ぐあい悪くなかったの」
母 「ああ、ジョバンニ、お仕事がひどかったろう。今日は涼しくてね。わたしはずうっとぐあいがいいよ」
ジ 「お母さん、今日は角砂糖を買ってきたよ。牛乳に入れてあげようと思って」
母 「ああ、お前さきにおあがり。あたしはまだほしくないんだから」
ジ 「お母さん。姉さんはいつ帰ったの」
母 「ああ、三時ころ帰ったよ。みんなそこらをしてくれてね」
ジ 「お母さんの牛乳は来ていないんだろうか」
母 「こなかったろうかねえ」
ジ 「ぼく行ってとって来よう」
母 「ああ、あたしはゆっくりでいいんだからお前さきにおあがり、姉さんがね、トマトで何かこしらえてそこへ置いて行ったよ。
ジ 「ではぼく食べよう」
ジ 「ねえお母さん。ぼくお父さんはきっともうまもなく帰ってくると思うよ」
母 「ああ、あたしもそう思う。けれどもおまえはどうしてそう思うの」
ジ 「だって今朝の新聞に今年は北の方の猟はたいへんよかったと書いてあったよ」
母 「ああだけどねえ、お父さんは猟へでていないかもしれない」
ジ 「きっと出ているよ。お父さんが監獄へはいるようなそんな悪いことをしたはずがないんだ。この前お父さんが持ってきて学校へ寄贈した巨きな蟹の甲らだのとなかいの角だの今だってみんな標本室にあるんだ。六年生なんか授業のとき先生がかわるがわる教室へ持って行くよ。」
母 「お父さんはこの次はおまえにラッコの上着をもってくるといったねえ」
ジ 「みんながぼくにあうとそれを言うよ。ひやかすように言うんだ。」
母 「おまえに悪口を言うの」
ジ 「うん、けれどもカムパネルラなんか決して言わない。カムパネルラはみんながそんなことを言うときはきのどくそうにしているよ」
母 「カムパネルラのお父さんとうちのお父さんとは、ちょうどおまえたちのように小さいときからのお友達だったそうだよ」
ジ 「ああだからお父さんはぼくをつれてカムパネルラのうちへも連れて行ったよ。あのころはよかったなあ。ぼくは学校から帰る途中たびたびカムパネルラのうちに寄った。カムパネルラのうちにはアルコールランプで走る汽車があったんだ。
レールを七つ組み合わせるとまるくなってそれに電柱や信号標もついていて信号標のあかりは汽車が通るときだけ青くなるようになっていたんだ。いつかアルコールがなくなったとき石油をつかったら、缶がすっかりすすけたよ」
母 「そうかねえ」
ジ 「いまも毎朝新聞をまわしに行くよ。けれどもいつでも家じゅうまだしいんとしているからな」
母 「早いからねえ」
ジ 「ザウエルという犬がいるよ。しっぽがまるで箒のようだ。ぼくが行くと鼻を鳴らしてついてくるよ。
ずうっと町の角までついてくる。もっとついてくることもあるよ。今夜はみんなで烏瓜の明かりを川へながしに行くんだって。きっと犬も付いて行くよ」
母 「そうだ。今晩は銀河のお祭りだねえ」
ジ 「うん。ぼく牛乳をとりながら見てくるよ」
母 「ああ行っておいで。川へははいらないでね」
ジ 「ああぼく岸から見るだけなんだ。一時間で行ってくるよ」
母 「もっと遊んでおいで。カムパネルラさんといっしょなら心配はないから」
ジ 「ああきっといっしょだよ。お母さん、窓をしめておこうか。」
母 「ああ、どうか。もう涼しいからね」
ジ 「では一時間半で帰ってくるよ」

★ひと通り読んででわかる内容

・お母さんの具合が悪い
・姉さんが家事をして、また出かけていった
・お母さんの牛乳がこなかった
・お父さんから連絡がないため、北の方の猟に出ているか、監獄へ入っているのか、よくわからない
・カムパネルラのお父さんとジョバンニのお父さんは小さな頃からの友達である
・小さな頃はよくカムパネルラのうちへつれて行ってもらった
・ジョバンニが毎朝新聞配達をしている
・川が危険である
・今日は涼しい日である
                 

★繰り返し読むうちに、伝わってくること

一章、二章で、全くセリフのなかったジョバンニですが、お母さんの前では、句読点も入れられないくらいに、よくしゃべります。
お母さんも、ジョバンニの話に耳を傾けてくれます。ただ、少し無理をしている風にみえます。
お互いに、

「相手を心配しながら、自分のことは心配かけまいとしている」

優しく気遣いあう心が、会話の奥にあるようです。
ジョバンニが帰ってきたとき、窓の日覆いがおりたままになっていました。
このことから、お母さんは、昼間ずっと寝ていたと考えられます。
寝てばかりいては心配をかけると思い、起きて入り口近くの部屋にいたのです。
ジョバンニも、窓を開けたり閉めたり、牛乳がきているか確かめたりしながら、お母さんを気遣っています。
そして、学校で悪口を言われても、カムパネルラという大事な友達がぼくにはちゃんといるから平気だと、お母さんには、思ってもらいたいのです。
実際は、学校で、あまり物を言わなくなったジョバンニなのですが、日々の生活で疲れていると、お母さんに言うことはできません。
出かける前には、星祭りへ行ったらカムパネルラときっといっしょになると、希望半分の言葉で、母を安心させて家を出ます。
会話の中に登場するお姉さんも、夕飯を作り、そこらを片付けてから、出かけているのです。

【まとめ】
父が不在で、母も病気という大変な状況ではありますが、ジョバンニと姉さんが、協力し合って、母を支え、思いやりをもって暮らしている姿を、描き出しています。会話の中で、ジョバンニが、お父さんやカムパネルラに希望を抱いている様子が、うかがえます。

<感想>
お母さんの牛乳に角砂糖を入れてあげようとするジョバンニは、愛すべき存在です。
もし、あの場面で、お母さんの牛乳があったなら、牛乳を温めてカップに注ぎ、その中に角砂糖を落とし、スプーンでかき混ぜてからお母さんに渡していたであろう姿が、目に浮かびます。
そんなジョバンニは、学校では頭がぼうっとするほど疲れて、友達とも遊べないのです。
きっと、ジョバンニは、心の中でこんな風に思っているのだと思います。

「こんな状況はきっといつまでも続かない。お父さんが遠い北の猟から帰ってきたときには、きっと、これまでをくつがえすほどの素敵なことが起きるんだ。そうなればまた、前みたいに、カムパネルラとも仲良く遊べるようになる。」

私は、カムパネルラの死と入れ違いに、ジョバンニのお父さんが帰ってくることを、このお話を終わりまで読んで、すでに知ってしまっているので、胸が痛くなります。
夜の軽便鉄道は、銀河という夜の闇の中を走って、ついに、カムパネルラを、朝の光のもとへ連れ出してはくれないのです。
この章の終わりごろ、お母さんが、「川へははいらないでね」とジョバンニに言います。
川が危ないことを、ここで、暗示しています。











2007-09-12 18:48  nice!(0) 
共通テーマ:日記・雑感

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